第005話「遺跡探索」
なんとなく考えついた死亡フラグ。
パート4。
「も、もう嫌だ!こんな所にいたくない。私、部屋に戻る!!」
因みにこの前書きは本文に全くと言っていいほど関係ありません。
「おいキョージュ!そっちに何かあったか?」
「ああ、コピー用紙…紙が大量にあった」
「すごいじゃないか!所でこれは何だ?破れてて読めない部分もあるが大量の数字と火や水等の魔術に使う漢字が書かれてるんだが」
「それはカレンダーだよ。今は1年が360日で一月は30日、表記する時は1月1日のような方法しかないが、旧時代ではもっと複雑で1年は365日だったし一月も30日とはきまってなかったんだ。そして7日周期で月火水木金土日と曜日でも分けられていたんだ」
「そうなのか。さすがキョージュだな!!」
「良し、そろそろ下の階に行くか」
「そうだな」
自分は今遺跡探査をしている。
なぜかキュラちゃんによってキョージュに推薦され、半ば強引にキョージュになってしまった。
まあ、その結果税金を収めなくてよくなったので良しとしよう。
キュラちゃんが弟子入りするのが決まりだとかで押しかけてきたが、一人よりは楽しいのでいいだろう。
唯一彼女は吸血鬼だから差別されるのではと心配していたみたいだが、人種差別を禁止している日本に生まれ育った自分には、襲われてもいないのに差別するはずは無かった。
因みに名前はあだ名だ。
吸血鬼からドラキュラになり、そこから取ってキュラちゃんだ。
一人前になるまではあだ名で呼ぶしきたりらしい。
三つある中で一番高いビル。
その30階から降りてきて今は25階だ。
そろそろ砂に埋もれている範囲に入っていく。
『圧縮』
『固定』
普通なら大勢で掘り進まなくてはいけないが、自分なら一人で出来る。
圧縮の魔術で砂を1センチ角位に圧縮し、固定でビルの壁を強化しておく。
因みにここまでも固定だけは使っていた。
崩れたらたまったものじゃないからな。
この魔術はシンプルなだけにイメージが大切なので、この時代の人にはなかなか出来ないだろう。
それに一階分で合計大魔導師5人分の魔力が必要だ。
大魔導師は少なくとも宮廷魔術師10人分以上の魔力と決められている。
ヘルベチア王国には宮廷魔術師10人しかいない。
所属していない魔術師なんかがいるかもしれないが、どちらにしても合理的ではないだろう。
さらにヘルベチア王国には大魔導師は2人しかいないらしい。
一人は御年80歳の宮廷魔術師長。
大魔導師2人分の魔力を持つらしい。
もう一人はキュラちゃんだ。
キュラちゃんは大魔導師1.2人分の魔力を持つ。
キュラちゃんの方が純粋な基礎魔力は多いが、年の功というのであろう。
宮廷魔術師長はイメージと文字の正確さで大魔導師二人分の魔力を出しているらしい。
しかし、どこまでいっても二人分だ。
宮廷魔術師全員で行なってもおそらく1階分の魔力もないだろう。
「やはりキョージュの魔術は凄いな!」
「ありがとう」
褒められるとやっぱり嬉しいもんだ。
さて…。
「キョージュ!これは何だ?」
「はいはい、えーっとこれは…」
そんなわけでビルを探索していったのだが、不思議なことに特に荒らされてはいなかったのだ。
この時代に来る時の砂嵐の時に何かあったにしろ、その前の1年くらいの叫び声の時に何かがあったにしろ、一瞬にして何かがおこった可能性がある。
今考えても仕方がないので保留にしておくが。
数日かけて、三つのビルを探索し終えた。
周りにも埋まっているかと掘ってみたが、完璧に崩れた残骸しか出てこなかった。
この近距離でなぜこうも保存状態が違うのか分からなかったが、それも保留にしとく。
いらないもの、自分達が使うにしろ絶対に余るであろう紙等を売り、当面の生活費を稼いだりした。
というより、贅沢しすぎなければ一生過ごせるお金を手に入れた。
さらに、このビルは貸ビルだったみたいで、様々な会社が入っている。
よって様々な知識も手に入れる事が出来た。
しかし、自分はこれでは終われない。
