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Chapter36 「国家即応防諜機動群発足 敵拠点突入 南大塚」

Chapter36 「国家即応防諜機動群発足 敵拠点突入 南大塚」


 米子達は西新宿の事務所の会議室で木崎から新しく発足した組織の説明を受けていた。

「赤い狐に対抗するために新しい組織が誕生した。警察、自衛隊、内閣情報統括室が連合した内閣府直轄の組織だ。記者会見を開いて世間にも公表する。去年の経団協ビル及び霞が関の合同庁舎の爆破テロに続いて正月の同時多発テロ事件によって大きなテロ組織の存在が明らかになって国民も不安を感じている。政府に対策を求める声が大きくなってきた。それに応えるためにも新しい組織の存在を明らかにするようだ。まあ、政府直轄の対テロ用の特殊部隊が出来た程度のオブラートに包んだ発表になるようだがな」

木崎が言った。

「へえ~、さすがに一連のテロ事件の影響で平和団体の反対運動は起きそうもないね。正月早々の迫撃砲テロはインパクトあったもんね。私と米子は現地にいたし」

ミントが言った。

「国民もテロにかなりの恐れを感じて関心を持っているようだ。テロ組織の壊滅を訴える声が大きい。国会でも重要案件として取りあげられている」

木崎が言った。

「ニコニコ企画もその組織に組み込まれるんですか?」

米子が訊いた。大まかな話は三枝室長から聞いていたが具体的なイメージが湧かなかった。

「正式に組み込まれるのは本部の戦闘チームだ。だが暗殺チームも支援は行う。作戦に参加する事もあるようだ。戦闘チームが先発メンバーならニコニコ企画は補欠みたいなもんだな」

「新しい組織ってどんな名前でどんな構成なの?」

ミントが訊いた。

「名称は『国家即応防諜機動群』だ。今のところ国家即応防諜機動群は大きく3つの部隊に分かれている。第1即応隊が警察関係者で78名、第2即応隊が自衛隊関係者で110名だ。第3即応隊は内閣情報統括室関係で人数は調整中だ」

「なんかカッコいい名前だね。私達は第3即応隊なんだね?」

ミントが訊いた。

「まだニコニコ企画が招集されるか分からないが、戦闘チームの大半が第3即応隊に入るだろう。第1即応隊は警察のSATが主体だから室内戦や市街戦が適任だ。第2即応隊は自衛隊が主体だから大規模な野外での戦闘に向いてる。第3即応隊は両方の支援になるだろう。もし暗殺の任務があれば俺達の出番かもしれないな」

木崎が言った。

「組織名の響きがカッコ良くてイケてますよ。『きまZ』っすよ」

瑠美緯が言った。

「国家即応防諜機動群って、漢字にするとカッコいいですね。何をする組織かちょっと分かりづらいですけど」

樹里亜が言った。

「ちなみに第1即応隊の別称は『モノノフ』、第2即応隊は『サキモリ』だ」

木崎が言った。

「へえ、武士に防人か、渋いね。私達の第3即応隊に別称は無いの?」

ミントが言った。

「今のところ決まってない。希望があれば言ってくれ。もしかしたら採用されるかもしれないぞ」

「米子、なんかいい案ない? コードネームみたいにカッコいいの考えてよ」

ミントが言った。

「う~ん、私達内閣情報統括室の実働部隊は戦闘チームも暗殺チームも影の存在だから『忍者』とか『忍び』とか『隠密』って感じかな?」

米子言った。

「おお~『シノビ』と『オンミツ』、悪くないねえ」

ミントが言った。

「『シノビ』、カッコいいっすね。でもモノノフとサキモリって何すか?」

瑠美緯が訊いた。

「モノノフは武士の別名だ。サキモリは国を守る兵士の事だ。奈良時代の頃からあった呼び方だ」

木崎が言った。

「当時は防人に任命されたら家族から離れて単身で北九州や対馬に赴任して、何年も帰れなかったんだよ。赴任する時の別れの悲しみなんかが万葉集にも歌われてるんだよね」

ミントが言った。

「そんな時代から国防軍があったんですね。ネットで調べてみます」

樹里亜が興味深そうに言った。

「この前言ってた赤い狐の大塚の拠点は第1即応隊が攻撃して、丹沢の訓練施設は第2即応隊が攻撃するんですね?」

米子が訊いた。

「その通りだ。この前はSATと自衛隊の精鋭部隊が攻撃すると言ったが、国家即応防諜機動群の設立が間に合ったんだ」

木崎が言った。


 2日後の7:00、早朝の東京都新宿区市谷本村町の警視庁第5機動隊の会議室に『国家即応防諜機動群』の第1即応隊第1小隊とニコニコ企画のメンバーが集まっていた。警察主体の第1即応隊は当面の間は警視庁第5機動隊の施設内に部隊を構える事となっていた。会議室は学校の教室のように正面に向かって2人掛けの机が横5列、縦8列に並んでいた。米子達は左側の後方の席に座っていた。


