別離
コロニー出口。そこを出れば砂漠。
「このコロニーはよかった。もっと早くたどり着きたかった」
「だったら、ここで住んだら?罪を償わないで」
彼は誰かに声をかけられた。
「エーリカ…さん?」
振り向いた先に居たのは店を飛び出したエーリカである。
「初めて名前で呼んでくれたね」
「どうしてここに?」
「マスターからだいたいは聞いたわ。あなた、ただ逃げてるだけじゃない」
「逃げてる?」
「罪を犯して償え切れないから死んで逃げているって言いたいのよ」
この言葉にムッとくる彼。
「私には償えきれない罪を犯した。この身をもって償わないでどうするって言うんです?」
「どうして殺した人々の分まで生きようと考えないの!!」
その言葉は彼の胸に突き刺さる。
「マスターも言ってたわ。あなたは優しすぎると。あなたは人間の罪をすべて引き受けようとしてるのよ。あなたはあなた自身の罪を償わないとだめ」
「私だけの罪?」
「なんの努力もせずに再び信じた人々を殺したことよ」
彼はその場に崩れるように膝をつく。
「わ、私は…どうすればよかったのでしょうか…」
「あなた自身が人々を信じ続ける。信じて信じてそれでもダメだったら誰かに寄りかかればよかったのじゃないかな・・・」
「そうか・・・。そうだったんだね・・・。私の罪は許されるのでしょうか・・・」
「それはこれからのあなたしだいじゃないかな?でも、私はあなたを信じてる」
彼は立ち上がりエーリカを見据える。
「少し・・・、泣かせてください」
「ええ、私でよければ・・・」
彼はその長身をエーリカの胸の中に飛び込み、そして子供のように嗚咽を漏らすのであった。
「落ち着いた?」
「はい、・・・やはり私は旅に出ます」
「そう・・・」
「ですが、私はもう人間を殺さない。これからの旅は人間たちに信じることのすばらしさを教えていきたいです」
「ふふ、もうすでに知っている人間はいっぱい居ますよ?」
「それでも・・・、それでもやはり教えたいです」
「そっか、じゃあお別れね」
「はい、短い間でしたけど・・・。ありがとうございました」
「礼はいいわよ。それより約束して」
「約束?」
「もう一度このコロニーに戻ってくるって」
「・・・はい」
そうして彼は旅に出た。その朝日は彼を見送り、そして彼女を照らすのであった。