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第二十四話

前回のお話の続きです。

どうぞよろしくお願い致します。


「危ないっ!」

バスセンターに向かう途中の歩道橋から身を乗り出していた多田ユミの腕を、ぐいと強く引っ張ったのは生徒会長で大喜利部の部長宮島つばさだった。

「馬鹿っ!危ねぇだろうがっ!何やってんだよっ!」

宮島に引っ張られへなへなとその場にぺたんと座り込んでしまっていた多田ユミは、自分を激しく叱る宮島の顔がどんどんぼんやり見えてくるのが不思議だった。

「多田っ!お前!聞いてんのかよ!あっ?」

瞬きをすると視界をぼやかしていた涙の玉がぽろんと落ち、途端に宮島がはっきり見えた。

「…ご…めん…。」

心ここにないといった多田の返答に、宮島はイラついて頭の後ろをガシガシと強く掻いた。

「お前さ…こんなとっから飛び降りたら…。」

多田はその続きはどうせ「みんなが悲しむ。」とかそういう台詞だと思っていた。

「迷惑だろうが!」

「…?」

「はて?みたいな顔してんじゃねぇぞ!お前がこっから飛び降りちまったら、下走ってる車の人、いきなり人殺しになっちまうんだぞ!てめえはいいさ、死にたがってんだもんな…だけど、お前が落ちてきたことでたまたま通りがかって轢いちまった人はどうなんだよ!普通に生きてきてんのにいきなり人轢いちゃって、人を一人殺しちゃうことになんだぞ!一生そのことで苦しむんだぞ!お前が勝手に落ちて死んだ後の処理、誰がすると思ってんだよ!自分の家族にも…その場にたまたま居合わせた人、たまたま見ちゃった人とか…お前一人の勝手な行いのせいで、いっぱいいっぱい色んな人が嫌な目に遭うんだぞ!そういうのわかってやろうとしてんのか?お前、死んでまで人に大迷惑かけることになんだぞ!わかってんのか?」

宮島の言葉があまりにもごもっともで、多田は自分の自分勝手さをすぐさま猛省した。

「ご…ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさい。」

「お前さ…いっつも自分勝手だよな…誰にでも攻撃的な態度でよ…そんなんだから…お前、いっつも一人で…もうそういうのやめたら?いい加減…。」

制服をほろいながら立ち上がると、多田の目を真剣に見つめてそう言った。

宮島にじっと見つめられると、多田はそれまで纏っていた硬い鎧ががしゃんと音を立てて体から剥がれ落ちていくような感覚に陥った。

「いいか、死ぬって簡単に思うかもしんないけど…死ぬってことは…哀しむだけじゃなくって…同時に迷惑もかけることになるんだ…誰が自分の死んだ亡骸の後始末すると思ってんだって…葬式するにも金かかんだぞ!わかってんのか?お前、そういうことなんて全然考えもしないで、死のうとしてたんだろ!だから自分勝手だって言ってんだよ!ちょっとも周りのこと考えられねぇのか?自分が死んだ後の処理とか考えられねぇんだったら、うかつに死ぬなんて思うなよ!生きたくたって生きられない人もいるってのによ…。」

「…そ…だね…ごめん…ホントに…ホントに…ごめんなさい…あたし…あたし…。」

「いいよ…もう…理由言いたいみたいだけど…それも聞きたくない…俺には関係ないから…それより…あ~…おっきな声出してなんか腹減ったなぁ…。」

歩道橋の階段をゆっくり下りながら、宮島は自分の凹んできた腹を摩った。

「あ…あのさ…おごる。」

後ろにいた多田が立ち止まって呟くように言った。

「あ?何?」

「…や…あの…なんか…おごる。」

「何で?」

「…あ、や、お礼…。」

「?」

「いいでしょ?おごるって言ってんだから!」

ふんと鼻息を荒くした多田は、ずんずんと追い越して一番下に来ると、宮島の方を見上げた。

目の周りを赤くした多田のぎこちない笑顔が、一瞬可愛らしく見えた。

「早くっ!早くっ!」

「…なっ…。」

「早く来ないと、あたし、気ぃ替わっちゃうから!もうおごんないよ!」

チッ。

にやけかけた顔を隠すように小さく舌打ちをすると、「待てよ!」と多田を追いかけた。

パタパタと走ると、多田の中にさっきまで巣くっていた重苦しさが徐々に薄くなっていくのを感じた。

「何だよ!お前、いっつもそういう風にしてたら可愛いのに…。」

「えっ?何?何か言った?」

「あ、ううん、何も…。」

バスセンターの傍に昔からある甘味どころに入ると、宮島は御膳しることところてんをご馳走してもらった。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだまだ続きますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。

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