 第1即応隊は78名で、第1小隊から第3小隊の3隊で構成されていた。各小隊には24名~28名が隊員が所属していた。隊員は警視庁を始め、各県警から選出されたSAT隊員や機動隊出身の者が多く、平均年齢は27歳と若かった。外国の特殊部隊出身のテログループを相手にする危険な任務であるため隊員は独身である事が暗黙の条件になっていた。また、隊員達は警察に籍はあるが、内閣府への出向という形になっている。結成して間もない組織のため、訓練はまだ1カ月程度しか行っていなかった。今回は国家即応防諜機動群にとって初めての任務である。


【今回の作戦部隊】

  第1即応隊 司令 森永警視正

  第1即応隊第1小隊24名    小隊長 相沢警視

    アルファー班8名      班長  高木警部補

    ブラボー班8名       班長  宮里警部補

    チャーリー班8名      班長  前田警部補

  第3即応隊

    JKアサシンチーム 5名  リーダー 木崎参事


「これより赤い狐の拠点である豊島区南大塚の『東アジア貿易振興ビル』襲撃作戦のブリーフィングを行う。本作戦の総指揮は私、森永が執る。現場での直接の指示は第1小隊の相沢警視が行う。相沢警視、作戦の詳細を説明してくれ」

ホワイトボードの前に立った第1即応隊の隊長の森永雅夫警視正が言った。森永は警視庁機動隊特務チームの出身だった。特務チームは機動隊の中でも襲撃などの任務が中心の極秘扱いのチームだった。公安との合同作戦で極左集団やカルト宗教のアジトを急襲した実績がある。


 「本作戦は事前に配布した作戦要領の通りだ。午前9時にアルファー班は1階の正面玄関からビル入りエレベーターを使って8階のサーバールームを占拠してもらう。占拠後は手順書通りにブレードサーバーと記憶装置及び記憶媒体を持ち出してもらう。ブラボー班は外の非常階段を使って5階に突入して制圧。チャーリー班も非常階段で6階に突入してオフィスを制圧してくれ。抵抗する者は射殺しろ」

ホワイトボードに貼った見取り図を指揮棒で指しながら第1小隊小隊長の相沢が言った。

「アルファー班了解」

「ブラボー班了解」

「チャーリー班了解」

各班の班長達が言った。アルファー班の隊長は高木、ブラボー班の隊長は宮里、チャーリー班の隊長は前田だった。

「それから内情のチームはビルの周りの警戒してくれ。ビルから逃げ出す人間は放っておいてかまわない。入ろうとする人間を止めて欲しい」

相沢が言った。

「もし抵抗したら排除しても構わないのでしょうか? それと5階と6階と8階以外は制圧しなくてもいいんですか?」

米子が訊いた。

「人目があるから殺すのはまずい。無力化して確保するんだ。5階、6階、8階以外は空っぽだ。倉庫にしているようだ。確かな事前情報だ」

相沢が言った。

「私達はDデルタ班とかEエコー班じゃないんですか?」

ミントが訊いた。

「うーん、我々は第1即応隊だが君達は第3即応隊だからなあ。まあ、今回はJKアサシンという呼称でいいだろう」

相沢が言った。今回の作戦では内閣情報統括室の戦闘チームも参加予定だったが、任務がビルの周りの警戒という事で作戦から外れた。怪しまれずに街に溶け込むには制服を着た女子高生の方が都合がいいという事で暗殺チームのニコニコ企画に召集が掛かったのだ。


米子達と第1即応隊第1小隊は護送用バス3台と大型ワゴンに分乗して豊島区南大塚の目的のビルの近くに移動して南大塚通りの路上で停車した。第1即応隊司令の森永と第1小隊隊長の相沢と木崎は通信員2人と共に大型バンの内部に作られた指揮所の席に座っていた。

