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Chapter9 「虎ノ門要人警護戦 1/2」

Chapter9 「虎ノ門要人警護戦 1/2」


 米子は笹塚の自宅で掃除をしている時に神崎からのLINEメッセージを受け取り、依頼を受けるかどうか逡巡していた。阿南の野望とレッドフォックスの関係を知った今、阿南に対する警戒心は強かった。個人で戦うには強すぎる相手だった。しかし阿南が懸賞金を掛けて裏社会に自分の暗殺をさせようと企てている事に怒りを感じ、逆襲したいと考えていた。神崎が言うように、阿南を倒せば自分に掛けられている懸賞金が取り消しになる可能性が高いと考えた。


 米子は神崎の依頼を受ける事にした。相手は最低でも12人。それも元SAT隊員やSP。米子はミントに電話で相談をする事にした。仲間を巻き込みたくないと思ったが、先日、仲間で戦うことをミントに約束したばかりだった。

『ミントちゃん、相談したい事があるんだけどいい?』

『どうしたの? 遠慮しないで言ってよ』

米子は神崎からのLINEメッサージの内容をミントに話した。

『へー、そのお爺さんを守れば阿南とレッドフォックスにダメージを与えられるんだね。でもそのお爺さん98歳だよね。護衛もいるって事はきっと偉い人なんだろうね』

『よく分からないけど、フィクサーっていう所の人らしいよ』

『フィクサー? 大きな会社かな? そんな名前の製薬会社があった気がするよ』

ミントが言った。

『そうなんだ。とにかく私はそのお爺さんを守るよ』

『敵は12人か・・・・・・私もやるよ。都合がいい事に木崎さんが明後日から2週間近くアメリカに出張なんだよ。当日は16時に現地に行くよ。くれぐれも米子1人で戦おうなんて思わないでね』

『ミントちゃん、ありがとう。私も16時前に虎ノ門総合病院の地下駐車場に行くよ。ヤバいと思ったらすぐに撤収してね。私もそのつもりだから』


 米子は大場の店『戦士の寝床』の地下室でキーボードケースから銀色に輝くレミントンM870マリーンマグナムを取り出した。笹塚の地下道で倒した刺客から奪ったショットガンだ。シルバーの本体と黒いピストルグリップが特徴的だった。

「ほう、マリーンマグナムか。ストック無しのピストルグリップとは珍しいのを持ってきたな。アメリカでは沿岸警備隊や海兵隊が使ってる。日本では海上保安庁が使ってるな」

「この銃のバレルを短くして欲しいんです。弾も売ってください」

米子が言った。

「勿体ないなあ。短くしたら散弾の拡散パターン広がって射程距離は短くなるぞ」

「かまいません。地下の狭い場所で近距離戦に使います。広い拡散パターンにしたいんです。携帯性もよくなりますし」

「いいだろう。携帯性を良くしたいのならピストルグリップをもっと小さいのにしてあげよう。保持性は少し悪くなるが、競技で使うのでなければ問題無いだろう」

「お願いします」

「弾はどうする。12ゲージだよな?」

「はい、12ゲージです。スラッグ弾20発とバックショット弾20発でお願いします」

「いいだろう。銃の加工費と弾で3万円でいいよ」

「安いですね」

「散弾は日本でも合法だから安いんだ。散弾は種類にもよるが1発50円から150円くらいだな。スラッグ弾は500円くらいだ。卸値はもっと安い。ウチは弾で儲けようとは思ってない。バックショットは9粒入りと15粒入りがあるけどどうする?」

「9粒でお願いします。中の粒は大きい方が威力がありますよね?」

「威力重視なら9粒だな。今から加工するから1時間くらい掛かるぞ」

「作業を見ててもいいですか?」

「構わないよ。面白いもんじゃないけどな」

「あと、P365に装着できるサイレンサーは無いですか?」

米子が訊いた。

「いいのがあるよ。小型のサプレッサーが手に入ったんだ。ネジの規格は『M13.5×1LH左ネジ』のヨーロッパ規格だからSIGに使える。でもネジ切りしたロングバレルに交換する必要があるぞ」

