#1 荒井眞由
あらすじにもあった通り、女の子同士の恋愛の物語です。ご理解の上、お読みください。
「眞由は誰が気になってる?」
「!」
気づくとその場の視線がこっちに集まっている。私は突然のことで、戸惑ってしまった。
えぇと、確か今は昼休みで、2人と話してて…
一応、頭の中で整理してみた。でも、話していた内容には全然思い当らない。
「今ね、好きな男子は誰かって話してたの」
戸惑っている私を見て、優しいメガネっこの優佳が笑顔で説明してくれた。
好きな…男子?
「で、誰なのよっ」
このグループの中でも元気な美恵から質問が投げかけられた。私は少し考えた後、答えを出した。
「…いるわけなんじゃん、そんなの」
「えぇぇぇ…!!」
予想していた通り、美恵が避難の声を上げた。単純…しいて言えば、いい子だなぁとしみじみ思う。
「なんでさ、なんでさ!!…可愛い眞由が惚れる相手、見てみたかったのになぁ」
美恵がため息をついてこちらを見てくる。
「…私は、私よりも数倍可愛いお二人さんが気になる人を聞いてみたいなぁ」
ふざけ半分で言うと、いきなり優佳がぼっと真っ赤になる。
あ、脈アリ。
美恵が、その真相を教えてくれた。
「ねぇ聞いてよ。優佳ってば、葛城がいいらしいよ?」
優佳は恥ずかしさの余り、顔を赤らめながら俯いてしまう。美恵のニシシと言いう笑いが、なんともオヤジ臭い。
「…葛城って、うちのクラスの葛城くん?」
「そうそう。葛城海斗」
「へぇ〜」
それは以外だった。葛城海斗は容姿良し頭良し運動良しなのだが、性格には少し問題がありそうだ。時々授業もサボるし、いい友達づきあいも聞いたことがない。帰宅部で、他の部活から入部の誘いが数多く来ているが、どこにも耳をかさないらしい。そして、その容貌からか女子からの支持が多く、人気があるらしい。まぁ、私には関係のない話だし。
でも、優佳が好きだとは……やっぱり以外だ。ユカはもっと真面目な人が好みだと思った。
あんなののどこが…
「もう、やめようよぉ〜」
優佳が恥ずかしそうに言ってきた。それがやけに可愛かった。
「恋する乙女は可愛いですねぇ」
優佳にそう言ったら、可愛いお顔で頬がパンパンに膨れてしまった。
「あ〜、ごめん、ごめん。きちんと応援するから、かんばってね、優佳」
そういうと、優佳はホント?と尋ねてきた。私が笑顔でホントホントと返すと、
「ありがとうね」
と、優佳は可愛くお礼を言ってくれた。そこがまた可愛いと思う。
「…そういえば、美恵の好きなヒトって誰?」
「え?」
さっきから沈黙している美恵に質問してみた。美恵は一瞬戸惑ったように見えたが、それはすぐに消えてなくなった。
「……3組にいるよ?」
「じゃあ、またウチのクラスなの?」
「そうだよ」
優佳が一瞬ビクッとなった。
「あぁ、安心して優佳。葛城じゃないから」
「えっ…、うん、そうなんだ…。ありがと」
優佳は安心した顔をした。いつも笑顔満開の美恵がいつもよりもちょっと暗い顔をしているのが少し気になったが、それでも、美恵の他人への気配りは相変わらずすごい。
やっぱりいい子だなぁ、と思う。
じゃあ、
いつかはばれちゃうかな
私の嘘も。
私は、荒井眞由。
先輩に恋をしている。
でも、言えない。
だって、
先輩は、女の人だから。
◆
先輩は、いつ見てもきれいなのだ。かっこいいというところもある。
眞由は合唱部に所属している。小学校の時から合唱をやっていたので、中学校でもやってみようかなとういう安易な気持ちだった。しかし、中学校では本格的な合唱で、知識があまりない私にはついていくのが難しかった。
そんな時に、同じパートの先輩が助けてくれたのだ。
先輩は、声もきれいで、音もきちんと取れていて、いいな。と思う。とても尊敬できる先輩だ。
最初に想い気づいたのは、いつの間にかずっと先輩の事を考えていたから。
会うたび、見るたびに、幸せな気持ちになるから。
中学に入って、まさか自分が女の人に恋をするなんて思ってもいなかった。
先輩。
睦月先輩。
大好きです。
次は先輩が登場しますっ!