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魔導界ルスアンディ  作者: シグマ
3/5

過去

 証明するというのは難しいものだ。

 シグマはこの世界の事情と文化、言葉など知らないことだらけだ。

 そのため、精霊を怒らせるきっかけを作ってしまったのだ。

 精霊は「証明すれば許す」といった。

 普通なら、ラナを復活させられる呪文や結界をつくる、精霊を喜ぶことなど様々な方法があるが、シグマに明け渡された魔力はそれを補うための案が浮かばなかった。

 考える時間はそうない。

 あと3秒もみたないうちに精霊が放った魔法が到着するのだ。


 ラナをぎゅっとやさしくにぎりながら微笑むラナの表情を見つめる。ラナもこんないい表情を見せるんだな・・・と思ったとき、ふと一部の案がこみ上げた。

 それは、1秒もみたないうちに形を整えた。

 魔法名、呪文、詠唱・・・そんなのは知らない。

 そんなのは抵当でいい、大切なのはイメージしてここにある現状をひっくり返す方法を見出す魔法。それが一般で言う奇跡である。

「ぼくとラナの魔力よ、ぼくの言うことを聞き、形作ってくれ!」

 魔力が自信の体から水蒸気のように浮上しながら精霊の周囲へとなにかが生まれだす。それは、糸のようで羽衣のような透き通った布のようなものが精霊を包み込んでいく。だれかへ送るための風呂敷のように包み込んでいく。

「な、なんだこれは!?」

 精霊がその布を打ち破ろうと、杖で布を押すがびくともせず、青白い光を呼び、攻撃するがびくともしない。

 それどころか、布にくるまれていくさなか、精霊はなんだか眠りたくなるような感覚に満ちていった。

(これは・・・人間の優しさの布なのか? なんとも優しくて心地よいものだ・・・こんな感覚になれたのは久しぶりだ)

 精霊が杖に握る力がなくなると同時に青白い光は何事もなかったように消えた。


 精霊が地面へと倒れることなくゆっくりと浮遊する。杖を握っていた手はやがて力抜き、手放す。

 杖は精霊から離れると青い粒子となって光とともに消えていった。

 精霊は頭を左手で抑えつつ、気を失いそうにふらふらとするシグマに目を向けた。地面へ足を伸ばし、着地と同時にシグマへと足を運んだ。

 精霊はゆっくりとシグマに近づきながら「褒めてやろう・・・まさか、あそこで攻撃も結界も貼らずに、私を包むとは・・・考えもしなかった。よかろう、私はソナタに免じて許そう」

 よかったと・・・思うまま地面へと倒れた。


「こういう人もいるんだね」

 泉を黙って組み上げつつ、丈夫な布袋に入れながら少女が言った。いつからそこにいて勝手に組み入れているのか精霊は気づいていたようだった。

 少女は無言で水を汲み取る否や、精霊に聞いてみた。

「興味持った?」

「ええ、面白人だ。さて、私はやることがある。ソナタに頼んでもいいか?」

「いいぜ」

 少女は勇ましく言った。

 精霊に頼まれた少女はシグマの代わりに水を組み入れ、それをシグマがもってきたであろう茶色い布袋へ流し込む。

 エメラルド色に輝くその水は泉から離れたのにまだエメラルド色でさらに布袋の暗さのなかで緑色に光っていた。

 少女に礼をいうと、少女から「礼はいらないから、代わりに精霊か妖精と契約方法を教えてちょうだい!」

 少女はどうやら、この森で精霊か妖精を探すつもりでこの場所に来たようだ。爆発音や青白い光が天から降ってくる様子を木々に囲まれた葉の隙間から見つけ、ここまで来たようだ。

