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第七話

駕籠部とアウトドア部そして干物部にかかわるお話です。

ホームルームが終わると、土田和男と北側勝馬は揃って高橋なずなのところに駆け寄った。

「高橋っ!」

「ん?何?」

「あ、あのさぁ…高橋、今日、なんか用事…とか…あんの?」

「べ、別にないけど…なんで?」

「あっ!いかった!じゃさ…わりぃんだけど…ちょっと部活の…なんつうか…その、手伝いってのか…やってもらえないだろうか?1時間ぐらいなんだけどさ…。」

「え?…べっ、別にいいけど…手伝いってどんな?あたし…全然器用じゃないし、運動神経も鈍いし、太ってるし…だけど、いいの?」

「えっ?ああ、そんなの全然!なぁ、勝馬!」


あなたのその重さが欲しいんだよ…駕籠部かごぶの特訓にはどうしてもどうしても、高橋クラスの重量級じゃないと特訓にならないからさ…男でもそこまで重いやつ全然いないから…


「あ、うん、そうそう、そんなの全然関係ないし…。」


嘘うそ、ホントは高橋、お前のその重さが大事だから…クラス、いや学年全部の男子でも、お前ほど重そうなやついないから…でも、言えねぇ…言える訳ねぇよ…お前、一番太ってっから、同じクラスで声かけやすいから特訓に丁度いいなんて…試合では60キロの人乗せるから、1年の鎌田乗せるから全然大丈夫だけど…それだと持久力ってのか、力つかねぇから…重い方がいいんだなんて…重いやつで練習しときたいんだなんて…そんなの、いくら俺でも言えねぇっつうの…その巨体だけど、一応は女子だから…そういうところはデリケートにやんないと…協力してもらえなくなっちまうだろうがよ!…それにしても、何だよ!つっちー、ずりぃな急に俺に話振ってきてよぉ…なんだよぉ~!も~う!


えっ?何?土田と北側、二人共急にあたしなんかに声かけてきて…まさかとは思うけど…こいつら、あたしみたいな女好きなの?デブ専?…あ、でも、デブ専だったら、何もあたしじゃなくても…隣のクラスの倉田みさきとか、1年の…え~となんて名前だっけ?う~んと…いいや、この際名前はどうでもいいか…柔道部の女とかさぁ…3年の、もう引退しちゃったけどお菓子クラブにいた先輩とかさぁ…見渡せば結構あたしみたいなぽっちゃりさん、いるのに…なんで?あたし誘ったんだろ?なんで?デブの中で一番可愛いから?とか?…ははは、やだぁ、自分で可愛いって…やだぁ…ははは…それにしても…土田は絶対やだけど、北側はちょっと…ってか、わりとイケメンだから…って、やだ、だからって別に…やだ、も~う!


「あ、あのさぁ…手伝いって、俺ら駕籠部の特訓に付き合ってって話なんだけどさ…ただ、駕籠に乗ってくれてればいいんだけどさ…。」

「なぁんだ、別にいいよぉ…このまんまでもいいの?」

「あ、ちょっと制服だと、万が一汚れちゃったら…なぁ、勝馬。」

「ああ、そだね…駕籠に乗るだけって言っても、案外揺れるし、横、ゴザでばふばふってなるし、走るから土ぼこりとかかかるかもしんないから、できればジャージの方がいいと思うけど…あ、高橋、ジャージ持って来てなかった?」

「や、あるけど…。」

「そっか、じゃあ、ごめん、わりぃけど着替えたらさ、部室まで来てもらえっかなぁ…かばんとか部室におけるし…あ、着替えは…ごめん、部室は俺ら男連中も着替えっから…そん中ではやに決まってるよなぁ…。」

「やっだぁ~!も~う!」

バチ~ン!

照れる高橋の張り手は、北側勝馬の右肩が一瞬外れるかと心配になるほど強力だった。


「あれぇ?るか、どしたぁ?早く行こう!」

「あ、うん、そだね…ごめん、ちょっとぼ~っとしちゃって…。」


なずちゃん、いいなぁ…土田達となんか楽しそう…あたしも…そういうの…いやいや…いやいや…いいや…ちかちゃん、待たせちゃってるから、早く行かなくちゃ!うん!行こう!行こう!


山形るかと永田ちかの二人は、土田達が談笑している傍の戸から廊下に出ると、パタパタと軽やかに走って行ってしまった。


あ、山形!…一瞬、ちらっとこっち見てたけど…まさか、勘違いしてねぇよなぁ…つっちーと俺が高橋をナンパしてるみたいに思われてたらやだな…それにしても山形、なんかいい匂いしてたな…間近で見ると吸い込まれそうな青い目だったな…やっぱりハーフだから…目立つし可愛いよなぁ…でも、山形じゃあ、駕籠部の特訓にはならないからなぁ…あんな折れちまいそうな細くて小さい体じゃ、駕籠に乗っけても…軽いだろうからなぁ…


山形るかと永田ちかが体育館横の丸太小屋に到着すると、既に干物部の仲間とアウトドア部の面々が車座になって談笑していた。

今日は毎年恒例の干物部とアウトドア部合同で、スモークサーモンをメーンとした様々な燻製を作ることになっていた。

アウトドア部の顧問で体育の池田卓也先生と、干物部の顧問で古文の滝沢よし先生が一緒に材料を持ってやってくると、早速燻製作り開始となった。


「燻製の匂いがつくから。」とジャージに着替えた全員が、軍手をはめて作業にとりかかろうかという頃、体育館の反対側から駕籠部の駕籠が「えっさ、ほいさ。」の掛け声で出発して行くのが見えた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだまだ続きますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

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