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第十二話

大喜利部の特訓のお話ですが…大喜利ってなかなか難しいものですね。(お題とか答えとか考えるのも。)

門倉ひかりは、ついさっき手作り家電部の谷口こうに助けられた余韻を薄っすら引きずっていた。

玄関の前にあるロビーホール傍を通ると、そこで大喜利部が特訓をしていた。


「え~、じゃあ、次のお題いきます!山川君、皆さんに道具、お配りして…。」

「はい、かしこまりました。」

司会に扮した着物姿の2年で生徒会長の宮島つばさは、慣れた様子で下手しもてに待機している1年を呼んだ。

バタバタと慌てた様子で1年の山川けいは、人数分のスケッチブックとマジックを持って来た。

「え~…次のお題はこれです。スーパーヒーローが悪玉との対戦に遅刻してきました。その納得できない理由とは一体なんでしょうか?じゃあ、これで皆さん、何か上手いこと考えて…。」

司会の説明を聞いた大喜利メンバー7人は、すぐさまさらさらと渡されたスケッチブックに書き始めた。


最初に手を上げたのは、1年のホープ大野元気。

「おっ!最初に手を上げたのは君か、じゃあ、はい、大野!スーパーヒーローが悪玉との対戦に遅刻してきた納得できない理由とは?」

「はい!出掛けに玄関で片方の靴紐が切れたから。」

ははははははは。

ふふふふふふふ。

大喜利を遠巻きに見ていた数人の生徒達や先生から、小さな笑い声が聞えた。

「はははは…山川君…大野に座布団1枚持って来てあげて!はい!次っ!…え~と…じゃああ…坂下!…スーパーヒーローが悪玉との対戦に遅刻してきた納得できない理由とは?」

「はい!あのっ…ちょっとかぶるかもしんないんですけど…。」

「いいからっ!」

「はい!対戦場に向かっている途中、パンツのゴムが切れてしまって…。」

「はははは…駄目!駄目じゃん!ははは…はい、次っ!…。」

その後も「コンタクトレンズを落として捜していたから。」だの、「評判のラーメン屋さんの行列に並んでいたから。」だの、「たまたまスマホの圏外にいたから。」だのの答えが続いた。


なんだかなぁ…大喜利部…まぁ、頑張ってよ…はぁ、疲れた…さ、帰ろ!帰ろ!っと…


さほど面白いお題とも答えとも思わなかった門倉ひかりは、す~っと下駄箱の方に歩いて行った。

その後姿を大喜利中、座布団の上から目で追ってしまっていた大島ひでは、ひかりに届けと言わんばかりに参加しているみんなよりもひと際大声で手を上げて当ててもらうと張り切って答えた。

「…じゃあ、はい!大島!スーパーヒーローが悪玉との対戦に遅刻してきた納得できない理由とは?」

「はい!来る途中、恋に落ちちゃったから!」


聞えたかな?門倉ちゃん…どうかなぁ?聞いてくれてたらいいんだけど…届け俺のこの想い!なんちて…


大島の願い空しく、答えている丁度の時、門倉ひかりは玄関から外に出てしまっていたのだった。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだ続きますので、どうぞよろしくお願い致します。

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