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人を超えしモノ  作者: ゆる弥


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15.アイク

 しばらく律と一緒にキーになるようなものを探す日々が過ぎた。


 すぐにはキーとなるようなものはみつからず、律のお爺さんの過去の経歴、それから色々な功績など調べたが、それのいずれもキーとはならなかった。


 警察のデータベースを片っ端から当たったが、有用な情報は何も掴むことができなかった。


 しかし、実はメデューサに対する情報を手に入れたのだ。定期的に闇サイトにあらわれるようで、闇サイトを律のAIで巡回している時だった。

 

「見つけました!」

 

 メデューサのサイトを見つけたようだ。サイバー対策室へと移動し、律のSVをハイパーコンピューター那由多なゆたへと接続する。


 メデューサのサイトからサーバーと個人を特定するまで追う。集中しているようで、目をつぶって指を動かしている。


「どうだ?」

 

「今話しかけないでください。かなりの数のサーバーを経由しています。追っていることを察知されたら終わりです」


 目を瞑りながら何かを必死に行っている。俺には理解できない部分であるが、この件は律に全てがかかっている。


 最近、自分のSVと対話する機会が増えた為、役に立てるかと問いかけたが答えは『否』だった。


 この時代でホームページを開いている人を特定するということはかなり困難を極めるそうだ。一切使ってこなかった俺のSVでは、闇サイトを運営している人を追うような高度な真似はできないようだ。

 

 スーパーコンピューターが唸りを上げ始めた頃、律の顔も曇り始めた。「くっ」と悔しそうな、苦しそうな声を上げている。


 何かあったのだろうが、俺にはどうすることもできずに見守ることしかできなかった。

 

「東京の二十五区内であることまでは突き止めましたが、察知されたようで閉鎖されてしまいました」

 

 日本の東京であることがわかっただけでもいい情報となっただろう。そうなると怪しいと思われる区がある。


 令和以前の時代にはなかった区。それがAI区、通称アイクと呼ばれる場所は江東区の南側、東京湾の中に作られた島である。


 その場所にはハイパーコンピューターが敷き詰められている建物が無数にあり、今の時代の礎を担っているのだ。


 様々な事をAIでやってのけているのだが、それを実現しているのがこのアイクにある那由多たち。令和の次の時代に生まれたスーパーコンピューターを超える、超ハイスペックコンピューターだ。

 

「律、アイクという線はあると思うか?」

 

「えっ? あそこに人はいないですよ?」

 

 俺は今回の事件が人の仕業だと思っていないのだが、さすがに飛躍した考え方だっただろうか。

 

「AIが犯人だっていいたいんですか?」

 

「可能性があるんじゃねぇかっつう話だ」

 

 少し考え込んでいる様子の律。さすがにAIが犯人だというのは無理があったか。


 俺もよくはわからないが、あれは学習させなければ動けないというからな。ということは、学ばせた奴がいるということか。


 それなら人が犯人だということになる。

 

「たしかに、私の追跡を察知するのが早すぎます。あっちも那由多を使っている可能性は高いです」

 

 那由多を使おうとすると何兆という金が飛んでいく。だから、国の機関にしか使われていないというのが共通の認識なのだ。


 それが、何らかの方法で那由多を使っているとすれば今回の事件はかなりの強敵である可能性が高い。


 犯人を特定するのが極めて難しいと思われた。律が何かを考えている。目を見開くとSVに指示を出し始めた。

 

「もしアイクの那由多をのっとっているのなら、接続した形跡が残っているはずです。あそこの島への接続は国のセキュリティを突破する必要がありますから」

 

 たしかにセキュリティを突破したなら何か形跡があるかもしれないな。だが、形跡を消さずに逃げるだろうか。巧妙な犯人のことだ。


 綺麗に消しているかもしれない。律がどう考えているか、見守るほかない。目を瞑って何かをしている。


 時折、「なるほど」や「それなら」と呟きながら操作しているようだ。何かしら手掛かりがないかを必死に探しているのだろう。


 俺は上司として情けない様な思いにもかられる。部下の手腕に賭けるしかないという状態なのだから。

 

「見つけました。ただ、港区から接続されているということしかわかりませんでした。接続履歴からは綺麗に消されていましたが、基地局の履歴の方はバックアップを常にとっています。そのバックアップに残っていました。そこまでは犯人もわからなかったみたいですね」

 

 ということは、国の那由多の一角が何者かの手に落ちているということか。それは由々しき事態だ。あれは悪用すればかなりの脅威になる。


 だが、反撃してこないところをみると何かしらの制約があるなかで接続しているのかもしれない。完全には掌握しきれていないということか。


 港区だということがわかったとしてあの高層マンションの立ち並ぶ部屋を一室毎に当たるわけにもいかない。


 考えただけでも途方に暮れる。遠くを見つめていた俺を不思議そうに見つめる律。

 

「なに遠い目をしているんですか?」

 

「あのマンション群を一室毎に捜査するなんて何年かかるんだろうかと途方に暮れていたところだ」


 その俺の言葉に、律は深くため息をついた。そして、呆れたように言う。


「なんで、マンション一室毎を足で捜査しようとしてるんですか……全く……」


 どうやら、なにかの策があるようだ。

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