Chapter40 「サキモリの苦戦 丹沢山系」
Chapter40 「サキモリの苦戦 丹沢山系」
《サンダーバードリーダーよりフェニックス、屋外で激しい爆発。衝撃波は強烈なるも室内に被害無し・・・・・・いや、ゲホッ、ゲホッ、 ウクッ、息が・・・・・・おっ、おかしい ウッ・・・・・・》
サンダーバードの交信が切れた。
《フェニックスよりサンダーバードリーダーへ、詳細を報告せよ》
サンダーバードリーダーの応答が無かった。
《フェニックスよりブルーバードへ、そちらで爆発があったようだが状況を報告せよ》
《ピッ カチャ》 《ピッ カチャ》
2班のブルーバードからの返信はトークスイッチを押す音だけだった。
「おかしい。1班と2班の応答が無い。さっきの爆発のせいか?」
大門が言った。
「爆発というよりは燃焼でした。燃料気化爆弾かもしれません」
固定カメラの映像をモニターで見ていた木崎が言った。
「何? 燃料気化爆弾?」
大門が驚いた顔をして言った。
「激しい燃焼爆発でした。もし燃焼気化爆弾ならあの辺りの酸素は無いかもしれません」
木崎が言った。
《フェニックスよりよりブラックバード! 無事か!?》
大門が慌ててマイクに向かって叫ぶように言った。
『こちらブラックバードリーダー。建物より400m西にいます。凄い爆発でした。偵察に出ていた2名に衝撃波と火傷による被害が出ています』
3班ブラックバード班長の池谷が報告した。
《フェニックスよりブラックバードリーダー、管理棟に接近して様子を探れ》
《ブラックバードリーダー了解》
米子達は無線を聞いていた。
「第2即応隊の1班と2班はどうしたんすかね? 返事が無いみたいです」
瑠美緯が言った。
「さっきの爆発が建物の近くなら酸欠で全滅したかもしれないよ」
米子が言った。
「酸欠?」
ミントが不思議そうに言った。
「燃料気化爆弾は1次爆発で加圧沸騰させた酸化エチレンを超高速で拡散させて、それに着火して2次爆発させるんだよ。一瞬にして周りの酸素を燃焼させるから、威力によっては半径数百メートルの酸素が無くなるの。今回は爆発による衝撃波よりも酸素を無くす事に特化した仕様かもしれないよ」
米子が言った。
「そんな物使うってことはこっちの攻撃がバレてるって事?」
ミントが言った。
「その可能性は高いね。この前の南大塚のクレイモアの件もそうだけど、こっちの情報が漏れているなら陸上戦闘による正攻法は危険だよ」
米子が言った。
「1班と2班がやられたという事か?」
笹井が言った。
「現在確認中です。3班の『ブッラクバード』を管理棟に向かわせています」
大門が言った。
「敵情が不明なので第3即応隊の第1小隊を訓練場に偵察に出します」
第3即応隊司令の加賀美が言った。
「そうしてくれると助かります。我々は横須賀に待機中の第2小隊に出動要請をします」
笹井が言った。
米子達より200m前方で第3即応隊第1小隊『フクロウ』の隊員が2人1組に分かれて訓練場を偵察していた。訓練場にはゴルフ場のフェアーウェイのアップダウンがそのまま残っていた。
「11時方向200mと12時30分方向180mに『フクロウ』が活動中」
樹里亜が暗視スコープを覗きながら言った。
「1班と2班の情報がないね。本当に全滅したのかな? だとしたら敵はどこに行ったの?」
ミントが言った。
「どっかに潜んでるはずだよ。燃料気化爆弾を使ったのならかなりの装備持ってるはずだよ。さっきのヘリコプターも怪しい」
米子が言った。
第3即応隊第1小隊フクロウの隊員2人が5mの間隔を空けてゆっくりと移動していた。フクロウの隊員達は首にスカイブルーのスカーフを巻いていた。
