第二十七話
お話の続きです。
どうぞ宜しくお願いします。
「タダイマカエリマシター。」
「あっ!おかえりぃ~!ンニャモ、遅~い!みやこ、待ってたんだよぉ~!」
庭で遊んでいた隣の岡田みやこは、ヤヤ・ンニャモの傍に駆け寄って来た。
「アー、ミヤコチャン、ゴメンナサイ…チョットオトモダチトヨリミチシチャッテ…。」
「あらぁ、おかえりぃ、やっちゃん…そう…お友達と一緒に…いいじゃない…良かったわねぇ…。」
ヤヤ・ンニャモがホームステイしている有本家の母が外の声に気づいて庭に出ると、一緒に家の中からトイプードルのチャコもわんわんと嬉しそうに吠えながら出て来た。
「…で、どこ行って来たの?」
「アア、ママサン、エキマエノオミセデ、オデンソバヲゴチソウシテモラッテ…ゴメンナサイ。」
「あそこに行ったのぉ?おでんそば、あんまり美味しくなかったでしょ?」
「ア、イエ…ナンカ~、フシギナオアジデシタ。」
「そうよねぇ…おでんが乗っかってる温かいお蕎麦って…ねぇ…でも…良かったねぇ、やっちゃん…ご馳走してもらったなんて…何も謝ることないのよ…それより、日本の普通の高校生と同じ様に出来てよかったなぁって思って…だから、やっちゃん、ここにいる間はいっぱいお友達と遊んだり、あ、もちろん勉強も大事だけど…そういう…なんていうかなぁ…高校生らしく過ごしてもらいたいなぁ…だって、折角日本にいるんですものねぇ…満喫してもらいたいなぁ…。」
「ママサン…。」
ワンワン!ワンワン!
「ア、ソダ…チャコノオサンポ、シテキマスネ~…ア、チョットマッテテクダサイ…チャコ…キガエシテキマスカラ。」
「あ、じゃあ、あたしも一緒に行く~!ママ~!ンニャモとチャコとお散歩行って来るね~!」
「あ、は~い!」
家の中にいたみやこの母も庭に出ると、有本の母と話始めた。
ヤヤ・ンニャモと一緒にチャコのお散歩をさせていると、途中の公園で幼稚園の相沢けんたに出くわした。
「あ~!ンニャモ~~~ッ!みやこちゃ~~~ん!」
補助輪を外したばかりの頼りない自転車で、けんたはこっちにやって来た。
「犬の散歩?」
「ソウデス…ケンタクンハ、ジテンシャノレンシュウデスカ?」
「そうだけど…。」
「ガンバッテクダサイ…デハ、マタネ。」
「ばいばい、けんた!」
「あ…ちょっと…ちょっと待ってぇ~!」
よろよろと自転車のけんたが追いかけてきた。
「何?どしたの?あたしとンニャモは忙しいの!わかる?」
「あのさ、僕も一緒に…。」
「駄目!けんた、あんた、わかってないわねぇ…あたしとンニャモは、デートしてんの!だから、邪魔しないでくれる?」
「デ…デートッテ…ハハハ。」
ンニャモは苦笑いをするしかなかった。
「ずるい!僕だって、ンニャモと一緒に遊びたい!」
「だ~か~ら~…けんた、今、デート中なの…それに、ンニャモはチャコをお散歩させなくちゃならないの…あんたと遊ぶ時間なんかないの!」
「いやだ!僕だって…ンニャモと一緒がいい!ねぇ、いいでしょ?ンニャモ…僕も一緒にお散歩に混ぜてよ、ねっ!意地悪しないでさ。」
「ン~…ソウデスネ…イイデスヨ。ミンナデ、イッショニオサンポシマショウ。」
「ほら、いいってさ…わ~い!わ~い!」
「ふんっ!けんた…そういうのって図々しいって言うんだよ!」
「いいもん、別に…ンニャモもいいって言ってるんだし…。」
「も~…ンニャモ…なんで許しちゃうのさぁ…。」
幼稚園児二人に挟まれたンニャモは、急に立ち止まった。
「どしたの?ンニャモ…急に立ち止まっちゃって…。」
「泣いてるの?」
小さな二人が心配そうにヤヤ・ンニャモの顔を見上げると、ンニャモは真っ直ぐオレンジ色に染まった夕焼けを見ていた。
「ア、ゴメンナサイ…ココデミテイルユウヤケト、フルサトデミテイタユウヤケ…オナジダナ~ッテ…。」
ンニャモの頬を一筋の涙が伝った。
「ンニャモ…おうちに帰りたくなったの?やだ~っ!ンニャモ、帰っちゃヤダ~ッ!」
「えっ!嘘!ヤダヤダヤダヤダ!ンニャモ、帰るなんて言わないでぇ~っ!」
みやこの問いにンニャモは首を横に振った。
「ミヤコチャン、ダイジョブデス…マダマダ、ボクハカエラナイデスヨ…タダ…。」
「ただ?何?」
抱きついたみやこは泣き顔のまま、ンニャモの言葉を待った。
反対側に抱きついているけんたもまた、同じ泣き顔のままンニャモを見つめた。
「…チョットダケ…ナツカシクテ…。」
「なつかしい?」
その言葉の意味がわからないみやことけんたは、同時に首を傾げた。
ワンワン!
「ア~、ハイハイ…チャコ…オマタセシチャッテゴメンナサイ…サッ、ミヤコチャン、ケンタクン…オサンポノツヅキ、ツヅキ!」
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
お話はまだまだ続きますので、よろしくお願いします。




