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第三十話

お話の続きです。

どうぞ宜しくお願い致します。

小5の春、クラス替えで初めて同じ2組になった布施まりあと堀田ゆきは、まだちゃんと話をしたことがなかった。

5年生になって最初の調理実習。

36名の生徒達は6つの班に分かれた。

今日作るメニューは、ほうれん草とベーコンの炒め物、粉ふき芋、澄まし汁、そしてご飯。

1班の布施まりあは粉ふき芋を担当し、4班の堀田ゆきはほうれん草とベーコンの炒め物を担当していた。

「あっちちちちちちぃ~~~っ!」

「痛っ!いたたたたたぁ~~~っ!」

「あらあら、布施さん、堀田さん、大丈夫?保健委員…え~と…三田園君だったわよね…悪いんだけど、二人を保健室に連れてってあげてちょうだい…はい!みんなはそのまま調理を続けてください!いいですかぁ~?」

「は~い!」


「じゃ、僕、先に戻るね。」

そう言って爽やかな笑顔を見せてくれた三田園に、二人は見とれてしまっていた。

「いたたたたぁ…。」

「大丈夫?やけど…可哀想…。」

「ああ、あたしは大丈夫、大丈夫…ちょっと痛いだけ…堀田さんこそ、指、結構深く切れちゃったみたいで…痛そう…血、結構いっぱい…痛いでしょ?」

「ありがと、あたしも大丈夫…ただ…。」

「ただ?どしたの?」

「あたしが担当してたほうれん草とベーコン炒め、ちゃんとできたかなぁって…。」

「あ…そっか…そだね…あたしも…粉ふき芋ちゃんとできたかなぁ…案外、鍋、熱かった。」

「そっか…痛かったね。」

「うん…痛かったでしょ?」

「うん。」

お互いを労わりあうと、二人は急に泣き出した。

そうして二人は仲良くなった。


「ねぇねぇ、まりあ、さっきの三田園くん見た?」

「見た見た三田園…って…ははは、なんかギャグっぽくなっちゃった…ははははは。」

保健委員でサッカーをやっている三田園は、二人だけではなく多くの女子から熱いハートの視線を送られていた。


「三田園くんって…どんな子が好き…なのかなぁ…。」

「ん~…多分…まりあみたいな優しくて可愛い子が好きなんだと思う~…。」

「え~っ、うっそぉ~…どっちかっつうとゆきみたいな、相手のことちゃんと思いやれる可愛い子が好きなんじゃないかなぁ…。」

「え~…ふふふ。」

「ふふふふふ。」

二人はいつも馬鹿みたいに相手のことを褒めあった。

そして、話題は毎度「三田園くん」ばかり。


夏休みの終盤、宿題が大分残っていた二人は涼しい図書館に駆け込んだ。

「はぁ~…やっとこ算数のドリル終わったよぉ~…。」

「え、ホント!いいなぁ、まりあ、あたしなんかまだここまでしか進んでないよぉ~…。」

「え~!どれどれ…あ、でも、ゆきはいいよぉ~…読書感想文終わってるもの…あたしなんかこれから本読まなくちゃならないんだからさぁ…。」

向かい合った二人は持って来た宿題に目を移すと、同時に大きなため息を漏らした。

「あ~…あたし、ちょっと水飲んでくるね。」

「あ、じゃ、あたしも行く行く!水分補給とちょっとだけ休憩~…。」

荷物をそのままに水飲み場までやって来ると、玄関口の自動ドアの向こうに三田園の姿が見えた。

「あっ!三田園く…。」

そこまで言いかけてまりあは固まってしまった。

「えっ?嘘っ!どこっ?三田園く…あ…。」

ゆきはまりあが固まった理由がよくわかった。

三田園の隣に同じクラスの緑川ゆりえが可愛らしいワンピース姿で笑っている。

しかも、二人は手を繋いで。

「え?…嘘…。」

「ううん…ホント。」

「あの…二人…付き合ってんだぁ…そっかぁ…そっかぁ…。」

夏休みに入る前、教室で仲良く喋っている姿をちょくちょく目撃していたけれど、それは三田園と緑川が同じ班だから、席が隣同士だからなのだと思っていた。

でも、実際はそれだけじゃなかったらしい。

夕方、図書館の帰り道、まりあとゆきは今持っているお小遣いを全部使って、小学校近くの駄菓子屋さんでありったけの駄菓子を買った。

空が黄色みを帯びてくる頃、二人は公園のブランコに並んで乗りながら、買った駄菓子を無言で食べた。

顔を伝う水は涙なのか、汗なのか。

二人にはどうでもよかった。


中学に上がったばかりの春、まりあとゆきは同じクラスにはなれなかったけれど、クラブは一緒のテニス部にした。

部活の帰り、まりあの家の向かいの公園でいつものようにダラダラと話していると、急に声をかけられた。

それが「がっつりめし」

まりあはすぐに「がっつりめし」のファンになったが、ゆきはどうにもファンになれずにいた。

「あ~…あたしもまりあと一緒に、がっつりめしの応援した方がいいのかなぁ…でも、あの人達のネタって、全然面白くも何ともないからなぁ…。」

そんな時出逢ったのが「パンスキー」

ゆきはひょろひょろとした「がっつりめし」よりも、ぽちゃぽちゃしている「パンスキー」の虜となった。


「絶対、がっつりめしの方が面白いって!」

「いいや、パンスキーの方が面白いですぅ~!」

まりあとゆきは対立することが多くなっていった。

それと同時に、二人はそれぞれが応援している2組も自分達の様に対立しているものと考えていたのだった。

「今度のコンテストでパンスキーなんか蹴落としてやるから!」

「何言ってんの!こっちこそ、がっつりめしなんか足元にも及ばないんだから!」

「ふん!」

「ふん!だ!」


喧嘩別れしてしてしまったけれど、まりあもゆきも三田園とまだ付き合いが続いている緑川が楽しそうにしている姿を見かけると、途端にお互いのことを思い出し寂しさがこみ上げてくるのだった。


…あ~、今日も面白かったなぁ…それにしても、なんであの犬、逃げちゃうかなぁ…パンスキーのネタ、良かったじゃん…

「あ!」

ンニャモ達のことと影から見つめてたパンスキーのことを考えていた時だった。

「あ!ゆき…。」

やはりがっつりめしのネタと、逃げたンニャモ達のことを考えていたまりあにばったり会った。

距離を縮めずもじもじとその場に立ったままの二人は、薄暗くなった通りから聞こえてきた声に反応した。

そこには楽しそうに談笑しているがっつりめしの二人と、パンスキーの二人。

「…おう…そうかぁ…ははは…だよなぁ…そうそう…あ、じゃさ、これから飯食いに行こうぜ!ついでに今度一緒にやるライブの打ち合わせしようぜ!」


「あの人達…仲…良かったんだぁ…。」

「そうなんだぁ…。」

ポカンと口を開けたまま、まりあとゆきは彼らを見送った。

「あははははははは…な~んだ…な~んだ…ははははは。」

まりあがいきなり笑い出した。

「ははは、ははははははは…そだね…ははははははは。」

ゆきもつられて一緒に笑った。


「バイバーイ!」

「バイバーイ!明日!学校でね!」

「うん!明日ね!」

笑った余韻を残したまま、嬉しい気持ちでまりあとゆきはそれぞれの家に帰って行った。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願い致します。

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