「ロングバレルを買います。バレルの交換なら自分でできます。P229は自分でやってますから」

「残念だが今はP365のロングバレルは置いて無い。取り寄せてネジ切りをしてあげよう。3日掛かるけど大丈夫か?」

「大丈夫です。幾らですか?」

「サプレッサーは7万円、バレルが10万円だ。ネジ切りはサービスするよ。ショットガンの弾と加工費を合わせると全部で20万だ。そうだ、手製のリロード弾だけど米子ちゃんのために弾頭に硬芯を入れた357SIG弾の徹甲弾を20発作ったんだ。何発か試射したけどかなりの貫通力だ。よかったら使ってくれ、代金はいらないよ」

「ありがとうございます」

米子は封筒から20万円を取り出すと大場に渡した。


 米子は大場がダイヤモンドカッターで銃身を切断するのと切り口をサンドベルトで磨くのを見ていた。地下室にはニッケル仕上げの硬質ステレスの銃身を切断する『ギュイーン』という大きな音が響いた。大場は時々霧吹きで切断箇所に水を吹きかけている。銃身を切断すると先端にリング式の照星を取り付けた。ドライバーを使って黒いピストルグリップを外すとオレンジ色の小さなピストルグリップに付け替えた。

「よし、できたぞ」

大場が言いながら米子に銃を渡した。

「グリップの色が変わってますね?」

米子が訊いた。

「視認性がいいから暗い所で掴みやすくなるぞ」

「いいかもしれません、ありがとうございます」

米子は礼を言うとM870を受け取って構えてみた。

「おおー、制服姿の美人女子高生が持つと絵になるな。アニメみたいだ」

大場が感心するように言った。


 榊良介、98歳。榊は祖父を侯爵に持つ華族の家系に生まれ、幼少期は東京青山の邸宅で女中達に囲まれて御曹司となるべく手厚い教育を受けた。16歳の時に高級将校になるべく当時のエリートコースであった市ヶ谷の陸軍士官学校に入校した。しかし卒業する事なく17歳の時に終戦を迎えることになった。国に殉ずる覚悟でいた榊は敗戦という大きな挫折を味わった。その後GHQの政策による華族制度廃止により榊家は一気に没落した。時代が大きく転換し、戦前の価値観は否定され、アメリカから来た新しい価値観に強制的に上書きされた。天皇制は国民主権の民主主義に代わり、国家への忠誠を誓った精神は個人の自由を謳歌する精神へと変化した。榊はこの時、何かを信じる事をやめた。信じられるのは自分だけ、頼りになるものは力だけいう信念を持つようになった。


 榊は陸軍士官学校時代の仲間や教官達と連携して旧日本軍の秘匿物資やアメリカ軍の横流し物資を取り扱い、闇市に卸す事で生計を立てた。物が無い時代だったので売れば何でも売れた。並べる傍から売れていった。榊は闇市に物資を卸す傍ら、アメリカ軍から安く譲り受けた中古の軍用トラック数台で物資の運送業も始めた。戦後の復興で日本経済が発展する中、運送は大いに儲かった。榊は運送業の規模を拡大し、次第にまだ未発達な運輸・物流業界を牛耳っていった。また榊は右翼活動も積極的に展開し、『大日本優国同盟』を設立した。時には新興暴力団と組み、時には役人や政治家を金で買収したり脅す事で利権を欲しいままにしていった。また、通信業にも参入し、ラジオやテレビなどの放送業界にも食い込んでいった。


 榊は昭和40年代後半からは運輸・物流業界の業界団体『日本運輸振興会』を立ち上げ、日本経済会に強い影響力を持つようになった。また、政界においても政治献金を始め、与党の有力政治家への金銭的援助を積極的に行い、影響力を高めていった。昭和50年代後半からは運輸・物流業界と放送業界に君臨しながら政界とのパイプをさらに太くし、いつしか裏の総理と言われるようになっていた。キングメーカーと呼ばれる総理大臣を生み出す大物政治家でさえも榊には逆らえなくなっていった。その強大な資金力と情報網を背景にした権力から『キングメーカーメーカー』と呼ばれるほどの影響力を日本の政財界に持つに至った。近年は東京から小田原の大邸宅に移り住み、そこから日本の政治と経済に睨みを効かせている。榊が東京に行くことがあれば国家にとって重要な何かが決まる時である。


