友達
この異世界に転生したと気づいた時、自分のやりたいように自由に生きようと思った。
それは、無責任に自分勝手にするというわけではなく、責任を取れるような、自立できるような、地力を身につけて自分の思うように生きたいということだ。
自由にするとは、大人になるということは、自分の自由に見合う実力を、自分の意志と行動で獲得することだ。
前世の世界を泡のように思い返す。
自分では何もせず、他人を批判ばかりしている。
常に正義の立場から、ものを言う。
なんて、みっともない。いったい何様なんだろう。
多分、お子様なんだろう。
お子様ばかりならば、社会はなりたたない。
歳ばかりとった賢しげなお子様達が幅をきかせる世界だった。
ああ…今の僕は、夢を見てるのだろうか?
今は、いつだろう?
暗闇から声が聴こえる気がする。
滅べばいい
いや、待て、まだ、いる
いや、もう無理だ、支えられない
気づいていない、この世界は落ちる
まだだ、まだ7つ楔がある、落ちない
限界だ、見よ、今、混沌に呑まれるが良い
堕ちればバランスが崩れる…
浅い眠りから、覚めた。
寒い…。ブルッと震える。呼吸を整え、魔法を発動、暖膜を身体に覆う。うん、これは便利だ。
変な夢を見た、前世の夢だったような、あー、なんか内容忘れてしまった。
歩哨の時間だ。
隣のウバ君を揺すって、時間であることを教える。
冬の朝である。まだ辺りは暗い。
今日は、最終日。
昨日で測量は終わり、午前中は資料の採集の補充、動物の捕獲もしたかったけど見当たらなかった。
野生の動物は危険を察知して近寄らなかったのかも知れない。
昼食後、即発、帰隊に向かう。
自宅にいるペンペン様は元気だろうか。
いや、食糧はタップリ冷蔵庫にいれてあるし、お供えのお菓子も戸棚にあるから、勝手に食べて寝てくつろいでいることだろう。
もしかしたら僕がいないことにも気づいてないかもしれない。
逞しいからなぁ、ペンペン様。
先導車の後部座席に座り、取り留めのないことを考えた。
何だか、振動が心地良く、眠くなってきてしまった。
そう言えば、前世の通勤電車で寝てたしなぁ。
帰隊して、解散した後、仲良くなったセイロンとウバ君からの申し出で連絡先を交換した。
むむ、これは、連絡先を交換したからには、もう僕達友達だよね。そうだよね。




