第004話「ゴブリンと遺跡」
なんとなく考えついた死亡フラグ。
パート3。
「おい!何をぼさっとしている!!」
「ああ、隊長ですか。こんな辺境の砦になんて誰も攻めて来ませんよ」
因みにこの前書きは本文に全くと言っていいほど関係ありません。
ギルドに登録してから数日がたった。
さてさて、今の自分の状況を他人が見ると絶体絶命と言えるだろう。
見渡す限りにゴブリンと呼ばれる人間の子供位の鬼。
身体の色は緑色で、全体的にゴツゴツしている。
目玉はギョロっとしていて大きい。
なにも着てない奴がいれば、服を着ている奴もいる。
数匹は鎧すら装備していた。
しかし問題なのはそこではなく、ほとんどのゴブリンが武器を持っている事だ。
木の棒や棍棒とかはまだいい。
刃こぼれしているが、剣を装備している奴もいるのだ。
そんなゴブリンが100体以上いるのだ。
しかも囲まれている。
普通だったら10人位で挑むクエストだが、自分にそのような仲間はいない。
最悪逃げればいいし、魔術という必殺技がある自分は大丈夫…だと思う。
まあ、今回は自分の力を試すために、刀だけで戦ってみようと思ったわけだが、5分で3匹。
ごく普通な戦果と言えよう。
因みに生き物を殺す事に葛藤とかは無い。
いや…あるにはあるがそんなのは気にしていられない。
奴らは自分の命を本気で狙ってきているのだ。
そんな事を考えていたら死んでしまう。
というわけで、さらに2匹ほど倒した時自分の疲労度は結構高くなっていた。
数の差は大きい。
厳しくなってきたので自分の魔術抜きの力はこの位だと認識する。
『火炎の海』
ズゴオォォォオオオ!!
魔術を発動させると辺り一面が火の海になる。
砂漠しか無いので安全ではあるが、もう少し弱めた方がいいのかもしれない。
数十秒後火は消え、ゴブリンは真っ黒になっていた。
そして次の瞬間、今まで倒したゴブリンが時間差はあれど煙となって消えた。
「うん、Cランク位なら自分一人でも行けるな」
さすがに魔術が無いときついものがあるが。
第一にゴブリンはEランクの魔物だ。
今回は数が多いからとCランクのクエストになっていた。
つまり1匹1匹はそれほど強くない。
面攻撃ができるのなら結構余裕で倒せる。
これでクエスト報酬が1000円と、ゴブリン1匹に付き5円は高報酬と言えよう。
普通は人数分で分けるのだろうが、自分は全て自分の物に出来る。
確かに受付さんが止めるように一人では辛いけど、魔術があればなんの事は無い。
自分クラスの使い手だけかもしれないが。
「っていうか、どれ位倒したのかな?」
ギルドカードを確認すると、ゴブリン113匹565円、ゴブリンメイジ2匹40円と書かれていた。
今回の報酬は、全部で1605円となった。
因みにこれは税金をすでに引いた額なので、この金額丸々全部もらえる。
それにドロップアイテムとして錆びた剣4本を獲得した。
売れば合計100円位になるだろう。
錆びているからといっても鉄は鉄だ。
鉄は高く売れる。
どうやら製鉄技術が本当に未熟らしい。
ドロップアイテムは強い敵ほど落とす確立が高いらしい。
ゴブリンは弱いしそれほどいい物は残らない。
「まあそれでも結構儲かったな。これで遺物でも集めるかねぇ。もっと貯まったら家を買うのもいいか」
本拠地は大事だからな。
因みに遺物とは旧時代の物の事をいう。
刀や銃弾とかを買ってから今日までで拳銃も見つけたが、今度は銃弾の大きさが合わなかった。
まあ、そのうち役に立つだろう。
それにしても旧時代製の物は少なかった。
ヘルベチア中の店を見てみたが、結局は拳銃以外見つからなかった。
…そろそろ帰るか。
と、ヘルベチアの方角を向いた時にそれはおこった。
パキリ
小さな音。
その次の瞬間、ダガァン!!と大きな音と砂埃の舞い上がる中、自分の足元は周囲10メートルほどの範囲にわたって崩落した。
「わああああぁあぁぁあぁぁああああぁぁぁぁああ…ふ、ふふ、フライ!!」
ここで、魔術を使えた自分は凄いと思う。
カタカナなので漢字の浮遊より、さらに咄嗟の事だったから威力が弱い。
基本的に漢字>平仮名>片假名の順に威力が変わる。