なんとなくこの時代もなかなかいいかもと思ってきたが、旧時代に戻る事を諦めきった訳ではない。
死ぬ気で探そうとは思わないが、調べようとは思う。
旧時代に残してきた物はそれほどに捨てがたい物なのだ。
旧時代に戻る方法を探すにはほかの国も見て回らないといけない。
キュラちゃんに聞いたがこの国には時間系の魔術すらないみたいだ。
因みに自分の魔術で帰れないか試してみたが、なんとなく全然魔力が足りない気がして中断した。
このごろ魔術を使っていたので大体の魔力使用量が分かるようになってきたが、おそらく数秒過去に戻るのに自分の魔力は全て使い果たしてしまうだろう。
さて、話を戻すがこの時代では国と国を移動するには命懸けらしい。
どれくらい信頼出来るか分からないが、かつて水の惑星と呼ばれた地球はその90パーセント以上を砂漠とかしているという。
生き物は限られた土地で暮らすしかなくなっている。
砂漠に適応した生き物は別だが。
その分国と国の間は広く過酷だ。
もちろん例外もあり近い所もあるみたいだが、少なくともヘルベチア王国からはどの国に行くにしても遠い。
そこで自分は乗り物を作ろうと思う。
最初は車でいいかなと思ったが砂漠を走るのにあまり適していないし、自分にはもっと作りたいものも出来た。
それは船だ。
船は好きで製作したかったが、内部の詳しい構造はわからなかった。
だがある一フロアに造船関係の会社が入っていたらしく、船の図面が手に入った。
これを元に作っていき、好きなようにカスタマイズしていけばいいだろう。
因みにヘルベチア王国にも船はある。
木造の20メートル位のが2隻ほどで、今は魔物との戦いのために出払っているとキュラちゃんが言っていた。
要は魔術で砂の上を滑るように、かき分けるように進むらしい。
風を帆で受けて進む帆船らしいが、自分はスクリューとかで作れればいいと思う。
「キュラちゃん、一回自分がバラバラになるイメージをしてから、思い浮かべた場所で再び集まるイメージでやってみて」
「はい」
「あと、転移の文字は…」
今自分はキュラちゃんに魔術を教えている。
自分の家で。
そう、自分は家を建てたのである。
土地を買い、そこに錬金の魔術にて一日で建てたのだ。
キュラちゃんも当然のごとく居候している。
一応同い年なためドキドキしてしまうが、そこは我慢だ。
ちなみにこの家は自分の魔力によって、旧時代に近い生活が出来る。
一日に大魔導師10人分の魔力を取られるが、風呂はもちろんあるし、冷蔵庫やクーラーもある。
そんな事を考えていると、目の前からキュラちゃんが消える。
そして10メートルほど離れた所に瞬時に現れた。
「キョージュ!出来たぞ!」
「やったな!」
「フフフ、私にかかればこれくらい楽勝だ」
「じゃ、まあ今日はこれ位で」
「もうか?」
「いやいや、もう魔力ギリギリだろ?無理は良くない」
「…分かった///」
「?さて家に入るぞ」
「ああ」
ビル探査が終わってから数日でキュラちゃんは転移の魔術を使えるようになった。
魔力も今では大魔導師3人分はある。
それでも転移は大魔導師1人分の魔力が必要だからまだまだ負担は大きい。
それに長距離転移は魔力もその分使うのでまだ無理だ。
まあそのうちなんとかなるだろう。
人間として驚異的な基礎魔力量を誇る自分は魔術を使い始めた頃より慣れて、今や大魔導師1100人分ほどの魔力を持っているが、キュラちゃんも吸血鬼という種族的に人間を軽く超えた基礎魔力を持っている。
自分よりは下だが。
イメージや文字の書き方がもっとしっかりしてくれば、大魔導師700から900人分位の魔力を得ることが出来るだろう。
■■■
私は彼をキョージュに任命すると同時に弟子になった。
快く受け入れてくれた。
人目の多い街道で伝説の技、ドゲザーをしたからだろう。
それでも吸血鬼である私をすんなり受け入れてくれたキョージュはとても優しいと思う。
知らないからかとも思ったが説明しても態度は変わらなかった。
キョージュと遺跡を探索して、色々な事を学ぶことが出来た。