 少女がたどり着いた頃には、精霊が透き通った布に覆われている現場だった。

 なにごとかと思ったが近くにあったエメラルド色の水を発見し、精霊が収めている間に水をいただこうとしたようだ。

「あの~まさか、起こっていますか?」

 目を横線にしながらおそる聞いてみる。

「いえ、私は先ほどの戦いでとくに怒りはありません。逆に開放感に満たされています。」

「そ、そうですか、なら、この水持って行ってもいいんですよね?」

「ええ、この水はあまり持っていかれると本来は怒りだすものですが、この人のこともありますし、今回は見逃しますよ」

「やったー」

 少女は飛び跳ねた。

「さて、私はこのシグマたちを見なくてはなりません。あなたもここにいたことはほかの精霊たちには内緒にします」

「えー」

 少女は不満を口にした。少女は妖精か精霊と契約して成人式にでる予定でいたらしい。この魔法世界では、妖精や魔物、精霊など自分のお気に入りの生物のことを使い魔といい、自分のすぐそばで一緒に活躍する相棒のような存在のことだ。

 使い魔をもっていない人はいつまでも子供扱いで、使い魔を1体でも仕えることができれば成人だと認められるのだ。

「不満・・・か、そうね、ここから西に行った先に老人が住んでおります。その方に聞けば使い魔のことは教えてくれるでしょう」

「なんと!?」

 派手な驚き方をする。両手をパーにして開き、片足を上げ口はタコのように尖らせた。

「さて、私の魔法で老人の家に送りしますがいかがでしょうか?」

「あー、いえ私ひとりの足で向かいます。なんでも頼っていたら永久的に使い魔ができなさそうで不安になるんで」

「そうですか」

 くすくすと笑いながら、精霊はひとつだけ忠告した。

「ソナタにひとつだけ教えます。どんな使い魔にも文化や記憶、命をもっています。丁重であなたと同じ性格で性分も同じ使い魔がいたら、きっとあなたはその使い魔と一緒になれるかもしれませんね」

 とだけ伝えると、「へーいい情報ね。わたしの正確似・・・か。なるほど探ってみるのも面白いね」

 と、はしゃぎながら精霊に手を縦に振りながら駆け出した。西にいる老師の家へ。


「さて、裏切り者と人間・・・大変興味深い組み合わせ・・・何十年ぶりかしらね」

 ふと頭の中で過去の記憶が蘇る。


 それは、かつてこの森がまだ豊かで緑が溢れていたころ、この森によく旅人の男性が訪れていた。目的はエメラルドに輝く水と精霊・・・彼女に出会うためにこの森に訪れていた。

 彼はシグマよりもすこし背が高く、肩は弱々しいがどこか頼もしい風に思えてしまう青年だった。

 旅人というのに和風のお殿様のようなえりや着物を来ていた。そんな特徴を持ちつつおかしな独り言をいう彼に精霊はうっとりとしていた。

 最初は遠くからしか見ることはしなかったが、彼が自分の存在に気づくようになり、徐々に距離が縮み、話し合うような仲になっていった。

 たわいもない世間話。ときには彼の友達の失敗談、この森の生活やほかの精霊たちの生き方などいろいろと話が増えていき、しまいには彼がこの森で暮らす様になっていった。

 何日、何十日、何ヶ月、何年ほどたっても話は尽きなかった。それほど二人は互の息があっていた。


 何日かして彼が来なくなってしまった時期が月に1,2回ほどあったが、そのうち3、4回と数を増やし、しまいには年に1回しか会えなくなっていってしまっていた。

 精霊はきになり、彼の家で森の掟を破って出て行ってしまったことがあった。

 彼の家はどこにあるのかいつも話の中で聞いていたので大体の検討はついていた。彼に会いたいそんな気持ちで彼の家へと人間の女性の姿に変え、彼をおったのだった。


 だが、そこにいたのは彼という彼じゃなかった。

 彼は体が骨と皮となって布団にくるまれていた。女性はその人の家の人に尋ねると、深い病にかかっており、何年前からどこかへといっては夕刻に帰ってきて、ときには戻らなかったこともあったという。

 彼が森に行っていたというのは、その人たちは知らない。

 だけど、精霊は古い話で記憶のどこかへと隠していた。


 “森は神聖な場所。生きる人が入れば腐に食われていく”