 榊は虎ノ門総合病院の特別個室を秘書の九鬼輝樹と一緒に出るとVIP専用エレベーターに乗った。榊は茶色いスーツに白いYシャツにループタイ、九鬼は光沢のあるシルバーのスーツを着ていた。榊は98歳にしては背筋が伸び血色がよかった。158cmの身長に対して体重は46キロと痩せ気味であったが、杖を突けば自力歩行も可能であった。虎ノ門総合病院は最新設備を備え、優秀な医師による最先端の医療を受けられる病院で、政治家、実業家、芸能人などのセレブな利用者が多い病院だった。榊は健康診断だけではなく、血液の入れ替えを行っていた。『10代の健康な若い人間の血液』と採取した血漿を自らの血液と入れかえるのだ。この療法はアメリカで研究されている実験的な療法で日本国内では医療行為として認められていないが、榊は10年前から老化防止のために実施している。そのために半年に1度、虎ノ門総合病院を訪れるのだ。


 秘書兼ボディガードの九鬼輝樹は42歳。頭脳明晰にして柔道2段、剣道3段と文武両道だった。身長は180cmで引き締まった体をしていた。『骨法』と『神道無念流剣術』の達人でもあった。22歳の頃より父の九鬼輝朋より引継ぎを受けながら秘書として榊に仕えている。九鬼家は幕末に長州藩の闇組織として諜報や暗殺に暗躍した。明治時代以降は新政府の大物政治家達の護衛や執事として仕える事で生き延びてきたのだ。戦後は祖父の九鬼輝将が当時の官房長官の勧めで榊に仕えるようになった。以降九鬼一族は3代に渡って榊に仕えてきた。


「榊先生、地下に車を待たせてあります。このまま小田原まで真っ直ぐ帰りますがよろしいでしょうか?」

九鬼が訊いた。

「ん」

榊が了承の返事をした。

エレベーターは地下の駐車場までノンストップで下った。地下駐車場には榊の乗る防弾仕様の『ベントレー ・ミュルザンヌ』と護衛チーム4人が乗ったジープ・ラングラーがエレベーターから30m離れた駐車スペースに待機していた。エレベーターは地下駐車場の一番奥の右の角に設置されている。この日の地下駐車場は空いていた。警護をしやすいよいに外来は臨時の休診日となっていた。厚生労働省から外来患者に対して休診にするよう病院に圧力が掛かっていたのだ。内閣の意向である。


 米子は制服姿に花束を持って見舞客を装い、1階ロビーの奥の非常階段を使って地下駐車場に降りた。今日の制服は紺色のブレザーに薄いブルーのシャツにワインレッドのスカーフにグレーのチェックのスカートに濃紺のソックスだった。靴は爪先に鉄板の入った安全靴仕様の黒いローファーだった。非常階段はエレベーター乗り場の横に通じていた。


 米子は非常階段の入り口から顔を出して広い駐車場を見回した。駐車場には太い柱が幾つもあった。停まっている車は黒いベントレーのセダン、紺色のジープ、シルバーのベンツ、白いレクサス、白いクラウン、ボディーに医療機器メーカーの名前が書かれたバンとクリーニング業者の名前が書かれたバン、入り口の近くに軽ワゴン車が止まっている事を確認した。70mほど先の駐車場の入り口に大型のバンが横向きになって塞ぐようにゆっくりと停まるのが見えた。米子の視は2.5である。米子はショルダーバックの外側のポケットに入ったショットシェルを5発ブレザーのポケットに移し替えた。


 ジープ・ラングラーのドアが開き、黒い戦闘服姿の男4人が車を降りるとエレベーターに向かって歩き出した。男達は4人とも腰にホルスターを着けて黒い盾を持っている。榊の親衛隊だ。エレベーターから2人の男が歩み出た。杖を突いていた老人と体格のいい男だった。4人の親衛隊は左手で盾を構えると老人を囲むようにガードした。ガードされた老人が歩き出す。

