世の中は理不尽で溢れている
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少年は数奇な人生を送っていた。
少年には才能がなかった。運動も、勉強も、何もできない。その上、不細工。無為無能というやつだ。少年は幼い頃から周りの人間に馬鹿にされ、その親にも馬鹿にされていた。
だから少年は努力した。悔しくて、悔しくて、気が狂いそうになるほど悔しくて。走って、勉強して、少年は世界中の誰よりも努力していただろう。
だが少年の努力が報われることはなかった。マラソン大会ではいつも最下位争い。テストの点数も一桁台。
“努力は必ず報われる”という言葉があるが、そんなことはない。無駄な努力というものもあるのだ。少年がどれだけ努力しようとも、その努力が実を結ばなかったように。
事実、然程努力していない人間が結果を出していることだってある。
少年には幼馴染がいた。運動も、勉強も、何もかもできる。その上、容姿も優れていた。秀外恵中というやつだ。
少年とは真逆の人間。
幼馴染は普段何もしていないにも拘わらず、全てにおいて好成績を収めていた。
世界は理不尽で溢れている。
努力しなくても出来る人間と、努力しても出来ない人間。
少年は後者に分類され、幼馴染は前者に分類される。
かつて仲の良かった二人の関係は成長するにつれ変化していき、中学三年生になった頃には明確に二人の関係は変わっていた。
強者と弱者とに。当然、少年が後者だ。
ある日、少年は幼馴染に呼び出され学校の屋上に向かっていた。そして屋上にやって来た少年に向かって開口一番、幼馴染が言った。
「飛び降りろよ。飛び降りたら楽になるぞ? 人生を卒業できるんだからな。どうせお前なんてこの先生きてたって何の意味もないんだし」
「わかる! 死んだ方がいいと思う!」
幼馴染の取り巻きの一人が同意の声を上げ、その他数人が少年に侮蔑の視線を送りながらクスクスと笑う。
だが少年は幼馴染の言葉にも、取り巻くの言葉にも反応を示さなかった。少年の目には――何も映っていなかった。
どれだけ努力しても決して報われない虚無感、絶望感。それらが心を満たした時、少年は散歩にでも出かけるかのような軽い足取りで屋上から飛び降りた。
甲高い悲鳴が耳に入ってきたが、少年は気にも留めない。
落ちていく感覚の中、少年の頭の中に走馬灯が駆け巡った。
いくら努力しても報われない自分。それを見て馬鹿にしてくる奴ら。最後に幼馴染が見せた自分を見下す目。
……気に入らない! 気に入らない! 気に入らない!!
思考を憤怒が埋め尽くし――少年の意識はそこで途絶えた。
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