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お日さまのパンケーキ 〜お空で出会った黄金色の味〜

掲載日:2026/06/17

今日は、雨。

こぶたのとんかつは、小屋の中からポツポツと落ちてくる雨を眺めていました。


ああ、とんかつ、というのはね、こぶたの名前です。

牧場の食いしん坊な山田さんがつけたものです。


とんかつは、以前にお空の雲を食べてからというもの、もう一度、雲を食べたくて、食べたくて、ウズウズしているのです。

あの、フワフワで甘い雲のおいしかったことといったら。

どうにかして、また、お空に行けないかしら。


「ブヒ」


とんかつは、ためいきのように鼻を鳴らしました。

雨は、ポツポツ、ポツと小降りになって、東の方の空が明るくなっています。


「あ、晴れるかも」


そうなんです。

雨雲の切れ間からお日さまが顔を出して、お空にサァっと大きな虹がかかりました。


とんかつは、うれしくてピョンピョン跳ねながら、トコトコと虹のもとへ走って行って、よいしょこらしょブヒブヒと登りはじめました。

これで、またお空へ行けそうです。

雲、雲、おいしい雲。


虹を渡ると、一面に雲が敷き詰められていました。

頭の上には、にっこりお日さまと青い空。


とんかつは、一目散に雲に鼻をつっこんで、かぶりつきました。


ぐしゅ。


とんかつのお口の中に、泥のような味が広がりました。

ちっともおいしくありません。


うへぇ、せっかくお空まで登ってきたのに・・・。


「君、何してるの?」


がっかりしている、とんかつの後ろから声がしました。

とんかつが振り向くと、白い服を着た、小さな男の子が立っていました。


髪が金色に輝いています。

お目々の色は、お空のように青いです。


「雲、食べに来たの」

「ふうん。その辺はまだ雨雲だから、おいしくないよ」

「そうなんだ」


とんかつは、しょんぼりしました。

しょんぼりしたひょうしに、おなかがグゥとなりました。


「おなか、すいてるの?」

「うん」

「ふうん。じゃあ、ついてきて」


とんかつが、男の子の後をトコトコとついていくと、白い雲の上に小さなおうちがありました。


「ここに住んでるの?」

「そうだよ。さぁ、入って」


小さな小さなおうちです。

ベッドがあって、テーブルがあって、部屋の隅にはキッチンがあります。


男の子は、とんかつをテーブルの椅子に座らせて、キッチンで何か始めました。

ボウルに粉と卵を入れて、グルグルとかきまぜ、フライパンの中に流しこみます。

そして、ガスに火をつけるのかな?と思っていたら、窓を開いて、陽だまりの中の台の上にフライパンを置きました。

台の上のフライパンには、お日さまが、さんさんと降り注いでいます。


「うまく、ふくらむかな」


とんかつが、じっと見ていると、フライパンの中の生地にプツプツと穴があいてきました。

なんだか、いいにおいもしてきます。


「よし」


男の子が、クルッと生地をひっくり返しました。

フライパンの中には、こんがり焼けた、まぁるい、おいしそうなもの。


「それ、なぁに?」

「パンケーキだよ」

「どうやって焼いたの?」

「お日さまで焼いたんだよ」


男の子は、焼き上がったパンケーキにたっぷりバターとハチミツをかけて、とんかつの前に置きました。


「さぁ、めしあがれ」


とんかつは、カプッとひとくちかじってみました。

じゅわっとバターがしみこんでいて・・・それに、甘くて、すごくおいしい!

とんかつは、モクリモクリと夢中でパンケーキをほおばりました。

男の子は、次々とパンケーキを焼いて、お皿に乗せてくれました。


「ねぇ、君」

「なぁに?」

「虹を渡って、空に来たの?」

「うん」

「もう、虹を渡っちゃダメだよ」

「なんで?」


男の子は、なぜか寂しそうに目を伏せました。

「君は、まだこぶただからね」


とんかつは、モグモグしながらうなずきました。

「わかった」


とんかつは、最後の一切れをお口の中に入れて、ポンポンになったおなかをさすりました。


「ねぇ、またパンケーキを食べに来てもいい?」

「いいよ。100年後くらいにね」


そう言って、男の子は笑いました。


男の子に送ってもらって、とんかつは牧場に帰りました。

おなかの中が、ポカポカと暖かくて、幸せな気分です。


パンケーキ、とってもおいしかった。

でも、次は100年後かぁ。

100年って、どれぐらいだろう?


とんかつには、よくわかりませんでした。

わかっているのは、もう虹を渡ってはダメ、ということだけです。



こぶたの「とんかつ」が帰ってきました。


ちなみに、「とんかつ」の前のお話は、こちらです。


「お空の綿菓子」

https://ncode.syosetu.com/n8240mc/

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― 新着の感想 ―
ああ、かわいい(こればっかり)。 あいかわらず表現もかわいくて、「よいしょこらしょブヒブヒ」とか「雲、雲、おいしい雲」とか。雨が小降りになってくるのを「ポツポツ、ポツ」で表したりするのも、短いのにわか…
そうですよね。 虹の橋は渡っちゃだめですね。 本当にとんかつになっちゃいますよね。 ……と冗談はさておきw 読み始めて、あ、とんかつくんだとワクワクして読ませていただきました。 食いしん坊のこぶたくん…
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