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学園世界の調べ人  作者: 時白
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始まりの出会い

よろしくお願いいたします

 

 創製学園。

 僕が通う高校の名前。

 服装自由、髪型自由の緩い校風で、この町の真ん中にある。

 無駄に長いなだらかな坂の上にある。

 今日は日曜日。

 高校の寮から飛び出し、町に遊びに繰り出した僕は、坂の上りについて考えていなかった。

 遊びきって疲れきった僕にこの上りはきつい。

 季節も夏だし。

 なだらかだと思って本気でなめてました。すみませんでした。

「おーい。君。大丈夫?」

「コフー……コフー……びょくですか?」

 疲れてて舌かんだ。びょくですかってなんだ。

 熱くなった顔を声の方向に返すと茶髪の女性が心配そうな顔をして僕を見ていた。

「坂が長いよね。私はここの元生徒だったんだけれどさ。きついよね」

 元生徒なのか。年齢は僕と同じで高校二年生ぐらいだと思ったけど。きっと二十代前半ぐらいなのだろう若い。僕も若いけど。

「えっとさ。よければ車に乗ってく? 今の学校について色々と私も聞きたいし。君がよければなんだけど」

 女の人は赤い車を指差して言った。

 学校までここから車で十分ぐらいだし、美人で可愛らしい外見の女性の誘いを断る男子はなかなかいないと思う。僕は断らない。

「あ、お願いします」

 しっかりと呼吸を整えて言った。

「断られるかと思った! ありがとう! あ、私の名前はシチヤレイレイ。少し変わってるけどよろしくね! 君の名前は?」

 断る意味なんてない。名前は漢字ではどうやって書くのだろう? 車の中で聞いてみよう。

「僕は始野一と言います。ハジメノイチです。この町は変わった名前の人が多いですよね?」

 僕の名前もかなり変だと感じる。

「……うん。そうだね。変だと感じるよね……」

 驚いたように僕を見るシチヤさん。何か変な事を言ったかな? 僕。

「とりあえず、車の中に入ろうか! 外は暑いしね!」

 驚きを消して笑顔で言うシチヤさんに僕は

「ありがとうございます。お邪魔します」

 笑顔で返した。




 車内は冷房がガンガンに効いておりオアシスだった。

 名前の漢字を聞くと七八零々らしい。変わった名前だ。

「で、学校は楽しい?」

 後部座席に乗る僕に七八さんは聞いてきた。

「はい。楽しいと思います。少し気になる所とか不満もありますけどね……」

 もう会わないかもしれないし、元生徒である七八さんに愚痴りたくなったので不満もあると言った。

「……へえ! 例えばどんな不満?」

 七八さんは聞いてきてくれた。

「そうですね。なんか閉鎖的で。携帯も持ち込み禁止だし、坂を全部降りきるまで遊べる店とかないですし、その事もあって今日も友人を誘ってもついてきてくれなかったし」

「そうだね。全校生徒が全員、寮で暮らしているしね。学校の外の事とかも話題にでるのも少ないんじゃないのかな?」

 ん? そうなのか?

「そうなんですか?」

「そうだよ。生徒は全員、寮暮らしだよ。実家から通う子とかいないね。放送室を占拠して全校放送とかで聞いてみるといいよ」

「占拠ってなかなか過激ですね……」

「まあね。けっこう占拠するのは大変だった。今は分からないけど、確信を込めて全員が寮暮らしだと思うよ」

 占拠したのか。すごい人だな。車に乗ってよかったのかな? 危ない人なんじゃないだろうか。ちょっと不安になってきた。

「あ、ごめんごめん! 少しヤバイ人とか思うよね! 昔、少し荒れてたの。今は更生してるよ!」

「そ、そうですか」

 ヤンキーだったのか。人は分からないものだな。

「あ、そういえば、今も能力テストとかしてる?」

「してます! あれも少し変だと思うんですよ。普通高校であんなに入念にテストとかするのかなと」

 僕の高校では必ず金曜日にテストがある。

 順位とかを競うのではなくて変なテスト。

 何故やるのかが分からないし、結果を僕たちに教えないテストなので僕はとても不思議だし少し怖く感じている。

 他の友達とかは気にしてないみたいだけど……

「うん。何でやるんだろうね。学校の事、調べてみたら? なんか面白そうな事が出てくると思わない?」

「調べるですか?」

「うん。実はね……私は記者なの。何かネタがないかって思っててね。通ってた高校の事を調べようかなぁなんて思ったわけ! でも学校には入れないし、協力してくれる生徒さんを探してたの!」

「そうなんですか」

 疲れた僕を純粋に好意だけで助けたわけじゃなかったのか。そうだよね。可愛い女の人が損得抜きで僕に話しかけるわけないよね。

 話がしたいっていうのも僕と会話がしたいんじゃなくて本当に学校の事が聞きたかっただけみたいだし。

 恋は始まらないね!

「……どうかな?」

「いいですよ。タダじゃないですけどね」

 そっちが損得で話すなら僕もそうやって話す。

 可愛いからって容赦はしない。

「ありがとう! 報酬は有力な情報だったら一万円。大した事がない学校の話とか友達の話とか噂話とか何でもいいから話してね。最低でも三千円はあげる。日曜日に学校から歩いて五分ぐらいの所に車で迎えに来るから! 日曜日のお昼ご飯とかはタダで奢ってあげる!」

 破格の待遇だった。

 生徒は仕送り以外に学校内のボランティアでしか稼げないのでこの待遇は喜んで引き受けるレベルだった。

「引き受けます!」

 即答しました。現金な僕でした。
















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