 と、この人は何も知らずに森に入り、腐に食われながらも精霊にあっていたのだ、こんな姿を森で一度も見かけなかったのは神聖な森のかごのおかげだったのかもしれない。変わり果ててしまった彼の姿を見て、思わず号泣してしまった。

 その家の人たちにただ、「私は彼が一度だけ私を助けてくれたから恩を込めてきた」と嘘をいった。

 精霊は嘘をいってはいけに。もし言ってしまえば、精霊という階級を下げもしくは森から追い出される。

 だけど、そんなことは気にしていなかった。

 腐に食われた人間はどうなる? これがこの結果だ。

 彼をこんなふうに変えてしまった責任は誰にあるのか?

 長いあいだ、森の中へい済ませてしまっていた精霊のせいなのか?


 精霊はないた。森に帰り元の姿に戻るなり大きく泣いた。

 それからして、彼が来たのは最後となった雨の日だった。その日は、“帰りの都”といい、森は枯れるが、数ヶ月経てば魔力が森に行き渡り再び緑豊かとなる。そんな日のときに、彼は訪れたのだ。いつもと変わらない様子で。

 来てくれて嬉しいと口を謹んだ。

 彼の本当の姿を知ってしまった彼をこれ以上枯れて欲しくはないと精霊なりに彼の祈りを伝えた。

 彼はよくわからないようで、いつものように表情で話題をのせた。

 だけど、精霊は耳を貸すことなく、「これ以上は、この森に近づかないで」って、精霊は森の奥へ行くなり、魔法で彼がこの森に近づくかないように呪いをかけた。


 彼がその後、森に近づくことはなくなったが、使いに出していた妖精から悲しい知らせが来た。それは、彼が亡くなったのだという。

 精霊は再び涙を見せないように木々に隠れながら泣いた。



 それから、数十年後、シグマと老師が出会う20年前、ラナという少女がある男性と一緒にいたいと言い出した。

 もちろん、一緒になれば男性も妖精も命が枯れてしまう。

 精霊は大きく反対したが、ラナは「ひとりできる」といい、森から抜け出してしまった。

 それから合うことはなかったが、こんな形で出会うとは思わなかった。


 精霊は地面に倒れたシグマとラナに治療の魔法を施し、二人にそれぞれ伝言を残した。

「いい人のもと、いい人に見つけたわね。私は・・・それができなかった」

 と、ラナへ。

「あなたはとても興味深い。わたしの魔力も蓄積できる容量も与えられないけれど、この指輪をあげるわ。これは、各地に散らばる精霊たちの“同盟の証”。もしかしたら、何かあったときは、彼らが力をあなたに貸してあげるわ」


 精霊は一歩立ち下がり、シグマたちを少女よりも先に老師の家へと送った。

 その光景を見ていたかのように精霊の背後に男の姿が浮かび、再び消えていった。


 精霊は再び歌を歌った。

 

 『枯れてしまった彼はどこへいったのか?♪

 それは、途方もくれた先へと旅立ってしまったのよ♪

 けれど、私は待つわ。何年、年十年、何百年まっても、彼がきっと私を連れて行ってくれる都へ♪ 


 枯れてしまった光はどこへいったのか?♪

 それは、途方もくれた先へ消えてしまったのよ♪

 けれど、私は待つわ。何年、何十年、何百年まっても、光はきっと私を照らしていってくれる都へ♪


 枯れてしまった命はどこへいったのか?♪

 それは、私が知らない世界の先へ旅立ってしまったのよ♪

 けれど、私は待つわ。何年、何十年、何百年まっても、命はきっと私のもとへ帰ってくれる都へ♪』






 シグマたちが老師の家の玄関前に倒れているのを少女が発見し、老師に事情を話した。すると、老師はとても興味深く、少年とラナに今後のこともたくそうと検討した。

 シグマたちが目が覚める19分前にマージョナのもとへ頼まれていた材料を送った。伝言も一緒に「この子は面白い、少しのあいだだけ預からせて欲しい」と添えて。



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