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04

「ウチの伝令は全て潰しただぁ?確かにお前が担いできたのはウチの伝令役だが、1人ってわけじゃねえんだぜ」

「勿論、全員潰してやった。ラルドラド商会にお前らの居場所は伝わらない。ってことはつまり、助けは来ないって事だ」

「・・・3人とも殺ったってのか?」

「ウチには特別目が良い奴が居るからな。お前らの動きはお見通しってわけだ」


敵は1人。

殺気立った男たちが銃口や殺意を向けている中で臆せず良く喋る。

どうやらラルドラド商会の連中は奴に面識があるようだ。

その顔には一様に強い緊張と恐怖が浮かんでいる。


「へぇ、店の客を金で雇ったのか。良いアイディアだが、客の方は馬鹿丸出しだ。このワシに喧嘩を売る事になったんだからな」

「お前の方こそな。さっきは上手く避けたみたいだが、この距離じゃ外さねえぜ?」


客の1人がグレゴの背後に立ち、グレゴの背に向けて掌をかざす。

客の言う通り、この近距離でエネルギー弾を避ける術は無いように見える。

だが、グレゴは未だ平然としている。

その様子に客が苛立ち始めた時、嘲笑を交えたグレゴが客を挑発するように言った。


「・・・ホント馬鹿丸出しだな」

「なんだと!?」


グレゴの挑発に乗った客がエネルギー弾を放つ。

だが、それをグレゴは難なく片手で受け止めた。

そのままエネルギー弾は次第に力を失っていき、終いには情けない音と共に消滅した。

その光景に呆気に取られている客は、グレゴに殴り飛ばされる。


「避ける必要はねえーんだな。そんな貧弱な攻撃は」

「こいつハッタリじゃねえ!戦闘力が8000もありやがる!」


グレゴの戦闘力を計測した誰かがそんな悲鳴を上げる。

この場にグレゴの戦闘力を超える者は居ない。俺を含めた客たちも戦意を失っている。


「さ、そいつを寄越しな」


グレゴが指差しているのはマロリーが抱え持っているアタッシュケースだった。


「ワシも最初から手荒な真似をするつもりじゃなかったんだぜ?最初は売ってくれって頼んだんだ。ラルドラド商会によ」

「・・・ジヴォーダンの連中とまともに商談なんかできるかよ」


ギルスが憎々しげに呟いたジヴォーダンという名は俺も聞いた事があった。

かなり評判の悪い武闘派集団だ。

ここ最近、急に勢力を伸ばしているらしい。

厄介な事に首を突っ込んじまったと改めて思った。


「そいつが手に入るならどうでもいい。ワシは今、どうしても力が欲しいんだ」


よほどマロリーが抱えているアタッシュケースの中身が欲しいらしい。

グレゴの口ぶりからすると何か武器のようだ。


「お客さんよぉ、そいつは売りもんじゃねえんだよ」

「そうか、じゃあ、力ずくで奪うとするか」


正面からグレゴとギルスがぶつかった。

空間が震えるかのような衝撃波が巻き起こる。


戦闘力はギルスが4200、グレゴはおよそ倍の8000。

力の差は明白だった。ギルスの必死の一撃が、薄ら笑いを浮かべたグレゴに軽く防がれる。


「ラルドラドのギルスか・・・噂ほどじゃねえな。それが限界か?」

「ち、ちくしょう・・・ニッチ!サッチ!マロリーを連れて逃げろ!」

「そんな事を許すワシじゃねえ!


