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ずっと一緒に

夜中。

ポンポンと肩を叩かれてサトルが目を覚ますと、そこにはアカネがいた。


「ここを出るわよ」


と言って、アカネはサトルの腕を引っ張って起こす。それに気付いたブンジロウがやって来て、サトルの肩に乗る。


「習い事なんてもうウンザリ。早く出るわよ」


「でも、外には恐竜たちが…」


「これがあるから大丈夫!」


アカネはマッチが入った箱を見せると、一本のマッチに火をつける。


「動物たちは火が怖いから襲ってこないわよ」


「そうかな…」


アカネはマッチの火を吹き消すと、半信半疑のサトルをベッドから引きずり降ろし、客間から出て行く。

そして、長い廊下を進み、階段を下りて玄関から出て行こうとすると、明りがついてミツルをはじめとした従者たちが前を塞ぐ。


「アカネ様、どちらへ行かれるのですか?」


「あ、あれよ、お月さまでも見ようかなと思って…」


「今晩は曇っております」


「そ、それでも、お月さまが出て来るまで待つのよ…」


「アカネ様は、サトル様とご一緒にここでずっと暮らしていただきます」


「ずっとって、いつまでよ!」


「死ぬまでです」


ミツルはキッパリそう言い切る。


「……」


アカネは絶句する。


「これはアカネ様がお望みになったことです。ずっとこの宮殿でサトル様と暮らしたいと…」


「そうなの?」


サトルがアカネに確認する。


「確かにそう思っていたけど、まさか本当に…」


アカネはミツルの言葉にウソがないことを認める。


「そういうことなのか…」


サトルは何かに気付いた表情を見せる。


「そういうことって、どういうことよ?」


「それは…」


サトルが説明をしようとすると、メイドたちがアカネの腕を掴み、


「アカネ様、お部屋へ戻りましょう」


と言って無理やり連れて行く。


「やめなよ!」


サトルが助けようとするが、屈強な従者たちに腕を掴まれてしまい、


「サトル様もこちらへ」


と言われ、無理やり連れて行かれる。


寝室に戻ると、アカネはベッドに寝かされる。そして、メイドたちがアカネの服を脱がそうとする。


「ちょっとやめてよ!何するのよ!」


アカネは必死に抵抗する。そこに、サトルが連れてこられる。


「アカネ様とサトル様には、ご世継ぎをつくっていただきます」


とミツルは冷たく笑う。


「サトル!助けて!」


アカネは上着を脱がされ、上半身は下着だけになる。


「やめろ!!」


サトルはアカネを助けようとしてもがくが、従者たちに押さえられて身動きが取れない。


「やめろと言っているわりには、お元気ですね」


ミツルは膨らんだサトルの股間を見てそう言う。


「こ、これは…何かの間違い…」


サトルは目を閉じる。


「いえ、生命体として極めて正常な反応です」


「性行為は禁止されているでしょ!」


アカネはスカートを脱がされそうになっている。


「はて、そんな決まりは聞いたことがございません。覚悟を決められたほうが楽ですよ」


「イヤよ!こんなの死んでもお断りだわ!」


アカネがメイドに唾を吐きかける。


「何をするんですか!」


唾をかけられたメイドがアカネにビンタをする。アカネは怯まずにその手に噛みつく。


「ギャー!」


あまりの痛さにメイドはかがみ込む。アカネは自由になった右腕で、左腕を押さえているメイドの顔面を思いきり殴る。殴られたメイドは一言も発することなく、そのまま倒れる。

アカネは上着をとると胸を隠す。


「やれやれ、乱暴なマネはしたくなかったのですが…」


ミツルがアカネに歩み寄ろうとすると、突然明りが消える。


「何事ですか?早く明りを!」


ミツルがそう指示して、メイドがランプを持ってくると、そこにアカネとサトルの姿はなかった。


「急いで追いかけるのです!」


ミツルは目を血ばらせて怒りを露わにする。


目を閉じていたサトルは、暗闇の中でも物を見ることができ、アカネを連れて寝室から出ていた。そして、宮殿の発電機を破壊したブンジロウと合流する。


「助かったよ、ブンジロウ」


褒められたブンジロウは、照れくさそうにサトルの肩に乗る。


「このまま飛ぶよ!」


「オッケー!」


サトルたちは窓ガラスを突き破ってテラスに出ると、プールに飛び込む。


「あそこだ!プールに居るぞ!」


宮殿内にいる従者たちに見つかる。サトルたちはプールから出ると、門に向って走って行く。すると、地響きがして、大きな足音が近づいてくる。


「これ、ヤバいわよね…」


嫌な予感しかしないアカネは、唾をゴクリと飲む。


「早く捕まえるのだ!」


ミツルたちが玄関から出て来る。


「行こう!進むしかない!」


サトルたちは、再び門に向って駆け出す。

間もなく、ティラノサウルスがやって来て、電流が流れていない有刺鉄線を破って、宮殿の庭に入って来る。


「ヒーッ!」


従者たちは慌てて宮殿内に戻ろうとするが、次々とティラノサウルスに食われていく。

サトルたちの前には、ケトラサウルスをくわえたスピノサウルスが現れる。

スピノサウルスは瀕死のケトラサウルスを捨てると、サトルを噛み殺そうとする。


「サトル!!」


アカネが悲鳴に似た声で叫ぶ。すると、サトルの肩に乗っていたブンジロウがピョンとジャンプすると、スピノサウルスの口に回し蹴りを決める。スピノサウルスの巨体が宙に浮き、宮殿まで飛んでいく。


「ウソ!?」


アカネは口を大きく開けて驚く。ブンジロウは何事もなかったかのようにサトルの肩に着地する。


「こんなに強くなっていたなんて…」


サトルも驚きの表情を見せる。宮殿まで飛ばされたスピノサウルスはすぐに起き上がり、従者たちを襲い始める。


「早くここをでましょう!」


アカネが門に向って走り出すが、サトルは立ち止まったまま動こうとしない。


次々に従者たちの悲鳴があがる。


「ブンジロウ、お願いできるかな?」


ブンジロウは頷くと、サトルの肩から弾丸のように飛んで行き、従者たちに襲いかかっている恐竜を蹴り倒して気絶させる。


「なんであんな奴らを助けるのよ!」


アカネは不満を露わにする。


「命は、命だから」


「はあ?もうちょっとで私はサトルに犯されるところだったのよ!」


「それは…」


「もう人間って理解不能だわ…」


恐竜たちを気絶させたブンジロウが、サトルの肩に戻って来る。


「ありがとう、ブンジロウ。助かったよ。それじゃ、行こうか」


サトルたちはワイヤーが平行して延びている門まで移動する。そして、サトルがワイヤーに向かってジャンプをすると、ブンジロウがサトルの足を押し上げて、ワイヤーに届くようにしてあげる。ブンジロウは、同じようにしてアカネにもワイヤーを掴ませる。最後にブンジロウがピョンとジャンプをすると、サトルの肩に乗る。


サトルたちはワイヤーを伝って宮殿から去って行く。ギガノトサウルスが襲ってくるが、ブンジロウがデコピンであっさりと気絶させる。


「ブンジロウ、世界最強!」


アカネの機嫌が良くなる。その様子を見て、サトルも笑みを見せる。

ブントルとスピノサウルスの闘いを目の当たりにしたブンジロウは、外敵に見つかりにくいように小さな体に進化することを望んだ。同時に極限まで筋肉を圧縮することで、その反動を利用した圧倒的な攻撃力を得ていた。

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