「さっきの無線聞いただろ? 自衛隊の1班と2班は爆弾でやられたみたいだな?」
隊員の1人が言った。
「ああ、すごい爆発だったな。敵の戦闘員が40人以上いるって話だ、警戒しよう」
もう1人の隊員が言った。
『バサッ』
枯れた芝生の地面が2カ所めくれるようにして持ちあり、人影が現れた。フクロウの隊員2人が音のした方向に素早く顔を向けた。
『ダダダダダダダダダダ』
『ダ~ン』 『ダ~ン』 『ダ~ン』 『ダ~ン』 『ダ~ン』
フルオートとセミオートの射撃音が同時に起り、フクロウの隊員2人が被弾して崩れ落ちた。銃声が広い訓練場に木霊した。
「11時の方向にマズルフラッシュ2つ、フクロウの2人が撃たれました!」
樹里亜が言った。
「敵だね! 米子、どうする?」
ミントが言った。
「指示があるまで待機だよ。敵の襲撃に備えて間隔を空けよう。ジュピターと私はここ。ビーナスは右前方に80m、マーキュリーは左前方に100m移動して。サターンは50m前方でM240を設置して掃射準備をして下さい。これからの会話はインカムを使います」
米子が言った。ミントと瑠美緯が64式小銃を持って立ち上がると素早く左右に散った。ミントは肩に『SMAW』を担ぎ、背中には汎用弾のチューブを2つ入れたリュックを背負っていた。
「おう、向かってくる奴らをこのM240でミンチにしてやるぜ」
パトリックがM240汎用機関銃を手に持ち、弾丸ベルトを3本首に掛けて歩き出した。
オレンジ色のスカーフを首に巻いた3班のブラックバードの隊員達は管理棟に入って唖然とした。1階のロビーと裏口から続く階段に白いスカーフを首に巻いた1班のサンダーバードと黄色いスカーフの2班のブルーバードの隊員達が転がっていた。多くの者が喉を押さえて絶命していた。その顔は歪み、苦悶の表情を浮かべていた。喉に搔きむしったような傷を作っている者が多数確認された。
《ブラックバードリーダーよりフェニックス、管理棟に到着。サンダーバードとブルバードの全員が心肺停止状態です》
《こちらフェニックス、ブラックバードリーダー詳しく報告しろ!》
大門が怒鳴りつける様に言った。
《ブラックバードリーダーよりフェニックス、死因は窒息によるものと思われます。外傷はありませんが全員苦しんだ形跡があります》
「サンダーバードとブルーバードは全滅です!」
大門が大きな声で言った。
《フクロウA班からフェニックス、ポイントC3で敵より銃撃を受けました。隊員2人被弾、これより交戦に入ります》
《こちらフェニックス、何? 銃撃? 慎重に対処しろ!》
「ポイントC3に敵が現れました。旧ゴルフ場第2コースの4番ホールの手前のフェアーウェイの辺りです!」
大門が再び大きな声で言った。
「すぐに3班のブラックバードを第2コースに散開させろ。横須賀の第2小隊にも出動を急がせろ! 車じゃなくてヘリで来させるんだ! 状況は交戦中と伝えろ!」
笹井が言った。
「了解です。ヘリボーン作戦に切り替えます」
大門が言った。
『バババババババババ』 『パン パン』 『ダダダダダ』 『ダ~ン』
『ダ~ン』 『ダ~ン』 『ダ~ン』 『バババババ』
訓練場の各所で銃声が響き始めた。赤い狐の戦闘員が塹壕やトーチカやタコツボから第3即応隊第一小隊『フクロウ』に対して射撃を開始したのだ。フクロウの隊員達は必死に反撃したが何人かが撃ち倒され、生き残った者はその場に伏せるのがやっとだった。伏せた隊員達は身を隠すために少しでも低い場所を求めて匍匐前進で移動した。
