探し物
病室の中、優希はゆっくりと顔をあげた。
目の前のベッドが、もぬけの殻だと気付いて、目をしばたかせた後、立ち上がる。
その勢いで、椅子が倒れて、大きな音をたてた。
優希は、かまうことなく扉に向かうと、これまた勢いよく扉を開けた。
「探し物か?」
扉の前に立っていた雅樹が、笑いを堪えるようにしながら言った。
先ほどからの優希の反応を、外で笑っていたのだと気付いて、優希はむっとした顔になった後、
「ええ、とても世話の焼けるもの」
と、すぐに柔らかい笑顔を作り、
「また、わたしを置いていなくなった」
と、頬を膨らませる。
その様子を、雅樹の真っ直ぐな瞳が優しく見つめていた。
この眼差しを知っている。と、彼からの告白を思い出して、優希は顔を赤く染める。
「どうした、変な夢でも見たか?」
「夢?」
優希は、昨日、病院で目が覚めるまでの間の記憶がおかしいことを思い出す。
「うん、……とても長い夢を、見ていた気がするけど……」
眉間に皺を寄せて考え始める優希に、
「神楽が待ってる」
と、雅樹が告げた。
優希の顔が、ぱっと輝く。
その言葉で、優希には彼の居場所がはっきりと分かった。
「ありがとう」
と、雅樹に背を向けて、廊下を走り出しながら優希は考える。
でも、あれは、変な夢を見る前の出来事ではなかったかと……。
そのことに気付いて足を止め、振り返った先に、雅樹の姿は無かった。




