白の章
十五夜
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月に向かって手を挙げる。
ーーいつからそこに居たのか?
呟くように影が答える。
ーーあなたのことですか?
黙れ!
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朝がいっせいに歌い出す
次の誕生日を思い出す
なぜ生まれてきてしまったか?
いつまで生きていられるか?
目覚める寸前、頭の中で
あらゆる言葉が響きあう
全ての他人がうるさいまでに
おまえの脳にこだまする
自分の服ももうわからないほど
果たして誰のどの国だったか
時計は動いていないのか
ふと目を覚ました途端に
声など聞こえず覚えていない
時計はうるさく鳴っている
昼寝
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金色の午後の風を紡いで
物語をつくるあなたの横で
身軽な黒猫が駆け出すように
わたしは夢を追いかけている
祭壇
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僕の毎日が
ばりばりと音を立てて喰われる
僕の親指が
ひりひりと君を指して震える
やわらかい星の軌道には
小さな白い蝶々たち
葬られた花の蜜を集めて
夢の亡骸を慈しむ
酔い心地が醒めると共に
次第に蘇る苦痛の感覚
影の半分が既に無い
僕が腹を立てて殴りかかる度に
僕の破片が白い星のように散っていく
色ガラスより脆く輝きながら
卓上噴水
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君の心が白紙のままなら
愛の言葉で埋めつくそう
君が心をひらいたときに
愛が噴き上げてくるように
まぼろし
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僕はさよならをくしゃくしゃと丸めて
いちばん深い海へ投げ捨てたのに
夜毎の波間に白い影が
現れては僕に手招きするのだ
月明かりの下でうっすらと
あの時のように微笑んで