《フクロウリーダーよりフェニックス、現在各所で敵より銃撃あり。敵の数は不明なるも相当数いる模様。援護を求めたい!》
フクロウから本部に援護の要請が入る。
《フェニックスよりフクロウリーダー、ブラックバードを第2コースに向かわせた、到着まで持ち堪えろ。同士討ち、誤射に注意せよ。敵味方不明時は合言葉を使用せよ》
《フクロウリーダー了解》
3班の『ブラックバード』の隊員達9名は4名と5名の2組に分かれてそれぞれ旧ゴルフ場の第2コースの4番ホールに向かって移動していた。伏せていたフクロウの隊員達はインカムで連絡を取りながらA班は4番ホールのグリーン右横のバンカーに、B班はグリーン奥のバンカーに集まっていた。
「何人残ってる?」
A班班長の三輪が言った。
「田丸、梶尾、長谷部がやられました。残り5名です。敵を1人倒しました」
隊員の畑山が言った。
「クソッ、B班は班長を含めた5人がやられて残り3人らしい。だが敵を2人やったらしい。こっちは半分やられた訳か」
三輪が悔しそうに言った。
「おそらくスナイパーがいます。田丸と長谷部はいきなり頭を撃たれて倒れました」
畑山が言った。
《フクロウリーダーからフェニックス、フクロウは残り8名。半分の損耗です。敵を3人排除しました。尚、敵にスナイパーがいる模様》
《フェニックス了解》
「フクロウも戦力半減です。スナイパーがいるのはやっかいですね」
大門が言った。
「第2即応隊が来るまでは積極的な戦闘は避けるように伝えるんだ」
笹井が言った。
「了解です」
「第3即応隊の第2小隊『ミミズク』は待機のままでいいですか?」
木崎が言った。
「待機で構いません。大塚の敵拠点攻撃では君のところの女子高生達が大活躍だったそうですが今回は野戦だから活躍の場はないでしょう」
笹井が言った。
「そうですね。足を引っ張らないようにします」
木崎が言った。木崎は米子達を戦闘に参加させたくなかった。今回の敵はいままで戦ったどの相手よりの遥かに強いと感じたからだ。
「偵察ドローンを飛ばします」
通信員が言った。
「よし、飛ばせ」
笹井が言った。
《フェニックスより各位、第2即応隊の第2小隊がヘリでこちらに向かっている。極力交戦は控えて第2小隊を待て》
3班の『ブラックバード』の隊員達がバンカーに蹲るフクロウA班の隊員達を発見した。
「誰か? 合言葉を言え、『東海道!』」
ブラックバードの隊員が誰何して叫ぶように言った。
「『桑名の焼き蛤』」
フクロウA班の隊員が大きな声で合言葉を答えた。合言葉にはいくつかのパターンがあり、作戦に参加する隊員達はすべて暗記していた。ブラックバードの隊員達がバンカーの横にしゃがんだ。
「大丈夫ですか?」
ブラックバードの隊員がバンカーの中にいるフクロウの隊員達に訊いた。
「私達はフクロウA班です。B班はグリーン奥のバンカーにいます。A班は3人、B班は5人やられました。そっちは1班と2班がやられたみたいですね?」
フクロウA班班長の三輪が言った。
「酷いもんです。全滅です。それも窒息死です。本部の話だと燃料気化爆弾だそうです」
ブラックバードの班長の池谷が言った。
「敵の主力は管理棟にはいなかったって事ですか?」
三輪が訊いた。
「敵は1人もいませんでした。だからあんな攻撃をしてきたんです。クソッ」
池谷が悔しそうに言った。
「フクロウB班です。班長が戦死しました。3人に減ったので合流させて下さい。残弾も僅かです」
フクロウB班の生き残りの隊員3人がA班の潜むバンカーに匍匐前進で移動して来た。
「班長の三輪だ。ご苦労だった。こっちも3人やられた。合流してくれ。数は多い方がいい」
