始まらない朝
主人公が死にまくる物語です。
初投稿です。投稿は不定期になります。
至らぬ点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
ぼんやりした意識の中、チュンチュンと小鳥のなく声が聞こえる。
もう朝なのか。今日は月曜日だから学校に行く準備をしないと。
う~ん。だめだ、眠い。昨日遅くまでアニメを見ていたせいで起き上がるのが億劫だ。
アニメの主人公みたいに妹か幼馴染キャラが起こしに来てくれないかな。
「兄さん、起きてください。朝ですよ」
そうそうこんな感じで。
近くから女の子の可愛らしい声が聞こえてくる。
「もう、急がないと遅刻しちゃいますよ!」
声の主は俺を起こそうと肩を揺する。適度な揺れが逆に心地よく、俺の睡魔を加速させる。
「う〜ん、あと5分」
俺は使い古されているベタな返しをしながら布団の中に潜り込む
「朝ごはん冷めてしまいますよ?もう兄さんってば!」
ああ、耳が幸せだな。毎朝こんな感じで起こされたいわ。
でもおかしいな。俺に妹なんていないはずなんだが。
それにしても眠い。眠すぎて頭が回らない。
もういいや、今日は学校休めば。
俺は起きるのを諦めて意識を沈めようとしたらーー
「どうして起きてくれないんですか?」
急に女の子(妹?)の声のトーンが著しく下がった。
「そんなに私のことが嫌いなんですか?」
女の子は同じトーンで続ける。
そんなに私のご飯が食べたくないんですか?
そんなに私と居たくないんですか?
そんなに私と話したくないんですか?
そんなに私の顔が見たくないんですか?
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?
いつもご飯の準備してあげているのに
いつも洗濯してあげてるのに
いつも部屋の掃除してあげてるのに
いつも兄さんのことを想っているのに……
やばい、何これ?何で急に? 女の子の豹変ぶりに身の危険を感じる。
とにかく早く起きないと。
布団をどけて起きようとするが動けない。女の子が俺にのしかかり重心を押さえつけているらしい。
「兄さんに嫌われているのならもういっそ……」
ちょっと待っ--
ブスリッ
えっ……
何かが刺さるような音が自分の胸のあたりから聞こえた。そちらを意識すると徐々に熱を発していき、激痛に変わった。
があああああああああああああ⁉︎
痛い痛い痛い痛い!
視界は布団で塞がれているけど、自分が刃物で刺されたということは遅れて実感した。女の子は刺した刃物を無理やり引き抜く。
イギィィィッ‼︎
肉の千切れる痛みで悶える。刺された場所からは温かい液体があふれていた。それに比例するように体の熱が引いていくのが分かった。
死ぬ? このままじゃ本当に死んでしまう!
思考を恐怖が満たしていく。
嫌だ、死にたくない。助けて。
「兄さん愛してます」
ドスッ‼︎
女の子は再び刃物を俺に突き刺す。
「愛してます」
ドスッ
「愛してます」
ドスッ
「愛してます」
ドスッ
女の子は刃物を抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返す。刺されるたびに体が痙攣する。刃物が刺さる音と「愛してます」というささやきだけが響いている。無が近づいてくる。聞こえていた音が遠のいていき、そして--
あっ……
意識が途切れた。