14.やはり父は冤罪?
今の人達は、無機質に生きようとしている所があると俺は思っている。感情を露にしないように。監視されている為、すぐに警察が来るからだ。
別に無理に無機質に生きていることもないと思う。この世の中は人間とのかかわりが薄い世の中だ。皆がAIを持ち、話し相手はAIだけという人もいるだろう。
相手と合うかどうかを選択するのにもAIを活用している人がいるんだ。相性診断なんて昔から腐るほどある。
それが今や、お互いの情報を渡すだけで相性のパーセンテージを出してくれるのだ。
これはAIが診断するのだが、これを活用して結婚している人がほとんどではないだろうか。それが離婚率の減少へと繋がっていることが有用性を証明している。
数年前に研究結果としてそう出てきた。だからといって、出生率が上がっているわけではないところが難しいところである。
「オマタセシマシタ。ミートソースパスタ、ニナリマス」
丁度沈黙していたところにロボットがパスタを持ってきてくれた。
二人の目の前にはゴロゴロのひき肉の乗ったパスタが良い香りをさせて俺のお腹の虫を刺激したようだ。獣の様な音が響き渡り、律が仄かに顔を赤くする。
「そんなにお腹空いてたんですか? 恥ずかしいんですけど」
「あぁ。すまん。律も恥ずかしいとかあるんだな?」
その言葉を出したところ、たちまち不機嫌になってしまった。「私だって女です」ボソッとそれだけ話すとパスタを食べ始めた。
それにならって俺もパスタをフォークへ巻いていく。女にもパスタの食べ方は綺麗と褒められたことがあるんだ。
だから、得意げになってパスタを食べているとあっという間になくなってしまった。
紙ナプキンで口を拭き水を飲み干す。これが女にいつも怒られるところ。
待たせてしまっていると思わせないようにゆっくり食べるとか、少し残して話しながら食べるとか。
そういう気遣いができないのかと言われたことがあるが、考えるのが面倒なのだ。目の前に来たから食う。それだけの話だ。
「すまん。早く食っちまったけど、気にせずゆっくり食ってくれ」
気を使ったつもりだったが、頬を膨らませ「別に須藤さんのことなんて気にしてません」というと黙々と食べ始めた。
食べている間が暇なので、何か話題がないかと思慮を巡らせる。
「俺のこと、どこまで知ってる?」
あまり気にせず聞いたつもりだったが、かなり機嫌を損ねたようだ。目を吊り上げてこちらを睨んで言い放った。
「殺人罪の罪で服役した人の息子ですよね。逆に私のことを知っているんですか?」
俺のことをそこまで認識していたのに普通に接していたのか。それに有難い気持ちを抱きながらも、律のことは何も知らないことに気付かされた。
「律のことはほとんどしらん」
そう話すと、下を向いてため息をついた。自分でも何か話しづらいことでもあるのだろうか。
「私の父は、現在の警視総監です。祖父もでした」
俺の中で何かが弾けた。それまで可愛い後輩だと思って見ていた律が親の仇かのように憎く思えて、気が付くと手に力が入りすぎて爪が掌に刺さっていた。
血の出た手を見つめて冷静になる。
「ごめんなさい」
何故か謝る律。その態度が不思議で俺は問うた。
「なぜ謝る?」
すると、律は歯を噛みしめながら衝撃の一言を放った。
「須藤さんのお父さん、無実かもしれません。ずっと言えませんでした。すみません」
頭の熱が冷めていくのを感じた。冷静になっていく。別に俺は律をいじめたくてこの話をしたわけではない。
俺のことを殺人犯の息子だと知っていて、それで気を使っているというのなら、気遣いは無用だと言いたかったからだ。
だから、謝らせたいわけではない。だが、何かを知っているということかという疑問が湧き上がる。
「実は、須藤さんのお父さんの事件、お爺様のAIに詳細はあるんです。でも、なんだかプロテクトがかかっているみたいでそこの情報を見ようとすると弾かれるんです」
「ふーん。そんなことがあるのか? 律のAIでも突破できない何かがあるってことだよな?」
「そうです。かなり厳重にガードがかかっています。おそらく、私がAIを受け継いだとしても触れられないようにと、細工されたのでしょう」
ということは、孫に見せたくない何かがあるということか。そんな情報が律のAIに眠っていると知れただけでも嬉しい情報だったかもしれない。
もしかしたら、あの日の本当の真実が明らかになる日が来るかもしれないんだ。そう思うと胸が高鳴った。
これは願ってもない展開になったかもしれない。嬉しいという気持ちが一番だ。
こんなところに手掛かりがあるとは。「嬉しそうですね」というので、素直に言ってやった。
「俺は、父が無実だと証明したくていまだに事件を調べているんだ」
その言葉を聞くと、今度は律が目を見開いて驚く番だったようだ。
「まだ調べているんですか? 諦めが悪いですね」
と言われたが、俺は気にしない。俺が納得する証拠を見つけるまではあの事件は終わらない。
その為に、警察官になったと言っても過言ではないからだ。
「私も気になります。だから、協力しますよ」
「はっ?」
「だから、協力するって言ったんですよ。お爺様のAIを突破するには何かキーが必要みたいなんです」
「なるほどな。そのキーとやらを一緒に探すか」
この日から俺と律の共同戦線はひかれた。これをきっかけに俺達の中は深まっていくことになる。
それと共に、渦中の事件も、過去の事件も進展していくのだ。