ギルスの命令通りにマロリーを担いで逃げようとするニッチとサッチだったが、ギルスのエネルギー弾によって足止めを食う。


「そいつを大事に持ってろよ?こいつに止めを刺したら頂きに行くからよ」

「くそぉ、この俺が部下を守る事も出来ないのかよ・・・」


このままではグレゴの望む通りに事が進むだろう。

望むものを手に入れて大人しく立ち去るならそれもいいが、そうする保証はない。

自分に敵対した酒場の客も皆殺しにしていくのは、はっきりいって、この街じゃ当然の作法だ。


ギルスは傷ついてはいるが、それでも味方の中じゃ一番高い戦闘力を持っている。

それをむざむざ倒されてしまっては、それこそ反撃の可能性は無くなってしまう。


何とかしてギルスに加勢しなくては、このまま死を待つのみだ。

バウトスを見る。その表情から同じことを考えているのが分かった。


俺はバウトスにだけ聞こえるように囁いた。


「同時に仕掛けよう。だが、ちょっと待て。準備がある」


そう言い残してデンチの元に急ぐ。


「デンチ、昼間に預けたエネルギーを今すぐ渡してくれ」

「・・・少ししかないけど」

「いいから!」


酒場に来る前にデンチに流し込んだエネルギーに期待する。

あの後、疲労感で満足に動けなくなる程に流し込んだエネルギーだ。

俺の総エネルギー量からいったら大した領じゃないのは分かっちゃいたが、無いよりはマシだ。


デンチの手からエネルギーが流れ込んでくる。


初めてデンチからエネルギーを受け取った時は自分の内と外の世界が一気に変わったかのような充足感を感じたが、今回はそれとは程遠い。


レコノイターで自身の戦闘力を計測してみる。


・・・1060だった。

さっき計測した時は980だったから80しか上昇してない。


「くそ・・・なんだよ。そんなもんかよ」

「ディル、何してる?ギルスが死んでしまうぞ!」


そうこうしているうちにグレゴは倒れたギルスを足蹴にしてマロリーの抱えているアタッシュケースに迫っていた。


「潜在能力を開花させる妖樹の実。デュナミス。前から狙ってたんだ。横からかっさらったのはお前らラルドラド商会なんだぜ?」


目的のブツまであと一歩のグレゴの足をギルスが未練がましく掴む。


「止めがまだだぜ。グレゴさんよ」

「ふん、わざとだ。デュナミスを食った後、手に入れた力を試す相手が欲しかったからな。だが、それほど止めが欲しいなら・・・くれてやる」


グレゴは足を掴むギルスの手を振り払うと、胸ぐらを掴んで無理やり立たせた。

そして、胸の辺りに手をかざし「じゃあな」と告げる。

グレゴの掌から殺意のこもった光が見えたかと思ったその時、バウトスの不意打ちの一撃がグレゴの延髄辺りに決まった。


よろめくグレゴ。

解放されたギルスはそのまま床に倒れ込む。


「なんだよ、他にも活きの良い奴が居るじゃねえか」


今度はグレゴとバウトスの格闘戦が始まる。

戦闘力は僅かにグレゴの方が上だが、格闘術はバウトスの方が上の様だった。

巧みにグレゴの攻撃をいなし、有効打を与えている。右腕の無いハンデを感じさせない身のこなしだ。


店の客から歓声が上がる。

だが、グレゴは余裕の笑みを崩さない。


見た目には攻勢なバウトスだったが、戦いが長引くにつれ不穏な空気が流れ始める。

バウトスの攻撃に勢いが無くなってきたのだ。

レコノイターで戦闘力を計ると最初は7000ほどだった戦闘力が5300にまで下降している。

どうやらバウトスが戦闘力を爆発的に向上させられるのは、それほど長い間というわけではないらしい。


「おいおい、もう息切れか?最初の勢いはどうしたんだ?」

「・・・見ての通り年寄りなんでね」

「そうかよ。まだ両腕が揃ってる若い時に出会いたかったもんだぜ」

「ふ、若い頃ならお前なんぞ、歯牙にもかけん」

「へぇ・・・言うねえ」


グレゴが突然、戦いの手を止めた。


「面白いモンみせてやる」


そういうと、わざわざ店の客たちに見せつけるように椅子の上に立ってポーズをとる。

まるで、これからショーでも始めるかのように得意げな顔だ。


「俺は変身する事で戦闘力を向上させることが出来るんだよ。代償として少しばかり理性が削られる・・・つまり」


グレゴの身体の変化は一瞬だった。

筋肉が膨張し、体表が赤黒く変わった。そして、額に角が大きく隆起している。


「・・・さっきまでの優しいワシじゃないって事だ」


戦闘力が12000にまで向上したグレゴが再びバウトスの前に立つ。

バウトスは相変わらず無表情のままだ。


「どうだ?これでもさっきのセリフが吐けるか?」

「それなら若い頃の俺といい勝負が出来るかもな・・・」

「ほんっと、残念だぜ」


グレゴの一撃がバウトスを捉える。

それは有無を言わせぬ一撃だった。ハッキリ言って俺には見えなかったほどだ。

バウトスは店の壁をぶち破って外へ吹き飛ばされた。


「今の手応え・・・妙だったな」

「ぐぅう・・・」

「驚いた!生きてやがるのか?」


立ち上がるバウトス。構えを取っている所を見ると戦意は失っていないようだ。

グレゴも店の外に向かう。

戦いの場は店の外に移された。


「すげえな。もしかして、生体エネルギーで体を覆って攻撃を防いだのか?お前、名前は?ワシにその技を教えてくれよ」

「・・・弟子にするにはお前は覚えが悪そうだ」

「そうかよ、じゃあ、せめて名前教えてくれよ」

「・・・バウトスだ」

「そうか。じゃあな、バウトス」


三度、バウトスとグレゴの攻防が始まった。

バウトスも良く防いでいるが、グレゴの力は圧倒的だ。

