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第5章 俺たちの芸術の(諸)主義 『俺たちは芸術においてどんな主張が可能であるか』
芸術的感性は、少年期に現れて青年期に育まれる。
人生における芸術は青年期に磨かれ、成人した以後は心の中に潜在する。
芸術がその人の人生そのものとして完成するのは老年期になってからだ。だから慌てるな。
その気持ちの移り変わりには、対象に対する思いの深さと自分の個性とが強く関係する。
「こんなもの無駄だ」と思う気持ちと「これにこだわりたい」と思う気持ちは、自分自身にしっかりとした自我があれば心の中でうまく併存できる。
なぜなら、物事を合理的に考えて判断する事は、人間が生きる上で正しい態度であるが、それととともに、夢や希望を掲げて新しい世界を切り開きたいと願う気持ちもまた人間を人間たらしめている感受性と好奇心によるものだからだ。
2次元もしくは3次元の対象物に感性を加えた4次元的感覚は、静物的、物質的芸術に流れと動きを与える。
いつの時代になっても神秘的なものは絶えず新たに生まれるだろう。
どんな表現法を用いて、何を主張しようとも、自由と個性がある限りそれは可能だ。