『パン』 『パン』 『パン』 『パン』

駐車場に銃声が響いた。親衛隊の男達が榊を守るように盾の間隔を狭めた。九鬼がしゃがんだ榊に被さって庇うようにしている。

『カーン』 『カーン』

盾に銃弾が当たる音が響く。

「襲撃だ、応戦しろ!」

九鬼が叫んだ。

『パン』 『パン』 『パン』

『パン』 『パン』 『パン』 『パン』 『パン』

親衛隊の男達が一斉に右腰のホルスターから拳銃を抜くとスライドを引いて前方に発砲した。親衛隊の男達の銃は近未来的なシルエットが特徴のベレッタPX4だった。

「敵の正確な位置がわかりません!」

親衛隊の1人が言った。非常階段の入り口にいた米子が大きなショルダーバックからVZ85スコーピオンを取り出してスリングを首に掛けた。続けてM870マリーンマグナムを取り出してグリップを右手で握ると銃身の下のフォアエンドを左手で握って勢いよく後ろにスライドさせて戻した。『ジャッキ』と音がしてチェンバーにショットシェルが送弾された。M870マリーンマグナムのチューブマガジンにはバックショット弾とスラッグ弾が交互に装填されていた。

「このまま車まで移動する、敵が見えたら撃て!」

九鬼が指示を出した。

『ババババババババババ』

『キーン』 『カキーン』 『キーン』 『キーン』 『キーン』

連射音と盾が被弾する音が響いた。

「マシンガンです!」

親衛隊の1人が叫んだ。米子が非常階段の入り口から駆け出して並んだ盾の右横に立った。

『ズドン! ガシャ』 『ズドン!』

米子がフォアエンドをスライドさせながら2発発砲する。1発目の9粒のバックショット弾がクリーニング業者のバンの開いたスライドドアの中に飛び込んだ。MP5を撃っていた黒いスーツ姿の男が吹き飛んだ。2発目のスラッグ弾はバンの陰でグロック17を構えていた男の頭を吹き飛ばした。九鬼と親衛隊の男達が米子を見た。

「私は内閣情報統括室の沢村といいます! 榊さんを援護します! 早く車に!」

米子が大きな声で言った。

「よし、車に移動するぞ。高杉~! 後ろのドアを開けろ!」

九鬼が叫んだ。ベントレーの運転席のドアから運転手の高杉が飛び出して車の前を回って反対側の後部座席のドアを開けた。

「開けました、来てください!」

高杉が叫ぶ。九鬼が榊の脇の下に両腕を入れて榊を立ち上がらせた。

『パン』 『パン』 『パン』 『パン』 『パン』 『パン』 

回り込んだ敵2人が左から撃ってきた。左側にいた親衛隊の男2人が崩れ落ちた。九鬼が慌てて榊をしゃがませた。いつの間にか敵が左側に展開していたのだ。

『ズドン! ガシャ』 『ズドン! ガシャ』 『ズドン! ガシャ』

米子のM870マリーンマグナムが火を噴く。闇桜の2人が後ろに吹き飛ぶ。米子がブレザーのポケットからショットシェルを取り出すとM870マリーンマガジンのローディーンポートからチューブマガジンに素早く5発続けて装填した。

「パン」 「パン」 「パン」 「バババババババババ」

正面からも敵が撃ってきた。米子は床に伏せて正面に銃身を向けるが敵の位置が分からない。米子は敵の闇桜が戦闘慣れしていると感じた。元SAT隊員とSPで構成されているという神崎の情報は正しいようだ。闇桜は実戦的なフォーメーションを使っている。厳しい戦いになると思った。


『グオーーーーーーーーーーーーーーーン!』 

『ピーーーーーーーー!  ピッ ピッ ピーーーーーーーーーー!』

ヘッドライトをハイビームにした軽ワゴン車がクラクションを鳴らしながら猛スピード突っ込んで来る。軽自動車にしてはエンジンの音が大きい。入り口付近で停まっていた軽ワゴン車だった。米子はM870マリーンマグナムの銃口を軽ワゴン車に向けて狙いを付けた。

