1年目、始まり。
私が彼を認識したのは中学1年生の時だった。同じ学年ではあったが、クラスも違うし接点もなかった。ただ、私の親友と同じクラスで、親友の好きな人という事で一方的に話だけ聞いていたのだ。だから、初めて彼を見た時に思ったのはあぁ、この人なのか。ということだけだった。
これは、私と彼の6年間の出来事を綴ったものである。何の変哲もない、面白味もない、恋ともいえないような、そんな出来事。
私の名前は松野 ひかり。母1人、妹1人の家庭で普通に育ち普通に生活している。彼は三宅 颯。私と同じ年で、中学校から一緒の学校に入った。三宅を知ったのは私の親友である、山下芽衣の好きな人だったからである。芽衣とは小学校から一緒で、2人だけで美術部最後の1年生をしていた。つまり、私たちの代で美術部の廃部が決定しており、先生達も放置していた部活だったため、2人で美術室で絵を書きながらずっとお喋りしていたから必然的に仲良くなったのだ。
そんな芽衣がいつだっただろうか、1年生の時、美術室で片付けをしていた時だった。外はもう真っ暗で、少し蒸し暑かったのを覚えてる。私は机に向かって何かしていて、芽衣は筆を洗っていた。そんな日常の中で、「私、好きな人ができた。」と突然言われたことだけは覚えている。
「え…!誰!?」
中学生にとって恋愛話なんて1番の話題だ。私も嬉々として聞いた。
「同じクラスの、三宅颯くん…」
筆をバシャバシャ洗いながら芽衣は言う。きっと恥ずかしかったのだろう。彼女はすごく恥ずかしがり屋なのだ。
「ごめん、知らない!」
「だと思った」
そう言ってやっとこっちを見た芽衣は少し頬をピンクにして、照れたように笑った。その時に、恋してるんだってすごく感じた。普段も可愛い芽衣が、その時いつも以上に可愛かった。
「どんな人なの?私見たことある?」
「そうだなぁ…面白くて、話しやすくて、、色黒のバレー部の人だよ。見たことない?」
んー…っと記憶を辿ってみるが、そんな人物記憶になく。そもそも、私は人を覚えるのがとても苦手で、自分のクラスでさえ、覚えてない人もいる程だったので、他のクラスはなんてなおさら覚えてなかったのだ。
「ごめん、全然分かんないや。今度教えて!」
「えー…恥ずかしいな。他の人にはまだ言ってないから言わないでね!」
「もちろん!ていうか、早く閉めないと怒られるよ!」
「わ!もうこんな時間!早く帰ろう!」
そう言いながらバタバタ支度して笑いながら走った。