キョージュは田舎から出てきたと言っているが、私は嘘だと思う。
あの知識量は普通ではない。
きっとどこかの大国の宮廷魔術師だったのだろう。
私みたいに疎まれて、妬まれて、疲れたから違う国でやり直そうといったところだろう。
その国にしては大きな損失だろうが、私にとっては運がよかった。
遺跡探査があらかた終わった後弟子として魔術を学んだが、既に魔力は倍以上になっている。
この国では2番目の魔力を待つ。
もちろん一番はキョージュだ。
どのくらい魔力があるのか聞いてみた時、えーっと大魔導師1100人分位だよ、と普通に返した時には耳を疑った。
私でもまだ3人分だというのに。
でもキョージュが言うには私も700から900人分位にはなれるらしい。
信じられないが、確かに彼に教えてもらう書き方で文字を書くと効率が全然違う。
まだまだ慣れないが、書き順や書き方、その文字の成り立ちを覚えれば出来るようになるらしい。
彼が家を立てたので、居候している。
弟子は一緒に住むものだと言って。
たしかに一緒に住む師弟関係は多いが、同性がほとんどだ。
しかしキョージュは田舎者設定を通しているので、反論できまい。
フフフ。
しかし私も年頃の女だ。
いくらキョージュといっても男である。
ひとつ屋根の下なので、襲われるかもと思って凄くドキドキした。
もちろん性的な意味でだ。
でも一緒に暮らし始めて少し経つが全然襲われる気配がない。
わ、私の体に魅力がないのか?
た、たた、確かに同年代と比べて発育が少し、少しだけ悪いが。
まあ、襲われたいわけではないからいいが。
というわけで、遺跡の探査や魔術の勉強等、城で働いてた頃よりずっと充実している。
既に城への今月分の報告資料も書いたし…。
「キュラちゃん、ちょっとこっちきて」
「なんだ?」
呼ばれたのでキョージュの部屋に行くと封筒を渡された。
「これは?」
「給料」
「え?でも私は宮廷魔術師として給金もらってるから…」
「いや、でもケジメというかなんというかね」
「わ、わかった。有難う」
「いやいや、キュラちゃんには世話になってるからね」
「ふ、フンッ!///」
なんか恥ずかしかったのでいそいで部屋に戻った。
なぜか初めて給料をもらった時のように、いやそれ以上に嬉しかったのだ。
因みに中身を確認して、5000円入ってた事に驚いた。
宮廷魔術師の2倍ほどだ。
確かに遺跡を発見したキョージュにしたら無理な金額ではないかもしれないが、それにしても多い。
私のことをそれだけ評価してくれているのか、ただ金銭感覚が間違ってるだけなのか。
まあ、おそらく前者だろう。
キョージュはお金持ちになっても金銭面では結構しっかりしてた。
ということは、キョージュは私のことを評価、大事にしてくれているのだろう。
嬉しい。
こんな事は両親が死んでから初めてだ。
その後私はベッドの上を、もらった給料を抱えたまま転がった。
その時出ていた音や口から勝手に漏れていた笑い声を隣の部屋にいたキョージュに聞かれていた事を後で知って、恥ずかしい思いをするキュラちゃんだった。
■■■
ば、馬鹿な。
宮廷魔術師5人。
そのうち1人は宮廷魔術師長であり、大魔導師でもあるお方だ。
兵も1000人。
それもほとんどが精鋭だ。
軍を率いる将軍も国で一位二位を争うおかただ。
負けるわけない。
そう思っていた。
だが実際はどうだ?
既に軍は壊滅寸前だ。
そこらへんからは叫び声が聞こえている。
そしてとうとう撤退命令を知らせる音が辺りに鳴り響いた。
ああ、負けたんだ。
たった一匹の魔物に。
悔しい。
出来る事ならさらに鍛錬を積んで仲間の敵を取りたいところだが、それは無理だろう。
わき腹に目をやると大きな穴があいていた。
ものの見事に食いちぎられている。
そこから赤い血が勢い良く流れ出していた。
痛みは…全くしない。
薄れ行く意識の中彼は故郷の街並み、両親を思い浮かべていた。
せめて、この魔物がそれらを襲う事のないように。
彼に残されたわずかな時間で出来ることと言ったらそれ位しかなかった。