《マーズより各位、無線は聞いたよね? 第2即応隊の第2小隊がヘリでこっちに向かっているらしいから引き続き待機して。スナイパーに気を付けて》
《ジュピターよりマーズ、マズルフラッシュが増えています。敵の数が増えてます》
樹里亜が報告した。
《マーズ了解。ジュピターは引き続き監視をお願い。特に敵の火点とスナイパーの位置を把握しておいて》
《ジュピター了解。敵の火点は座標に記録します。スナイパーを探していますが現在のところ不明です。消炎用サプレッサーと暗視装置を使用していると思われます。引き続き探しますが気を付けて下さい》
《マーズ了解》
樹里亜が報告した通り、敵は連絡用塹壕を使って兵員を増強していた。また、実戦経験豊富な優秀なスナイパーも複数配置されていた。
『ダダダダ』 『ダダダ』 『ドドド』 『バババ』 『バババ』
『バシッ』 『ブス ブスッ』 『パシュ』
赤い狐の戦闘員達が木の陰に隠れて発砲を始めた。
「うわっ」 「うぐっ」 「うっ」
ブラックバードの隊員が3人が被弾して倒れた。
「敵襲、右の樹木! 距離40m! 数、5以上 散開しろ」
バンカーの中にいた三輪が叫んだ。
「前方からも敵が接近してきます! 数、10以上」
フクロウの隊員が叫んだ。
『バババ』 『バババ』
『ババババババ』 『バババババ』
『ドドドドド』 『ドドドド』
ブラックバードの隊員達はその場に伏せ後、5~6m横に転がって反撃の射撃を行った。正確な射撃が赤い狐の戦闘員を何人か倒しが双方激しく撃ち合う銃撃戦になった。赤い狐の戦闘員も地面に伏せて発砲した。
《ブラックバードよりフェニックス、2方向から敵の攻撃、数10以上。我が方3名が被弾》
ブラックバード班長の池谷1曹が報告した。
《こちらフェニックス、戦闘を継続せよ。もうすぐ第2小隊がヘリで到着する。それまで持ち堪えろ》
「敵が増えてます」
大門が言った。
「待ち伏せしていたのではないでしょうか? 管理棟に敵がいなかったのも、事前に我々の行動を知っていた可能性があります。だから燃料気化爆弾を使った」
木崎が言った。
「敵の数は50人以上です。もはや戦争です」
大門が言った。
「第2即応隊は自衛隊の最精鋭だ。イラクやアフガンで戦闘行動をした者も何人かいる。簡単にはやられない」
笹井が言った。
「2コース4番ホールのドローン映像入ります」
通信員が言った。モニターには上空50mから撮影した超高感度カメラの鮮明なカラー画像が映し出された。画像の中では4番ホールのグリーンを中心にマズルフラッシュ所々で時々光った。
「グリーンの近くのバンカーにブラックバードとフクロウがいます」
通信員が言った。
「近い距離で交戦してるな。だが動いていない」
笹井が言った。
「膠着するかもしれませんね」
大門が言った。
「通信員、第2小隊の移動状況は?」
笹井が訊いた。
「現在ヘリ6機が逗子上空を飛行中ですが不審機の妨害にあってるようです。不審機はヘリコプターとドローンのようです。排除の為に木更津から『AH-1Sヒューイコブラ』が2機上がりました。到着まで12分です」
「くそっ。敵はヘリとドローンまで使ってるのか。通信員、朝霞の本部で待機中の第3小隊にも出動要請を出せ」
笹井が忌々しそうに言った。
「了解です。すぐに出動を要請します!」
通信員が返答した。
「早くても第2小隊の到着まで30分は掛かりますね」
大門が言った。
「第2小隊が来れば形勢をひっくり返せる。彼らこそ自衛隊の闇であり、希望なのだ」
笹井が言った。
「もしかして第2小隊は『黒菊』ですか?」
木崎が訊いた。
