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リディアさんとお話がしたいな。と思い、サロンに向かうと、珍しく満席で、どこも空いていなさそうだった。
入り口付近で、どうしようかとキョロキョロしていると、リディアさんが声をかけてくれた。
「イザベラ様、お席が用意できず、申し訳ございません。よろしければちょうど庭園の花が見頃ですし、東屋でご一緒いたしませんか?」
「えぇ、もちろんよ。そうしましょう。」
リディアさんがティーセットの乗ったワゴンを押しながら一緒に庭園に向かう。
東屋に着くと先客がいた。
「アベル殿下。」
乙女ゲームでもいつもそう。アベル殿下のイベントは東屋で起きることが多い。
「あら、アベル殿下。よろしければ、ご一緒しませんか?」
「なんで。」
「まぁ、いいではないですか。」
仲良さそうに話す二人を見て口角が上がる。
やっぱりこの二人、両想いだわ。
ティーセットをそろえ、三人でお茶を楽しむ。
こんな時間、サロンでもありえない。
そして乙女ゲームでもありえない。
私はリディアさんをいじめ、リディアさんは私なんかより攻略対象と会うことを選ぶ。
私なんて、ところどころに出てくる恋の障害でしかなく、最後に悪者はいなくなってめでたしめでたし。そんなストーリー。
今は、私はリディアさんをいじめていないし、
リディアさんは私を笑顔で迎えてくれる。
でも、乙女ゲーム通り、アベル殿下ルートをたどるリディアさん。
二人を邪魔するつもりなんてもちろんないけど、私の破滅は、たとえ私が行動を変えたとしても、世界によって強制されるのではないか、と考えると、全身が冷えるのを感じた。
突然始まったお茶会は不安になっている私とどうしたらいいかわからないアベル殿下とだから会話が弾まないことを心配してか、普段あまり口数の多くないリディアさんが私たち二人に話題を振ったり、庭園の花や、お茶菓子について話す。
そんなリディアさんをまっすぐに見つめるアベル殿下。
「そういえば、お前はそこの花壇を気にしていたな。」
アベル殿下がそういうと、リディアさんの動きが止まった。
アベル殿下の指さす方向にはまだ花や蕾などない、青々とした茎だけがある花壇だった。
「そこの花壇が楽しみなの?」
私が素朴に疑問を投げかけると、
「そうなんです」
そう答えたリディアさんの表情はいつもの笑顔なのに少し暗い感じだった。
これは聞いてはいけない話題だったのかも。




