第二十八話
お話の続きです。
どうぞよろしくお願いします。
第二十六話と第二十七話、ちょっと手直ししました。
申し訳ございませんでした。
トイプードル、チャコの散歩途中、ちょっとした野球のグラウンドがある公園の中を進むと、木陰のベンチ脇で二人の若者がこちら側を向いた形で何やら大きな声を出していた。
ヤヤ・ンニャモ達が傍を通りかかると、二人が声をかけてきた。
「ハイ?ナンデショウ?」
「あの、ちょっと俺らのネタ見てもらっていいすか?すいませ~ん。お願いします!」
深々と頭を下げるものだから、ヤヤ達は断る訳にいかなかった。
「…じゃ、あの…始めま~す!」
片山つよしが片手を高々と上げてそう宣言すると、相方の長井しんごと一緒にぺこりと頭を下げ、早速「ネタ」が始まった。
パチパチパチパチ。
「おかあさ~~ん!お腹すいたよぉ~!」
「はい!がっつりがっつりがっつりめしぃ~っ!」
「ネタ」の入りだしから、ヤヤ達の中にいくらかの不安な気持ちが広がっていった。
「はい!という訳でね、我らがっつりめしのショートコント!お母さ~ん!ご飯!ご飯!」
てっきり「ネタ」のタイトルかと思いきや、もうショートコントは始まっているらしかった。
「は~い!お待たせぇ~…さぁ、どうぞ。」
「ねぇ、お母さん、ご飯だけだけど、おかずはぁ?」
「ああ、ごめんなさい、はいはい。」
「って、おかずも白いご飯!」
「はい!がっつりがっつりがっつりめしぃ~っ!…続きまして…。」
コンビ名「がっつりめし」にちなんでなのか、「ネタ」はご飯関係のものばかりだった。
本当に短いコントが30ほど続くと、やっと「ネタ」が終わった。
パチパチパチパチ。
「どうも、ありがとうございましたぁ~!」
「ネタ」も終わったことなので、やれやれといった具合にヤヤ達は芝生から立ち上がると「ジャ!」と軽い挨拶でその場を立ち去るつもりだった。
だがそう簡単に帰してくれる訳もなく、「がっつりめし」の二人が歩きかけていたヤヤ達に駆け寄り、ぐいぐいと話しかけてきた。
「あ…あの…今の、どうだったでしょうか?」
「エッ?」
「あの…だから…ネタの感想…。」
「エッ?アア…ソウデスネ…。」
ヤヤはそう言うと、みやことけんたの顔を窺った。
ちびっこ達は、ヤヤの目を見つめながら小さく首を横に振った。
だが、その動作を「がっつりめし」の二人はまるで見ていなかった。
と言うよりも、「がっつりめし」の二人は、ヤヤだけに感想を求めているようだった。
…アア、ドウシマショウ…世ノ中ニ、コレホドマデ、ツマラナイモノガアルナンテ…ソレニシテモ…コノ二人…コンナニ、キラキラシタ目デ…ソンナニ、見ツメナイデモラエマセンカ…アア、ドウシマショウ…正直ニ、面白クナカッタデス…ナンテ…言エナイ…イヤ…言ッチャイケナイ…気ガスル…彼ラヲ、傷ツケチャ、イケナイ…デモ…デモ…ココデ…面白カッタト、嘘ヲツクノハ…ヤッパリ…イケマセン…アア、神様…僕ハ…今、ドウシタラ…イイノデショウカ…アッ、日本語ガ、ワカラナイ風ハ…駄目カ…モウ、彼ラニハ、僕ガ日本語ヲ理解シテルッテバレテルカ…ウ~ン、困ッタ…困ッテシマッタ…日本ニ来テ、初メテ一番困ッテシマッタ…誰カ、今スグ…助ケテ下サイ…ミヤコチャン、ケンタクンハマダ、小サイカラ…ソンナムズカシイコト、オシツケチャイケナイ…アア、神様…神様~~ッ!
心配そうに見つめるみやことけんた。
そして、「面白かったです。」を欲しがっている「がっつりめし」の熱い眼差し。
その場にいる全員からの視線を集めているヤヤ・ンニャモは、一人苦しみの汗をダラダラかくのだった。
その様子をじっと見つめる者がいた。
…がっつりめしさん、あたしは、あたしは、すんご~~く面白かったです…いつも応援してます…大好き!がっつりめし!頑張れ!がっつりめし!そこの外国人さんとちびっ子達、彼らの素晴らしい面白さを彼らにちゃんと伝えてあげて…お願い!…あたしは…あたしは恥ずかしいから…いっつもここからしか応援できないけど…ごめんなさい、がっつりめし…いつか、いつかてっぺんとってね…大好き!
彼らのいる場所から随分と離れた駐車場に停めてある、よその車の陰から見つめていたのは公園の向かいの家に住んでいる、中1の布施まりあだった。
最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
お話はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願い致します。