 『キキーーーーーーイ! キリリッーー』

軽ワゴン車はスピンするように左に曲がって右側面を見せて米子達の前で停まった。後部スライドドアが開いていた。

「米子、この車を盾にして! 防弾仕様だから大丈夫だよ! 後ろの席にアーマーとヘルメットがあるよ!」

ミントが運転席の窓から顔出して大きな声で叫んだ。ミントは約束通りに来てくれた。米子は嬉しかった。頼りになる仲間だと思った。

『バババババババババ』 『バババババババババ』

ミントは助手席に移動すると窓からFN-P90をフルオートで撃った。

「こっちは任せて!」

ミントが叫んだ。

『バシッ』 『ガッ』 『バシッ』 『バシッ』 『ガン』 

闇桜の撃つ銃弾が軽自動車の左側面に集中する。米子は軽自動車の後部座席から素早くボディーアーマーとインカム内臓のヘルメットを取ると身に着けた。

《ビーナスよりマーズ、2時方向のベンツの陰に3人、正面のバンの陰に3人、10時方向の柱の影に2人だよ。あとはわからない!》

インカムからミントの声が響いた。

《マーズ了解、これより護衛対象を車に運ぶ、援護射撃よろしく》

米子はしゃがんでいる榊に近づくとM870マリーンマグナムを床においた。大場の言うようにオレンジ色のグリップが薄暗い中で目立っていた。榊を抱き起こすように立たせて強引に背中におんぶした。

「これから車まで走ります、しっかり掴まってて下さい!」

米子が大きな声で言った。

「ん」

榊が応えた。米子は榊を背負って走った。九鬼も走って米子を追い抜いた。

『バババババババババ』 『パン』 『パン』 『パン』 『パン』 『バババババババババ』

闇桜の男達が走る米子に激しく発砲する。9mm弾が『シュッ』『シュッ』と嫌な音をさせて米子のすぐ近くを掠める。頬に微かな衝撃波を感じた。ベントレーの後部ドアの横に九鬼が先回りして立っている。

「早く! 後ろに乗って下さい!」

九鬼が叫ぶ。

『キン』 『パシーン』 『カーン』 『カキーン』 『ガツッ』

闇桜の男達の撃った9mm弾がベントレーのボディーに当たって跳ね返る。

『ガッ‼』

「グッ!」

米子のヘルメットに左横に9mm弾が命中して棍棒で叩かれたような強い衝撃が頭に伝わった。頭の中がジンジンと痺れるように痛い。弾はヘルメットの中で止まったようだ。米子はベントレーの後部座席に頭から飛び込むように乗った。後部座席のシートに俯せの状態になったが榊はしっかりと背中に乗っていた。九鬼が後部座席のドアを勢いよく閉めると助手席に乗り込んだ。運転席には高杉が座っていた。

「すみません、降りてもらえますか?」

米子が榊に言いながら体を捻った。

「ん」

榊が返事をしてシートの奥へ這うように移動した。

「高杉、出せ!」

九鬼が運転手に命令した。

「駐車場の出口は車で塞がれてます。この車、防弾車ですよね?」

米子が訊いた。

「そうですが、あなたは一体?」

九鬼が言った。

「敵は追い払いますから車を右に移動させて待機しててください!」

米子が言いながら後部座席のドアを開けて転がり出すようにして外に出た。ミントが軽ワゴン車の窓からFN-P90を射撃している。

《マーズよりビーナス、護衛対象は退避完了。状況は?》

《こちらビーナス、1人殺ったけどあと7人いるよ。しぶとい奴らだよ! 位置を変えながら撃ってくるよ! 訓練されてるよ!》

米子は敵を側面から攻撃するために右方向に走った。右手はスコーピオンのグリップを握っていた。前方の白いクラウンの陰にマズルフラッシュが2つ見えた。米子はさらに右に回り込んだ。


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