第十八話
糸電話の思い出のお話です。
「あらぁ、糸電話…懐かしい…。」
干物部顧問の滝沢よし先生は、前日、部活で干しておいた「サツマイモ」の様子を見に体育館傍の「干し場」に来ていた。
「流行ってるのかしら?ふふふふ…今の子供達ってわからないわぁ…それにしても…懐かしい…。」
滝沢先生は遥か昔の出来事を回想し始めたのだった。
「そうね…あの時確か…。」
まだ教師になりたての頃、初めての赴任先の小学校にて担任を任された時、受け持ったクラスの中の一人の男の子が冬休みの自由研究で糸電話を作って持って来たことがあった。
彼は糸電話を色々な素材で数種類作って、それぞれの聞こえ方の違いなどを調べた結果を画用紙に書いて発表してくれた。
「…なので、僕もお父さんお母さんとお姉ちゃん達も予想していなかった、毛糸が一番よく聞こえました。僕の発表はこれで終わりです。」
「はい、ありがとう…素敵な研究でしたね。では、次は…。」
そうやって全員の発表が終わり、下校時間、糸電話の研究をしてきた彼がとことこと教壇にいる滝沢先生の傍にやってくると、「先生…あのね…あのね…これ、耳に当てててもらえる?」と言って来た。
「あら?いいわよぉ~…はい。」
そう言ってピンクに白い水玉柄の紙コップを受け取ると、滝沢先生はさっと耳にそれを当て目を閉じた。
大きな息遣いの後、小さな声が聞こえてきた。
「先生…あのね…あのね…僕ね…春香ちゃんのこと…好きなんだぁ…みんなには絶対内緒だよ…えへへへへ。」
笑顔で友達の中に戻って行く彼を、滝沢先生は今でもはっきりと覚えているのだった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
お話はまだまだ続きますので、これからもどうぞ宜しくお願い致します。