「さすが内閣情報統括室ですね。全てお見通しというわけか。しかしこの話は超極秘事項です。第2小隊こそ切り札です。彼らは2019年までアフガニスタンでタリバンやアルカイダと戦っていました」
「やはりあの噂本当だったのですね? 自衛隊の特殊作戦群の一部が補給や医療などの米軍の後方支援として派遣されていた。しかしそれは表向きの名目で実際は実戦に参加した。クナル州とヌーリスタン州でしたよね?」
木崎が言った。
「そうです。自衛隊は実戦経験を積んだ特殊部隊を育てる必要がありました。その2カ所の戦いは激戦だった。隊員に多くの犠牲も出たが、それ以上に多くの事を学ぶ事ができました。第2即応隊の第2小隊こそがそのノウハウを持った最強の部隊なのです」
「そんな。まさか、第2小隊が『黒菊』?」
大門が驚いたように言った。
「大門1尉、君には悪いが第2小隊が到着したら第1小隊は引っ込んでもらう」
「と言いますと?」
大門が驚いた顔をして言った。
「彼らの力を試したい。もちろん君達第1小隊も自衛隊では最精鋭だ。だが私は黒菊の戦い方をこの目で見たいのだ」
笹井が言った。
《ジュピターよりマーズ、敵車両2台発見! 11時の方向、距離400。近づいて来ます》
《マーズ了解》
樹里亜の報告を聞いて米子は大口径双眼鏡を覗いた。黒い塊が2つ、こちらにゆっくりと斜面を登って向かってくるのが確認できた。2台とも車幅の割には車高が低い。車体中央部から細長い棒のような物が伸びている。
<戦闘車両!>
米子の頭の中に警報が鳴るような恐怖感が沸き起こった。
《ミミズクB班よりフェニックス及び各位、前方のポイントE4に敵車両2両発見、戦闘車両と思われます、注意されたし!》
米子が共通系無線のトランシバーのトークスイッチを押して発信した。
「何? 戦闘車両!? ドローンを接近させろ、ポイントE4だ!」
笹井が大きな声で言った。
「ドローンが敵車両を捉えました」
通信員が言った。モニターには戦闘車両が2両映し出された。
「BMP-2とBTR-80だ!」
木崎が言った。
BMP-2は30mm機関砲を搭載した戦闘車両で7.62mm同軸機銃と対戦車ロケットも装備している。BTR-80は装甲兵員輸送車で乗員3名の他に兵員7名を乗せる事が出来る。武装は14.5mm機関銃と7,62mm機関銃で、時速90Kmでの走行が可能だ。
「いかに赤い狐といえどもテロ組織では歩兵戦闘車両が限界だな。おそらく分解してコンテナで運んだのだろう。さすがに『T-90』や『ZTZ99』のような本格的な戦車を持ち込むのは無理だ」
笹井が言った。
「しかし小銃では歩兵戦闘車両には勝てません。司令、作戦を中止すべきではないでしょうか? これ以上の戦闘は危険です。全滅の恐れがあります」
大門が言った。
「私もそう思います。作戦が漏れているのなら、猶更です。隊員達を罠に飛び込ませるような事になります。すでに第3即応隊は8名の犠牲を出しています」
加賀美が言った。
「第2即応隊も私の小隊のうち2つの班の24名が全滅しました。これ以上犠牲は出すべきではありません、中止命令を出します!」
大門が言った。
「ふざけるな! これは国防だ! 第1小隊が全滅しても第2即応隊には第2小隊と第3小隊が残っている。現に黒菊がこっちに向かってるんだ。差し違える覚悟で戦うんだ! いいか、ここは日本だ。イラクでもアフガンでもない。祖国の領土が得体のしれない敵に蹂躙されようとしているのだ。お前達の任務は何だ? 国を守る事だ! 損害が出たくらいで泣き言を言うな! 第一空挺団と特殊作戦群は腰抜けか? 税金で戦争ごっこをする集団か? お前達は自衛隊の看板なんだ。22万の自衛隊員の顔に泥塗るつもりか? 大門1尉、貴様が指揮を執らないのなら私が執る。貴様は戦死だ!」