単体で使う場合なので、実際に使う時は違うだろうが。
少なくとも落ちるスピードが緩やかになったから、落下死の危険性はないだろう。
数十秒後最下層に付いた。
深さ300メートルはありそうな縦穴、さすがにほとんど光が入ってこない。
遥か上の方に少し光が見えているだけだ。
辺りを見ると暗いのでよく見えないが結構広く感じる。
『照明』
直径1メートル位、球状の光源が辺りを照らし出す。
そこには自分のよく知る光景が浮かび上がった。
「これは…ビル、か」
そう、3棟のビルが立っている。
ヘルベチアの王城より、保存状態も良い。
ほとんど砂に覆われているから、他にも埋もれているかもしれない。
自分はその中で一番高いビルの屋上に立っていた。
積もっている砂を軽く払うと、崩れている所は崩れているが、旧時代そのままの部分もいくらか残っていた。
まあ、何であったかが分かる位にだが。
王城は表面がボロボロで補修された部分も多かったからな。
屋上にあるドアを開けると、長い間閉じられてきた部屋独特な匂いと共に、錆び付いたドアは意外なほどあっけなく開いた。
中は照明の光が及ばず暗い。
調査したいがしていたらさすがに日が暮れてしまうだろう。
「今度かな…」
自分は明日辺りに調査をおこなおうと、浮遊を使って飛び上がり外に出た。
とりあえず『幻術』で分からないようにしておこう。
基本的に旧時代の建物、遺跡は見つけた人のもので、ギルドに申請すればいい。
税金は結構取られるが、それ以上のものを得る事が出来るだろう。
しかし、どこにでも悪い奴はいる。
今では盗賊とかもいるんだ。
墓荒らしならぬビル荒らし。
偶然とはいえせっかく見つけたんだ。
取られてなるものか。
『転移』
場所のイメージが鮮明に出来ないと使えないので、行きは歩きだったが帰りはこれで帰ることが出来るのだ。
次の瞬間目の前には夕暮れの中、ヘルベチアの外壁がそびえ立っている。
兵士さんに軽く挨拶して、自分はギルドに向かうのだった。
「すみません、クエスト完了しました」
「あ、良かった。無事だったのね。お疲れさまです」
それから一通りクエスト終了の手続きを終えたわけだが。
「あの…」
「はい、なんでしょう?」
「遺跡見つけてしまったのですが」
「本当ですか?おめでとうございます」
うん。
基本的にお金持ちになれるからね。
「凄いですね。では早速確認の手続きをしましょう。」
「はい」
3日後、自分は外壁付近で人を待っていた。
今日は城に勤めている人が、遺跡を確認するらしい。
自分はその道案内だ。
「おい!お前が遺跡を発見した者か?」
「あ、はい。今日はよろしくお願いします」
「フンッお前みたいなヒョロヒョロが遺跡を発見するとはな」
「ハハハ…」
あれ?
何この子?
歳は自分と同じ18歳って聞いてたけど、この生意気な態度もの凄くムカつか…ない!!
まず、確かにここの兵士や酒場でよく見るマッチョな方々と比べたら、自分はヒョロヒョロだろう。
それは事実だし、自分としてもあそこまでになる位だったらヒョロヒョロでいい。
それとは別に何?
ものすごく可愛いんだけど。
身長低!
140センチあるのかな?
小学生?
肌白!
金髪で長い髪、少しつり上がった目。
八重歯が少し目立つがそこがチャームポイントになっている。
でも全体的にいえば美人さんだ。
旧時代であれば10人中10人振り返るだろう。
ロリコンとか関係無しに。
愛でたい。
…落ち着こう。
なんか子供が見えを張っているようにしか見えない。
これで宮廷魔術師というのだから、エリートなんだろうけど。
まあいい、この子を遺跡まで案内したらミッションコンプリートだ。
「何を黙っている?さっさと行くぞ?」
「そうですね…」
■■■
「ハァ…」
全く、なんで私がこんな面倒なことしなくちゃいけないんだ。
私に回ってきた命令書には遺跡確認と書かれていた。
確かに遺跡確認には宮廷魔術師以上が立ち会わなくてはいけないが、正直めんどくさい。
この国では遺跡は結構見つかるからだ。
年に1回位だが。
立ち会ったからってなにを得る訳でもないし。
でも、命令だから仕方ない。
えっと、期日は…明日じゃないか!
