18
いつもよりはすこし大きな夜会。
今日はリディアも、侍女としてではなく、令嬢として、夜会に参加する。
楽しみだな。
パーティー会場に行き、いろいろと挨拶を交わしながらリディアを探すも、彼女の姿は見つけられない。
来ていないわけがない、この会場にはいるはずだ。
ふと、会場の隅でイザベラを見つけたが、私の顔を見ると、ひどくおびえたように体をびくつかせていた。
なんだ?
何をしたわけでもない。
最近はイザベラの性格が変わって、親しみやすいと思うようになったところだ。
「アルフレッド殿下」
後ろから静かに声をかけられた人は見なくてもわかる。
「なんだ?ギルベルト。」
「殿下、そろそろ夜会が終わりを迎えますので、もう少ししたら、挨拶のためにお戻りください。」
「あぁ、そうだな。もう少ししたらな」
まだリディアに会っていない。
後はテラスか。
テラスに出ると、
リディアがいた。
他に誰もいないテラスから暗闇で見えもしない庭園を見ている。
その表情はとても穏やかだった。
なにかいいことがあったのだろうか?
「やぁ」
リディアに話しかけるといつものようににこりと笑った。
「ごきげんよう、アルフレッド殿下。」
「何かいいことでもあったのかい?いつもより楽しそうだ。」
リディアに並ぶように隣に立ち、柵に肘を置く。
「えぇ、やっとやっと、うまくいったんです。」
リディアはいつもあまり話さないから、ここで何が?と聞くのは、また品がない。
リディアが何をしようとしていても、それは私が解き明かすのが面白いだけで、今答えを聞くのは面白くない。
それに、
今日のリディアは、いつものように壁を感じない、優しい笑顔。
穏やかな少女のような声。
よっぽどのストレスから解放されたのだろう。
もう、解き明かすとかでもないかもしれない。ただ、リディアが笑顔なら。
「そうかい。それはよかったね。」
「あら、何がとは聞かないのですね?」
リディアが幸せを掴めたのなら、それでいい。
「君の幸せを願うからね。」
その一言が彼女の耳に届いた瞬間、強い風がテラスに吹いた。
リディアは、私の目をまっすぐ見つめ、顔もゆがめず、静かに涙を流した。
突然のことで、私は固まってしまった。
傷つけたかったわけがない。
ただ、
「すいません、目にゴミが…失礼します。」
「そうか、」
私は、真っ暗で何も見えない中庭を見つめることしかできなかった。
また失敗した。
もう何度目か分からない。
涙が止まらない。
急いで、人のいないところに逃げ込み、しゃがみ込む。
何がダメだった?
イザベラ様が破滅しなければループは終わるんじゃないの?
こんなに、今回も頑張ったのに。
イザベラ様は破滅していないじゃない!
誰の好感度上げてないじゃない!
なのに、なんで、また、はじめから?
もう嫌だ。もう何度、私のせいでイザベラ様は破滅し、破滅するたび、またはじめから。
何度同じ場面を見て、何度同じセリフを聞いたか。
今回こそ、うまくいったと思ったのに。
でも、そうか、うまくいくと思った時も、またリセットの合図
「僕は君の幸せを願うよ。」
私の中では、ゼロに戻される悪魔のセリフ。
この言葉を聞くたびにまた絶望する。
また朝を迎えれば、季節は戻り、またはじまる。
少し気持ちが落ち着いた頃、
暗闇の中の庭園に向かう。
肉眼でギリギリ見える程度の暗い中、花壇を見つめる。
花壇を見ているとまた涙がこみあげてくる。
もうすぐ咲きそうなのに。
あぁ、私はまた、この花の色を知ることはできないのね。
何度目の、この諦めだろうか。
次こそは抜けだせるかな。
彼女のために、私のために、また頑張らないと。
泣いている暇なんてない。