笹井が腰のホルスターからSIG-P220を抜くとスライドを引いてい大門の顔に銃口を向けた。スライドの『カシャ』という冷たい金属音がコンテナ内に響いた。大門が目を大きく見開いて言葉を失った。加賀美と木崎も硬直したように動きを止めた。3人の通信員達も緊張した面持ちで笹井を凝視した。
サーチライトの光が2つ、刺すように伸びて4番ホールのグーリーンを舐めるように照らした。
『ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
『ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ』
BMP-2歩兵戦闘車の30mm機関砲とBTR-80の14.5mm機関銃が一斉に火を噴いた。赤い曳光弾と炸裂弾と徹甲弾が夜気を切り裂くように飛んだ。
『バスッ』 『グシャ』 『ボン』 『バンッ』 『バシンッ』 『グシャ』
『バシッ』 『バンッ』 『ボンッ』 『バシッ』 『バシッ』
ブラックバードとフクロウの隊員達に30mm弾と14.5mm弾が命中した。サーチライトの光の中でブラックバードとフクロウの隊員達の何人かが文字通り肉片となって飛び散るように消失した。
30mm弾と14.5mm弾は土嚢を枕のように吹き飛ばして貫き、地面を抉って伏せている隊員達まで襲った。バンカーの外にいたブラックバードの隊員達はバンカーに飛び込んだ。バンカーの中にいたフクロウの隊員達は少しでも体を隠そうと必死でバンカーの底を手で掘り始めた。
「反撃しろ! 敵の車両に集中砲火! 車両が接近したら手榴弾を使え!」
池谷1曹が叫んだ。
スカブルーのスカーフを首に巻いた隊員の1人がバンカーの反対方向の斜面を登ってバンカーを脱出しようとした。
『バシッ ボンッ!』『べチャッ!』
脱出しようとした隊員の背中に30mm弾が命中して炸裂した。隊員の上半身は細切れになって四方八方に飛び散り、腰から下の下半身がズルズルとバンカーの側面を滑り落ちた。隊員達がその様子を見て目を逸らした。
「いいから撃て! 撃って撃って撃ちまくれ! それしか生き残る道は無い! 『サキモリ』の意地を見せろ!」
池谷1曹が叫んだ。隊員達はバンカーの淵から頭を出すと20式小銃をセミオートで撃ち始めた。
《ブラックバードリーダーよりフェニックス! 敵の攻撃は強力です! 戦死者多数! 一時撤退の許可を求めます!》
池谷1曹の無線の声がトレーラーの本部内に響いた。
「笹井司令、仲間割れしている時ではありません。損害が増える一方です」
木崎が言った。
「どうすればいい? まさか負けろと言うのか!」
「指令は全体の統括をお願いします。戦闘指揮は私が執ります。第2小隊が到着するまで隊員達を一旦退避させましょう。逃げるわけではありません。態勢を立て直して一気に反撃します。司令は至急先ほど木更津から上がったコブラに支援を要請して下さい。コブラならBMP-2に勝てます。それと今後に備えて自衛隊に対戦車火器の提供を要請して下さい。敵は我々が思っている以上に強力です。歩兵戦闘車両だけでなく、戦車も所持しているかもしれません」
木崎が言った。
「木崎君、さすが防衛大を首席で卒業しただけの事はあるな。大門1尉、戦闘指揮を木崎君に委譲する。協力して作戦を成功させてくれ」
笹井が言いながらSIG-P220のデコッキングレバーを押すと腰のホルスターに戻した。
次回は最終話となります。
次回は最終話となります。