《アルファー班、ブラボー班、チャーリー班はビルに接近して予定の位置に付け。JKアサシンはビルの周りで警戒せよ》

共通周波数のインカムに相沢小隊長の声が響いた。


 第1小隊の各班はバスを降りて東アジア貿易振興ビルに向かって歩き出した。東アジア貿易振興ビルは南大塚通りに面したブロックの角地に建ち、建物の左側は一方通行の道路に面していた。アルファー班はビル正面に、ブラボー班とチャーリー班はビルの左横に向かった。各隊員は黒い戦闘服に黒いボディーアーマーとヘルメットを着用していた。歩道を歩く通行人は物々しい集団に驚きの表情を浮かべていた。米子達4人もバスを降りて配置についた。米子はビルの正面の歩道に、ミントはビルの右横、瑠美緯は右横に立って周りを警戒した。樹里亜は向かいの雑居ビル『大塚トップガーデン』に向かった。大塚トップガーデンは10階建ての雑居ビルで非常階段から東アジア貿易振興ビルの正面と左側が良く見えた。樹里亜は非常階段の10階から監視を行い、必要に応じて狙撃をすることになっていた。樹里亜の待機は第1即応隊からの要請で警視庁巣鴨署の許可を取り、巣鴨署の刑事2人が近隣とのトラブル防止の為に同行した。40代の中年の刑事は警部補の中川、20代の若い刑事は巡査長の境田と名乗った。


 米子達はそれぞれ違う制服姿で手には大きなスポーツバックを持っていた。米子は紺のブレザーにグレーのチェックのスカートにブルーのスクールリボン、ミントは上下とも明るい紺色の制服にワインレッドのスカーフ、瑠美緯は上下ライトグレーの制服に臙脂色のリボン、樹里亜は冬服の濃紺のセーラー服にライトブルーのスカーフを着けていた。靴は全員、技術部が作った特製の黒いローファーを履いていた。爪先に安全靴のようなスチール板が入り、靴底は消音素材の特殊なラバーだった。スポーツバックの中にはベスト型のボディアーマーとバイザー付ヘルメットと拳銃の予備のマガジンが入っていた。


 《小隊長より各位、アルファー班突入せよ。ブラボー班チャーリー班は非常階段を登っれ!》

相沢の指示が出た。各班はサブマシンガンの『MP-5』を持った者が2名、「グロック19」を持った者6名の計8名で構成されていた。


 米子達は共通周波数のインカムを聴けるように左耳に白いワイヤレスイヤホンを装着してヘルメットに内蔵されているチーム用のインカムを聴けるように右耳には黒いワイヤレスイヤホンを装着していた。


 アルファー班の8名がビルの正面玄関から1階の広いロビーに入った。ロビーの床と壁はチャコールグレーに白い筋の入った大理石のタイル貼りだった。天井に埋め込まれた照明は暖色系でロビーは暗めだった。隊員達はタクティカルブーツの靴音を響かせてロビーを速足で奥の3基並んだエレベーターに向かって左右を警戒しながら進んだ。

《アルファーリーダーより小隊長、ただいま1階ロビーに侵入、これよりエレベーターで8階に向かう》

班長の高木がインカムで報告した。

「班長、右の壁に変な箱が」

『MP-5を』構えたアルファー班の隊員が10m離れた右側の壁に異物を発見した。異物は緑色で湾曲した大きめの弁当箱のような形で、高さ1.5mの位置に貼り付いていた。

「ん? 変な箱?」

隊長の高木が右を向いた。

『バアーーーーーーーーーーーーーーーン!    バーーーーーーーーーーーーーーーーーン!』


 1階のロビーで激しい轟音が連続して2回発生し、爆風と鉄球の嵐がアルファー班の隊員達を襲った。歩道にいた米子が爆発音を聞いて咄嗟にその場にしゃがんだ。正面玄関を見るとガラスドアが粉々に割れていた。米子はスポーツバックから紺色のバイザー付のヘルメットを取り出すと頭に被ってチーム用のインカムのスイッチ入れた。


 《こちらチャーリーリーダー、爆発音が聞こえた。原因を確認されたし》

チャーリー班隊長の前田がインカムで訊いた。

《小隊長より、アルファーリーダー、爆発音について報告せよ》

アルファー班からの応答は無い。

《こちら小隊長相沢、アルファー班、誰でもいいから、状況を報告せよ》

小隊長の相沢がアルファー班全員に呼びかけても応答は無かった。

「司令、アルファー班応答ありません、爆発音が関係していると思われます。作戦を中止しましょう」

指揮車の中で小隊長の相沢が言った。

「だめだ。10分後にブラボー班を8階に行かせろ、チャーリー班は2つに分けて5階と6階を制圧させるんだ。ロビーの状況はJKアサシンに確認させるんだ」

森永が言った。

「了解です、作戦を変更します」

《こちら小隊長、ブラボー班は予定を変更して10分後に8階のサーバールームに向かえ。チャーリー班の4人は10分後に6階、もう4人は15分後に5階を制圧しろ。JKアサシンはロビーに入って状況を確認せよ》

