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3種

研究室ではサトルがアカネに責められていた。


「サトルのせいだからね」


「ごめんなさい」


「殺されたらどう責任とってくれるのよ」


「ごめんなさい」


「ごめんなさいしか言えないの?」


「…すみません」


「サトルのせいだからね」


「ごめんなさい」


アカネが責めて、サトルが謝る。そんなやり取りが続く。



その様子を隣の部屋で二人の研究員が見ている。


「もう11時間も同じことばっかり言ってやがる」


「…なあ、一服しに行こうぜ。一人で休憩行くのも飽きた」


「でも、監視をしていないと…」


「こんなのずっと見ていても何の役にも立たないって。一服するくらい平気さ」


「…そうだな。こんな会話をずっと聞いていたら頭がおかしくなっちまいそうだ」


二人の研究員は席を立ち、部屋から出て行く。



研究室では、まだサトルがアカネに責められている。


「サトルのせいだからね」


「ごめんなさい」


「本当に反省をしているの?」


「ごめんなさい」


すると、サトルを繋いでいた鋼鉄製の留め具が外れる。


「ちょっと、なんでサトルから助けるのよ。ふつー、レディーファーストでしょ」


擬態していたサトルの分身が姿を現す。分身のほうはE58型の体型にはなっていない。サトルの分身が檻を曲げて、アカネを出してあげる。


「アカネも人間だったのですね」


サトルがそう言うと、


「はあ!?私を下等な人間と一緒にしないでくれる!」


とアカネは顔を赤くして怒る。


「でも…」


「私は、零壱人ゼロワンビトなんだから!」


「零壱人?」


「そう。いい、不殺生国には3つの人類がいるの。まず、ほっとくとすぐに殺し合うし、自然を壊してしまうサトルたち人間。そして、肉体を捨てて、プログラムとして永遠に生き続ける道を選んだ私たち零壱人。私たちは、人間と違って一切殺生をしないわ」


アカネはサトルとサトルの分身を軽蔑した目で見ている。


「それから、王族街に住んでいる…」


そうアカネが話そうとすると、


「その話は聞きたくない」


とサトルが止める。


「そうね、人間は知らないほうがいいわね。で、サトル、この後はどうするのよ?」


サトルとサトルの分身が同時にアカネに目をやる。


「あのね、私が今聞いたのはこのやせっぽちのサトルのほうよ。もう、面倒くさいわね。やせっぽちがサトルで、分身のほうはブントルね。サトルの分身だからブントル。オッケー?」


頷くサトルとブントル。


「で、ここからどうやって出るのよ」


「迎えが来るから」


「迎えって、私たちの未来から誰かが助けに来てくれるの?」


「未来じゃないよ」


「え?それじゃ誰が来てくれるのよ?」


すると、研究室のドアが開いてクロダが入って来る。


「念の為、カギを取ってきましたが、やはり必要なかったみたですね」


とクロダはカギを見せると、ポケットにしまう。


「アカネさん、これにお着替えください。不殺生国でも使われている素材でつくった服です。消臭性、速乾性に優れていて、水で洗うだけで簡単に汚れが落ちます。他にも自然環境を破壊しない素材でつくった女性用品や、オーガニックシャンプー、オーガニックコンディショナー、オーガニックソープを入れてあります」


クロダが服などが入ったバックパックをアカネに渡す。


「…ありがとう。気がきくわね。でも、どうしてあなたが不殺生国のことを知っているのよ?」


「後でお話ししますから、早くお着替えください」


クロダがアカネに背を向ける。


「あなたたちも早く後ろを向きなさいよ」


サトルとブントルも慌てて背を向ける。


「まったく気がきかないんだから」


アカネは新しい服に着替え始める。


「あのタイミングで分身をつくるとはさすがです」


クロダにそう褒められ、サトルは照れ臭そうに頭をかく。

実は、サトルが鋼鉄の板から離されて、アカネが檻から出された時、ササキの前に出たクロダが、サトルに手の平を見せていた。そこには、アリほどの小さな字で『迎えにくる』と書かれていた。


そして、クロダがササキの視界を遮っている隙に、サトルは細胞分裂によって分身のブントルをつくり、ブントルはすぐに擬態していたのである。そのことは球体ロボットだったアカネも気付いていた。


アカネは着替え終わると、借りていた上着をサトルに投げる。


「消臭性抜群の服を、よくこんなに臭くできたわね」


サトルは返してもらった上着を着て匂いを嗅ぐ。確かに臭いかもしれないけれど、冒険の跡が詰まったこの匂いをサトルは気に入っていた。


「この服、肌の露出が多くない?」


アカネが不満そうに言う。


「この時代では珍しい素材なので、それが精一杯でした。それにアカネさんにお似合いですよ」


「そ、そうかなー」


アカネはまんざらでもなさそうである。


「では、参りましょう」


とクロダに先導され、サトルたちは研究室から出て行く。

外では見張りの兵士が倒れていた。


一行は、究施設の最上階までエレベーターで上がると、空飛ぶ車に乗って研究施設から出て行く。

廃墟化した街を見て、アカネはため息をつく。


「人間って本当にバカね」


「それがいいところでもあるのですが、こうなってしまうと反論できません」


クロダは追手を警戒しながら運転をしている。


「こんなことしてあなた大丈夫なの?」


「未来No.U872569851に戻る前に、一緒に食事をしましょう。向こうでは、食べられないおいしい食べ物がありますから」


クロダはアカネの質問を無視して、サトルたちを食事に連れて行く。

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