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人を超えしモノ  作者: ゆる弥


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2.バディとの別れ

 報告書などの仕事を終えると俺達は居酒屋へと向かった。いつもの行きつけの店があるんだが、数ある飲み屋の中で数少ない人が調理してくれて、人が接客してくれる店。


 この時代では多くの場合、ロボットが対応する。味にブレが出ないという理由で料理もロボットの作る物が出てくるようになった。


 だが、俺はどうしてもAIやロボットは信用できない。それは俺の過去が関係している。

 

 店へ入ると相棒と一緒に案内された席へつく。ビールを二つ注文してグラスを合わせる。一気に金色の液体を体へと注入していく。


 この行為が一日の疲れを流していってくれる。もう一杯頼むとつまみを一緒に頼み、来るのを待ちながら話は配属されてくる新人の話になる。

 

「大我さんの次の相棒、新人なんすよね?」

 

「そう聞いてるけど、面倒なことになったもんだ」

 

「相当エリートらしいっすよね? いきなり警部補かららしいっすよ?」

 

「だな。俺達は、巡査、巡査部長、警部補、警部って駆けあがってきたのにな。どんだけひいきしてんだって話だよな」

 

 そう口にしたが、一番悔しいのは相棒だろう。コイツも別のやつと組んで教育係をさせられるらしい。俺も同じような物だろうが。

 

「大我さんが教育係なんて、世も末っすね」

 

「おい。俺だって教育ぐらいできんだよ。なめんな」

 

「いやいや、SV(サブ)使えない人が何言ってんですか」

 

 相棒の言う通り、SV(サブ)──SubjectiveView(主観的な視点) という耳に装着するAI装置を俺は使えないんだ。というか、なるべく使いたくないから使っていないのだ。だが、国民全員にSV(サブ)の装着は義務化されている。


 後からその人のしたことを記録されているデータが動かぬ証拠となるからだ。警察はこれを利用して犯人の検挙率を九十九パーセントまで引き上げた。


 そんな社会にしながらも、ごく一部は逃げ果せているのが現実だ。俺はそれに疑問を持っている。一部の権力、技術を持っている奴らが罰を受けずにのさばっているのでないかと考えていた。

 

「使えないんじゃない。信用してないから使わないんだ」

 

「でも、便利っすよ。この飲み物はアルコール何パーセントだ? 五パーセントだそうです。ちゃんとしたビールですね」

 

「便利なのはわかるけどよぉ。そのせいで、人間は端っこに追いやられてねぇか?」

 

「まぁ、人がやる仕事は減りましたもんね。警察組織、政治団体、行政関係、デザイナー、作家、消防、医療関係は人の手が入りますけど、AIロボットがだいたいのことはやってくれますもんね」

 

 今の世の中、仕事の数が不足していて人口の方が多い現状だ。そのせいで裏の仕事に手を出す人が多くなってきている。


 AIを使用した無許可のロボット製造、武器の製造、サイバー攻撃やハッキング。それを依頼されて仕事にしている奴らもいる。


 これは社会が作り出した闇だと思っている。結局違法な仕事をやっているやつは捕まえなければいけないのだが、数が多すぎて追跡できていない。

 

「そういえば、大我さんのお父さんの事件はどうなりました? 何かわかりましたか?」

 

「いや、進展はないな。もう二十年ほど前の話だ。俺が五歳の時、SV(サブ)を貰える前の出来事だからな。覚えている人ももういねぇのよ」

 

「関係者のSV(サブ)が覚えているんじゃないですか?」

 

「それがな、重要参考人のSV(サブ)はある時を境に新しくされたんだとよ。だから、記録が残ってないらしい」

 

「そんなことあるんですか?」

 

 普通に考えれば、そこまで学習させていたSV(サブ)を新しくするような愚かな行為はしない。だが、重要参考人はあまり何も考えずに新しくなるならその方がいいと装置を渡して新しい物を貰ったんだとか。


 完全に手を回されていると思って間違いない。父が捕まったのは何者かの手が施されている。それを俺は明るみにしたい。

 

「新人が来たら、動きづらくなりますね?」

 

「あぁ。事情を聞いても、お前みたいに協力してくれるとは限らないしな」

 

「新人ってことは十三歳っすよね。子守っすね」

 

「だよなぁ。このご時世、十三歳で社会デビューだからなぁ」

 

 十二歳まではAIの使い方と社会についてを勉強し、十三歳で社会人となる。AIが普及し、何も自分で考える必要が無くなったこの時代、勉強する必要のなくなった弊害がこのような形で現れているのだ。

 

 呼んでもいないのに白髪の彫りの深い爺さんが二人で座っていたテーブルの空いてる椅子へと腰掛ける。

 

「おおう。殺人犯の倅がなぁにくだまいてんだぁ?」

 

 この店の唯一気にくわないことはこのクソジジィが稀に現れることだ。大将にはてっさんと呼ばれているようだが、何者なのかは知らない。


 このジジィに絡まれるのは、俺は慣れている。だが、相棒は違う。真っ赤にした顔を更に赤くしてそのジジィの胸ぐらをつかんだ。

 

「なんだてめぇ? 大我さんに何の恨みがあってそんなこといってんだ! ゴラァ!」

 

理玖(りく)、いいから。やめろ。帰るぞ。大将、ごちそうさん」

 

 そういうと大将が「すまないねぇ」と頭を下げる。こっちも頭を下げ、ジジィは無視してその店を立ち去ることが一番いいんだ。


 この店は気に入っているからまた来たいと思っている。だから、騒ぎは最小限にしたい。こういう輩とのやりとりなら尚更人の耳には残りやすい。ましてや、聞いたことや見たことを今はSV(サブ)が記憶していてくれる。便利のようで、俺には生きづらい世の中だ。

 

 この日を持って解消されてしまったバディを名残惜しく思いながら、新人の着任を迎えることになったのだった。

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