戦闘力の高い奴が低い奴を圧倒する。

良くある光景。俺の大嫌いな構図だ。


そんな中でバウトスの目が気になった。

これから殺されるかもしれないってのに、やけに淡々としている。

冷静というか・・・諦めきっているような目だ。


何もかも気にいらない。


「ん?なんじゃこりゃ・・・」


グレゴの目の前に握りこぶし大の光球が浮かんでいる。

それが弾けた。


「あがぁっ!」


エネルギー弾の威力自体は大したことは無いが、目の前で破裂したのだ。

グレゴは目の辺りを押さえて身悶えている。


「バウトス!今だ!」


その目晦ましのエネルギー弾は俺が放ったものだ。

俺の必殺技・・・というか、自分よりも強い相手と相対した時に昔から、良くやる手だった。いつもはこうして相手が怯んでいる間に逃げ出すのだ。


「ほら、今のうちに畳み掛けろって!リールー!?何してるんだ」

「え?自分はいいっす」


リールーの奴、居ないと思ったら酒場のマスターたちとフェンネルの後ろに隠れてやがった。

しょうのないやつだ。しかし、酒場の客の何人かが俺の号令に応じて攻撃を加えている。勿論バウトスもだ。

これでギルス達も加われば情勢が変わるかもしれない。

そう思って周りを見渡すと、肝心のギルスは、例のアタッシュケースから何かを取り出していた。あれが潜在能力を開花させる妖樹の実。デュナミスか。


「ジヴォーダンの奴にくれてやるくらいなら・・・俺が食ってやる」


ギルスがデュナミスを一気に口に放り込んだ。

傍目にも力が充実してゆくのが分かる。

戦闘力を計測すると15000にまで上昇していた。


世の中には凄いものがあるものだ。

とにかくこれならグレゴに殺られずに、報酬も手にすることが出来るかもしれない。


戦闘力を大きく向上させたギルスが攻撃に参加する。

その力は凄まじく、グレゴだけでなく他の者達も圧倒する。

結果、グレゴとギルスの一騎打ちの形となった。


「こりゃあ、次元が違い過ぎるねぇ・・・俺の出る幕じゃないって感じ」


俺はそう言いながら、用意していたエネルギー弾を消した。

同じ手は通用しないだろうし、正直助かった。


「大丈夫?バウトス」

「・・・ああ、なんとかな」

「グレゴの戦闘力が12000くらい。ギルスは15000。これなら・・・」

「駄目だろうな・・・」

「え?なんでさ?」

「グレゴにはまだ戦闘力を高められるはずだ。油断はできない」

「もしかして軍隊上がりの勘ってヤツ?」

「知識と経験だ。アイツと同じタイプの変身型宇宙人を知っている。そいつは今のグレゴよりも格段に戦闘力を上げることができた」

「え・・・嘘だろ・・・」


空から何かが降ってきた。

地面に激突して大量の砂埃を舞い上げる。

それはギルスだった。


後を追うように降りてきたグレゴ。

その姿は先ほどよりも禍々しく変容していた。


「だ、だ、だから言った、だろう?ワシは天井知らず、だって、なあ?」

「ぐうぅ・・・」

「い、生きてるな。こんなもんじゃ、わ、ワシの気が済まない。デュナミスを食っちまいやがって・・・み、皆殺しにしなきゃあ、気が済まねえ」


グレゴが俺達の方をギロリと睨んだ。


「特にさっき、こ、小賢しい真似をした奴、そいつは特に念入りに八つ裂きにしなきゃあ、な」


俺の事だ。多分、俺の目つぶしのことを言ってるのだろう。


「さあ、ぶっ殺してやる。ぶっ殺して、ぶっ殺して、そして、ぶっ殺してやる」


ゆっくりとグレゴが近づいてくる。

ああ、もう駄目だ。

ここんところこんな事ばかりだ。ツイてない。いや、今までが良すぎたのか。

この辺りじゃ、こうやって不運に命を落とすのはそう珍しい事じゃない。


・・・しょうがないか。


諦めも付いた時、俺達とグレゴの間にフェンネルが立ち塞がった。


「その辺にしたら?目当てのモノは手に入らなかったんでしょ?残念だけど、諦めて帰ってくれないかしら」

「な、なんだ、おんなぁ?」

「アナタ、派手にやり過ぎたのよ。ほら、騒ぎを聞きつけてラルドラドの救援も駆けつけたわ。潮時でしょ?」

「た、確かにお前の言う通りかもしれねえ・・・けどな。一匹くらいぶっ殺さなきゃ、気が済まねえんだよ。そいつはお前でも構わねえんだぜ!?」

「やってみなさいよ」


情けない話だが、俺はその二人のやり取りを見ていることしか出来なかった。

少し離れたこの位置でもグレゴの殺気は凄まじく、体が言う事を聞いてくれない。

それを間近に受けている筈のフェンネルだったが、少しも気後れしている様子は無かった。


暫くの沈黙の後、グレゴが変身を解いた。


「・・・ち、今回は退いてやらあ。だが、ラルドラド商会には必ず落とし前をつけさせてやる」

「思ったよりも話が通じる相手で良かったわ」

「へ、変な女だぜ。どこかネジでも飛んでるんじゃねえのか?」

「良く言われるわね」

「・・・面白いな。どうだ?今度、酒でも一緒に飲まねえか?」

「いいわよ。でも、アナタ次第ね。その為にもここでこれ以上、暴れない方が良いんじゃない?この辺りじゃ、ここしか酒場は無いのよ?」

「ふん、なるほどな。デュナミスは手に入らなかったが、面白い奴と出会えたから良しとするか」


そう言ってグレゴは立ち去った。

残された者は等しく命の危機が去った事に安堵する。


ただ、俺だけは惚れてる女に命を救われた事に言いようのない居心地の悪さを感じずにはいられなかった。

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