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第三十五話

お話の続きです。

どうぞ宜しくお願いします。

確かに細田にこはいつも誰かしらに誤解を与えていた。

「誰かしら」と言っても、その大半は男子生徒や男性教師など、いわゆる「男」になのだが。


「…にこさぁ…ま~た、変なことしたでしょ?」

「えっ?変なこと?」

「そう!変なこと…。」

「?そんなこと…してないけど…。」

「してるって!なんでさ、借りたものとか提出物とかイチイチ綺麗なやつに入れるのさ!あんな風にやられたら、誰だってなんかプレゼントでもなんて勘違いしちゃうじゃん!にこから、なんか良い物もらったって思っちゃうじゃんよ!」

「…そ…そう?」

「そうだよぉ~!」

「そうかなぁ?」

「そうだよ!にこみたいな可愛い女子から、もじもじしながら受け取ったら絶対勘違いしちゃうに決まってんじゃんよ!」

「…でも…でもね、借りたりしたらさ、ありがとうって気持ちもいっぱいだから、やっぱりそのまんま渡しちゃ失礼な気がするの…それに…。」

そこまで言いかけると、にこは下を向いて口篭った。

「何?そこまで言いかけて…も~う!もやもやするから最後まで言ってよ!」

バチン!

イラついていた大門樹里はにこの肩を少しだけ強く叩いた。

「いたっ!」

細田にこの目からちょびっとだけ涙が出た。


…樹里ちゃん、何であんなにイライラしてんだろ?何で?別にいいじゃん…だって、ママが人に何か渡す時は綺麗なものに包んでって言うんだもん…それに、そうやってもらった方が嬉しくない?勘違い…って…そんなの知らないよ…でも、樹里ちゃんが言うみたいに誰でもかれでもそういう風にしてるって訳じゃないんだけどな…ホントに好きな人には、ちゃんと…ちゃんとリボンつけるから…その他大勢とは全然違うんだけどな…勘違いして欲しい人もいるんだけどな…一人だけには…どうしても…勘違いしてもらいたいんだけどな…


…あ~、もうイライラする!何なのさ?にこ…なんでやなぎぃ~にまで…進路調査表ぐらい、そのまんま出しなって…やなぎぃ~のあの顔、絶対絶対勘違いしてたじゃんよ…絶対絶対にこからラブレターもらったって思っちゃってた顔だったよ…あ~、もう!にこったら…何でさ?何でなのさぁ…


「あ、お~い!細田ぁ~!」

声をかけてきたのはアウトドア部でパン屋の次男の富田祐介だった。

振り向いたにこの頬は一気に赤く色づいた。

「この間の野菜ジュースすんげぇ美味かった…サンキューな…そんで、これ…お返しってのか…部活以外で、わざわざ美味しいの作ってもらってばっかだからさ…うちのパンだけど…良かったら食って!」

富田はそう言うと、細田にこにお店の名前が入った紙袋を渡してきた。

中には冨田ベーカリーのミニクロワッサン6こ入りの袋と、チーズラスクの袋が入っていた。

「あ…あの…ありがと…富田君…なんか逆にごめんね…なんか。」

「ああ、そんなの…それより、いっつも美味い飲み物サンキューな…あっ…じゃあ、俺、行くわ…。」

急に真剣な顔つきで富田が走り去った先には、永田ちかと山形るかが階段を降りて行くのが見えた。

「…あ…。」

それまでにこにこしていた細田にこの顔から、急に笑顔が消えた。

飲み物部の部活以外で、アウトドア部の冨田には自分が作った特別なジュースを差し入れしているにこは、ぼんやりと永田ちか達の後を追って行った富田の後姿を見ていた。

カクンと首を下げた廊下の床に、500円玉ほどの大きさの丸い水滴がポトンと落ちた。

一連の様子を見守っていた樹里の心はさわさわした。

最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

お話はまだ続きますので、引き続き宜しくお願いします。

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