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第二十六話

お話の続きです。

どうぞよろしくお願いします。

…ちょっと言いすぎたかなぁ…あ、でも、来てるから…そんなに…まぁ、大丈夫だったってこと…だよな…もう、しつこく阿部君って言わないなぁ…ってか、今日はまだ一度も言ってないか…良かったけど…なんか…何だろ…物足りない…ってんじゃないんだけど…言われてた時はやっぱすんげぇヤダったから…でも…なんか…ちょっと静かすぎる…ってか…なんだ、あいつ…宮島と笑って普通に喋って…なんだ、あいつ…なんだ…あいつ…いっつも眉間にしわ寄せて、おっかねぇ顔してたくせに…あんな…笑って…ちょっと可愛いじゃんかよ…なんだよ…あいつ…やっぱ、ムカつく。


キツイ口調と鬼の様な恐い表情をした多田ユミしか知らなかったので、阿部とおるは多田のあまりの変わり様に若干の戸惑いにも似た気持ちでいっぱいだった。


「あ、あの…竹本さん!」

仲良しの水野めいと他愛無い話で盛り上がっていた竹本かなこの元に、もじもじした多田ユミが声をかけて来た。

「はい?」

「あの、昨日はティッシュありがとう…後さ…キツイ言い方しちゃって…なんか…本当にごめんなさい…それで…これ…あの…じゃ…。」

そう言い終えると、多田はとっとと自分の席に戻って行った。

「あ…。」

「何?それ。」

一緒にいた水野が受け取った小さな赤いギンガムチェックの紙袋のことを尋ねると、竹本かなこはポカンとしたまま「あ、これ?」と答えた。

がさがさと袋を開けて見ると、中には色んな種類の可愛い猫の絵が描かれているポケットティッシュが入っていた。

「え?こんなに?」

出したそれは16こ入りだった。

「…わざわざ買ったんだ…いいのに。」

パックに貼ってある猫の付箋には、「ホントにごめんね、ありがとうね。」と書かれていた。


窓際の席の多田ユミは次の授業の数学の教科書とノートを出した後、ふぅと大きく息を吐き、外に出て来たジャージ姿の面々を見つめた。


「あ~、たりぃ~…今日、持久走だって…。」

「え~~~っ!マジでぇ~…。」

「なんかさ、体育館、急に使えなくなったからって…。」

外で体育の授業を行うことになった為、クラス全員文句ブーブー。

「しゃあないじゃん…。」

「そう…だけど…。」

「ミンナ、ガンバッテイキマショー!」

アフリカからの交換留学生ヤヤ・ンニャモは、うなだれるクラスメイトを元気づけた。


「はぁ~…今日の持久走、きつかったぁ。」

「なぁ…マジでなぁ…あ~、それにしても腹減ったぁ…。」

「だな…なぁ、ヤヤ、お前も一緒に寄るしょ?」

「エート、ナニ?」

「だぁかぁらぁ、お前も腹減ったでしょ?」

「アア、ハイ、スンゴークヘリマシタヨ。」

「じゃ、決まり!」

アウトドア部の菅原翔と富田祐介はそう言うと、す~っと行きなれた駅前の蕎麦屋に入った。

「いらっしゃい!」

「何にすっかなぁ…あ、そだ…俺、おでんそば…お前は?」

富田は菅原に話をふった。

「え~と…じゃあ、俺もおでんそば…ヤヤはどうする?」

「エート…ボクモオナジ…ア、デモ、オカネ…。」

「いいっていいって、無理に誘っちゃったからさ、今日は俺のおごり!」

「エッ!イイノ?ユウスケ、フトッパラ!」

「ははは、太っ腹って…そんな日本語どこで覚えたんだか…はははは。」

出汁のいい香りが、3人の空きっ腹に沁みた。

「はい、お待ち。」

3人の目の前に美味しい湯気が上がってきた。

ちくわ、ちくわぶ、はんぺん、がんも、こんにゃく、玉子が乗った茶色い中に、申し訳程度の刻みねぎの緑が利いている税込み300円のおでんそば。

取り立てて美味しい訳でもないけれど、何故か店で一番の人気があり、いわば地元のソウルフードと呼んでも過言ではないのだった。

「ネェ、ネェ…。」

「ん?何?」

「コレハ?」

「ああ、ちくわ。」

「?ジャア、コレハナンデスカ?」

「ああ、それ?それはちくわぶ。」

「チクワ?チクワブ?オナジモノ?」

「ああ、違う違う…全然違うよ…。」

「ソウデスカ?????」

蕎麦の汁が味が濃すぎて、全部は飲みきれなかった。


「ハ~、オイシカッタァ~!」

「そう?」

笑顔で首を上下に振るヤヤに、富田と菅原は笑顔で「そうでもないと思うよ。」と返した。

電車で塾に向かう富田と別れた菅原とヤヤ・ンニャモは、駅前から長く続いている商店街を見て歩いた。

「ア!ナズナチャン!」

ヤヤは高橋惣菜店の店先で接客している高橋なずなを見ると、ひゃっひゃとテンションを上げた。

「あ?あれ?もしかして…ヤヤさ、高橋のこと…。」

菅原がそこまで言いかけると、「ナズナチャン、カワイイ!カワイイ!」とヤヤは嬉しそうにしていた。

「そ…そっか…そうなんだぁ。」

お客に中華風甘酢肉団子300グラムと、イカメンチ5枚を入れたレジ袋を渡すなずなは、こちらに気づくとぺこりと頭を下げた。

菅原とヤヤもぺこりと頭を下げた。

「ショウ…フフフ…ナズナチャン…コッチミテタ…フフフ…。」

急に菅原と腕を組んできたヤヤは、ステップを踏みながら歩いた。

「良かったね…。」


…そっか、ヤヤは高橋みたいなでっかい…丸い女の子が好きなんだぁ…そっかぁ…そうなんだぁ…。


菅原は遠い国から来ているヤヤが、高橋なずなと付き合えるといいねと強く願ったのだった。

最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

お話はまだ続きますので、これからも宜しくお願いします。

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