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「今日はサロンに寄ろうか」
夕方ごろ、仕事終わりにアルフレッド殿下に誘われた。
最近はよく一人で行っていたのに、今日は一緒に仕事を終えたからか、サロンに一緒に行くことになった。
サロンに行くとほかに人はいなく、彼女は一人で花瓶に生ける花を抱えていた。
「ごきげんよう、アルフレッド殿下、ギルベルト様。」
花束を持ちゆっくりお辞儀する様は彼女らしく完璧だった。
「珍しいね。今日はほかに人がいないんだね。」
「そうですね。ゆっくりなさってください。どうぞこちらへ」
席に案内され、紅茶を待つ間、アルフレッド殿下は体ごと彼女の方を向く。
部屋の隅で紅茶を淹れる彼女を誰が見ても好意的に見つめている。
「リディアは完璧な女性だ。でも、私には興味がないらしい。リディアは霧のようにするっと逃げてしまう。でも、つかめないものはつかんでみたい。」
目線を彼女から離さず彼女には聞こえない声の大きさで、そういうアルフレッド殿下は今までに見たことがないくらい楽しそうだった。
このままだと彼女は無理に殿下の手の中に押し込められてしまうのではないかなんて、ふと思う。
「殿下、彼女は…」
「分かっている。身分が違うと言うのだろう?」
身分なんて、殿下にかかればどうにでもなる。
そんなことじゃない。
アルフレッド殿下の幸せを願いたい。でも、彼女が言わないなら、隠したいのならそのままで。無理に彼女の守る何かを崩そうとしないでほしい。
彼女ごと崩れてしまわないように




