表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/37

第十一話

飲み物部と手作り家電部が出てきます。

コンコン。

「はい?どうぞぉ~!」

「失礼しま~す…あの、容器返しに来ましたぁ~!今日もありがとうございましたぁ。」

そう言って駕籠部のマネージャー門倉ひかりと1年の部員鎌田大地は、クラブに特製ドリンクを提供してくれている飲み物部の部室に来たのだった。

「ああ、は~い…容器そこの台の上に置いておいてくれればいいから。」

「は、は~い…じゃあ、あの…失礼しま~す…次もよろしくお願いしま~す。」

門倉と鎌田は同時にぺこりと頭を下げると、静かに教室の戸を閉めた。


「やぁ~、なんかぁ、飲み物部ってすごいですよねぇ。」

切り出したのは鎌田だった。

「ああ、そうだよねぇ…運動部全部のドリンクと後、頼まれればどんなクラブにも飲み物作ってあげてるんだもんねぇ…すごいわ、ホント!部室なんかもう工場みたいになってるし…。」

「ですよねぇ…それにしても…今日の特訓は…俺ならまず担げないと思います。」

「え?ああ、今日の…。」

門倉の脳裏に大きな高橋なずなが浮かんだ。

「そうっすよぉ…あんな百貫デブ乗せて…先輩達やっぱすげぇなぁって…。」

「…デブって…。」


可哀想…高橋さん…こんなひょろひょろの1年なんかに百貫デブって馬鹿にされて…


「鎌田さぁ…ちょっと言い方、気ぃつけないとセクハラで訴えられるよ。」

「えっ!マジっすか…え~っ!デブをデブって正直に言っただけなのに…え~っ…え~っ…。」

「じゃね…明日は普通の練習だってコーチ言ってたから…。」

「そうっすか…じゃ、お先に失礼しま~す…さよ~ならぁ~。」

バタバタと廊下を駆けて行く鎌田は途中、横からスライドするように出て来たロボット掃除機を危うく踏みそうになり転倒していた。

それをしっかり見ていた門倉ひかりは、心の中で「ほ~ら、早速罰当たった。」と呟いたのだった。


1階から4階までの各フロアに、手作り家電部が製作した掃除機型ロボットと拭き掃除用のロボットがそれぞれ3台づつ配置されている。

帰りのホームルームの後、生徒達による掃除の負担を幾らかでも軽減させて早めに部活だの、帰宅だのできるようにと、数年前に手作り家電部が作ってくれたのだった。

部費や各クラスからのカンパだけでは制作費用が足りなかったので、PTAや卒業生などからも寄付を募った。

そのおかげで生徒達は階段やトイレを掃除するのと、ゴミ捨て、黒板消し、机拭き程度で早めに終わらせることができるようになった。


生徒達だけでなく、教師達や来客など校内にいる全員、放課後廊下を歩く際はそれらを誤って踏んだりしないように、十分気をつけるのがこの学校では当たり前になっていた。


「おおっと…っぶなっ…。」

門倉ひかりも通りかかった教室から出て来た拭き掃除用のロボットを除けようとして、よろけて転びそうになった。

そこを誰かがすっと助けてくれた。

今にも尻餅をつきそうな自分を、後ろから両脇を抱えて助けてくれた人が誰なのかまだわからないにも関わらず、門倉ひかりは恥ずかしくて今すぐにでもこの場から逃げ出したくなっていた。

「大丈夫?」

「ん?」

上から優しい声がしたので、ひかりは顔をぐいっと上げた。

すると、目の前に自分を見下ろすシュッとしたメガネ男子の顔があった。

「あ、や…あのっ…」


どうしよう…ドキドキが…ドキドキが…聞えちゃう…


ひかりは自分の鼓動が相手にも聞えてるんじゃないかと、心配になった。


助けてくれたのは手作り家電部の谷口こう。

学校一の秀才ですっと背の高い彼は、学年を問わず女子達に人気があった。

それは、ほぼ毎日学校の食堂で勝手にライブを開く大森ジョーよりも。


「はい、カバン…ごめんね、僕らが作ったロボットのせいで…。」

そう言うと谷口は、床に落ちていたひかりのカバンを拾ってくれた。

「あ、あの…ありがとう…ございました…。」

「いえいえ…それより、怪我は?大丈夫?」

「あ、はい…大丈夫…です。」

「そう…良かった…。」


「こう!」

ひかりと谷口が短く会話していると、廊下の向こうから長いゆるふわの髪をなびかせて、可愛らしい女子がやって来た。

「ああ、ごめん!今行く…じゃね…気をつけてね。」

そう言うと、谷口は待たせていた女子の元へ行ってしまった。


ああ、あの子…確か…谷口君と同じクラスの…川上ゆめ…ちゃん…二人って…付き合ってんだもんね…そだよね…ゆめちゃん…可愛いから他の男子にも、女子にも人気だものね…なんかお似合いの二人って感じだなぁ…いいなぁ…ゆめちゃん…谷口君みたいなカッコイイ王子様と一緒でさぁ…なんかいいなぁ…あたしにも王子様…来ないかなぁ…来ないか…来ないのかな…来ても駕籠部の…って、それは絶対にやだし…駕籠部の男共じゃマジでやだもんなぁ…最初、コーチ目当てだったけど…最近は全然ときめかないしさ…はぁ…それにしても、谷口君…すっげぇいい匂いしてたなぁ…ゆめちゃんもいっつもいい匂いだもんねぇ…やっぱ素敵な人って、女でも男でもいい匂いするんだねぇ…それに比べて駕籠部の男達の臭さったら…ひっどいからなぁ…何食べてあんな臭い出してんだろ?…同じ男子なのに谷口君はいい匂いなんだけどなぁ…何が違うんだろ?…きっと谷口君クラスのハンサムって、何食べてもずっといい匂いなんだろうねぇ…ゆめちゃんもさ…はぁ…そんなことより…なんか…お腹空いた…帰ろ…

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだ続きますので、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