《ブラボーリーダー了解》

《チャーリーリーダー了解、前田班長チームと長井巡査長チームの2つに分けて行動します》

《JKアサシン了解。1階ロビーの状況を確認します》

米子は共通周波数のインカムで返答した。共通系インカムを聴いたミントと瑠美緯が米子の傍に走って来た。

「1階ロビーで爆発があったから確認のために中に入るよ。2人はここで待機してて」

米子が言った。

「わかったよ、気を付けてね」

ミントが言った。

「何かあったらすぐに呼んで下さい」

瑠美緯が言った。

《ジュピターは引き続き待機して》

米子がインカムで言った。

《ジュピター了解》


 米子はブレザーの内側のショルダーホルスターからSIG―P229を抜くと金属の枠だけになった正面玄関のドアを通り抜けてロビーの中に入った。天井の照明は消えていた。米子はポーチから小型LEDライトを取り出すとスイッチを押してロビーを照らした。床にアルファー班の隊員達が転がっていた。

《JKアサシン沢村より小隊長、1階ロビーに侵入、爆発現場は1階のロビー。アルファー班に被害あり、これより生存者を確認します》


米子はまだ煙が残るロビーをゆっくりと歩き回った。ロビーの壁は小さな穴と傷だらけだった。自動販売機も前面に無数の穴が空いて破壊されていた。床に転がった隊員達のボディーアーマーは所々破れ、ヘルメットには幾つも小さな穴が開き、顔と首は血塗れだった。爆風の影響で手足があらぬ方向に捻じれて千切れかけている者もいて倒れた体の周りには血溜まりができつつあった。米子はしゃがんで床をじっくりと見回した。BB弾よりも小さな歪んだ球体が床に沢山転がっていた。小さな球体は壁に取り付けられた爆発物から飛び出して反対側の壁に当たって床に落ちたものだった。

《小隊長よりJKアサシン、状況を報告せよ》

《こちらJKアサシン沢村、爆発はクレイモア等の指向性地雷と思われます。ロビーの床に小さな鉄球が多数存在、隊員8人の意識なし。救急車を要請して下さい!》

「クレイモアだと!? 隊員が意識無しって、ボディーアーマーを着用してただろ?」

相沢が独り言のように言った。

「隊員が着用していたのはレベル3Aのベストタイプのボディーアーマーです。クレイモアの鉄球の速度は拳銃弾の3倍以上です。恐らくアーマーを突き抜けるでしょう。顔と首、下半身や脇の隙間は無防備なはずです」

木崎が言った。

「そんな。それじゃアルファー班は全滅ですか?」

相沢が蒼白な顔をして言った。

「その可能性が高いです。至近距離なら猶更です」

木崎が顔を顰めて言った。

「作戦は中止にしましょう!」

相沢が叫ぶように言った。

「作戦は続行だ。救急車を呼んで近くで待機させろ。作戦が終了したら救助を行う」

森永が言った。

「終了してからですか?」

相沢が訊いた。

「これは『国家即応防諜機動群』の初陣だ。たとえ犠牲者を多く出しても失敗する事は許されない。警察の威信が掛かってるんだ。何があっても屈しないという覚悟を赤い狐に見せるんだ」

森永が言った。

「了解です。おい、救急を呼べ、5台だ。警視庁にも医療班を要請しろ」

相沢が通信員に指示した。


 《こちらマーズ、ビーナスとマーキュリーは1階ロビーに集合。ヘルメットを着用して。ジュピターは引き続き待機》

米子はチーム用のインカムで指示を出した。

《ビーナス了解。これよりマーキュリーとロビーに入る》

ミントと瑠美緯が右手に拳銃を持ってロビーに入って来た。2人とも制服姿に紺色のバイザー付きヘルメットを着用している。

「うわー、酷いね、何があったの?」

ミントが言った。

「多分クレイモアみたいな指向性の爆発物だよ。細かい鉄球がいっぱい転がってる。しかもクロスするように2つを2方向から同時に起爆してるよ」

米子が言った。

「対人地雷って赤い狐、パないっすね。半グレやヤクザとは大違いっす」

瑠美緯が言った。

「殺るか殺られるかだよ。戦争と同じ。とにかく全員の生存確認をしよう」

米子が言った。ミントと瑠美緯はポケットから小型LEDライトを取り出した。

米子達は床に転がるアルファー班の隊員達の生存確認を行う事にした。



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