もっと早くよこさないか!!
これだから…。
翌日。
待ち合わせの場所に向かうと、そこにはヒョロヒョロな男が待っていた。
「おい、お前が遺跡を発見した者か?」
「あ、はい。今日はよろしくお願いします」
「フンッお前みたいなヒョロヒョロが遺跡を発見するとはな」
「ハハハ…」
全く…こんなやつが遺跡を見つけるなんて世の中不公平だ。
「何を黙っている?さっさと行くぞ?」
「そうですね…」
何ボケっとしているんだ。
これだから男は。
「じゃあちょっとこっちに来てくれませんか」
「は?なんでだ?」
まあ、行くけど。
「なんだ?」
ギュ!
…!!なんで手ェ握られてるんだ?
「ちょ…」
『転移』
「え?」
気付くと先程までと違う所に自分は立っていた。
転移?
でもあれって宮廷魔術師数人で1人を短距離飛ばすだけだったはずだ。
じゃあこの男が使った魔術は一体どういう事だ?
それに今回の遺跡まで数キロはあったはずだ。
明らかに短距離ではない。
私の知っている転移とは規模が違う。
「すいません。イメージがまだ不安定で、手をつなぐ位しないと一緒には転移できないんですよ」
「………」
「では、行きましょう」
「…へ?あ、ああ」
それからは驚きの連続だった。
遺跡、正確にはそれに通じる穴だが、それを完全にわからなくさせるゲンジュツとかいう魔術。
空を飛ぶフユウ魔術。
見たこともない位明るい光を放つショウメイという魔術。
私の知らない物ばかりだ。
そして、全て私の使える魔術以上だった。
私が遊びもせずに毎日毎日腕を磨いてきた魔術。
両親が死んだ時も次の日からは研究に打ち込んだ。
陰謀渦巻く宮廷の中、最年少だから、種族が吸血鬼だからという嫉妬と陰湿ないじめの中頑張ってきた私は、いとも簡単にこいつに負けてしまった。
私の今まではなんだったんだ?
知らず知らずに涙が出てくる。
「ちょ!どうしたの?大丈夫?」
うるさいうるさい!
お前に何が分かる!!
魔術がす凄くて、こんな遺跡まで見つけたお前に何がわかる!!!
………分かっている。
分かってるんだ。
これが逆恨みだと。
でも悔しいんだ。
悔しくて悔しくて…。
フワッ
え?
「な、何があったのかは知らないけど、泣き止んで?ほ、ほら君みたいに可愛い子は笑ってたほうがもっと可愛いよ?」
「か、かわ///」
何を言っているんだこいつは?
か、可愛いなんて言われた事ない。
いっつもみんな私のことを子供子供って馬鹿にして。
っていうかなんでこいつは私な頭を撫でているんだ?
これが優しくされるという事か?
でも気持ちいいかも…わ、私は何をかんがえているんだ?
「ええい、やめないか!なんでもない」
「は、はい」
「さっさと帰るぞ!私にはこの遺跡のことを報告するという仕事があるんだ!お前みたいに暇じゃないんだよ!」
「で、では『転移』!!」
ヘルベチアの外壁のところで彼と別れた。
さて、城に戻るか。
そうだ、彼は考古学者と言っていたな。
私が推薦してキョージュの資格を与えてしまおう。
それだけの力を持っている。
そして、キョージュは発見した遺跡の税免除の代わりに、宮廷魔術師最低一人を弟子に取らなくてはいけない。
つまり、お金の代わりに情報だ。
弟子はそこまで情報漏洩するわけではないが、宮廷魔術師であるため少なからず情報が流れる。
それがお金より価値がある場合がある。
そういう仕組みだ。
フフフ…私を辱めた罰だ。
とことんお前の知識をしぼりとってやる!!
ハハハハハハハハハ…!!
いつも仏頂面をしている彼女がニマニマしているのを見て誰も近づけなかったという。
主人公の化けの皮が…。
基本的には真面目なのですが、天然であり、鈍感であり、そして女性には弱いのです。
いくつフラグを立てる事やら…。
因みに魔術を使う時に書いた文字は他の人には見えません。
手の動きを見て覚える事も出来なくもないが、正確には無理でしょう。
吸血鬼という種族は魔力が人より圧倒的に多い。
それ以外はほとんど人間と同じである。
回復力が少し高かったり、血で栄養補給出来る位です。