Chapter34 「卒業旅行 沖縄 ドライブ」
Chapter34 「卒業旅行 沖縄 ドライブ」
米子達は7:45羽田発の便に搭乗して10:40分に那覇空港に到着し、那覇空港でレンタカーショップの無料送迎車を待っていた。
「東京は寒かったからダウン着て来たけど沖縄は暑いね」
浜崎里香がキャメルのライトダウンジャケットを脱ぎながら言った。
「26度だって。東京より15度も気温が高いよ。私も厚着してきたから暑いよ」
岸本きらりが言った。
「同じ日本とは思えない温度差だね。でも南国に来たっていう実感があっていいよ!」
野沢瑠香がはしゃいだ声で言った。
「天気もいいし、楽しい卒業旅行になりそうだね」
大屋美里が笑顔で言った。
「私達の日頃の行いがいいからだよ」
浜崎里香も笑顔で嬉しそうに言った。
米子達は無料送迎車でレンタカーショップに到着して事務所の中に入った。
「車は私の方で選んで予約しておいたから」
米子が言った。米子は内閣情報統括室が提携しているレンタカー会社に予約を入れていた。工作員としての身分証明証でもある『車両運転特別許可証』を提示すれば割引き料金になるのだ。
「この中で車の免許を持ってるの沢村さんだけだから任せるよ。でも幾らくらいなの?」
浜崎美香が訊いた。
「3日間借りると2万5千円だから1人6000円くらいだけど、3日目は自由行動で私が1日使わせてもらうし、バイト先がこのレンタカー会社と提携してて安くなるから1人4000円でいいよ」
米子が言った。
「安いねえ! タクシー使う事考えたら全然安いじゃん。私いろいろ調べたけど、沖縄って鉄道がモノレールしかないし、バスは本数が限られるし、タクシーだと結構高いんだよね」
野沢瑠香が言った。
「注意事項はそのパンフレット書いてありますので読んでおいて下さい。運転する方の免許証を見せて下さい」
タブレットPCに契約情報を入力していた男性の店長が言った。米子が受付カウンターに免許証を提出した。
「18歳って高校卒業したばっかりだから初心者ですよね。安全運転をお願いしますよ」
店長が言った。米子は財布からプラスチックのカードを取り出してカウンターに置いた。
「えっ? これって国際C級ライセンス? レースに出てるの!?」
店長が大きな声で言った。米子は中学生の頃から訓練所で車の運転を習い、高度なテクニックを身に付けた。15歳の時に『車両運転特別許可証』を取得する際に特別な措置で国内C級ライセンスを習得した。18歳になった時にも組織の力を借りて実技試験を受け、国際C級ライセンスを習得したのだ。
「レースには出ていませんが運転は自信があります。あと、割引がきくと思うのでこのカードも確認してください」
米子は組織のIDカードでもある銀色の『車両運転特別許可証』をカウンターの上に置いた。
「これは・・・・・・初めて見ます。これが噂の何でも運転できるライセンス?」
店長が独り言を言いながらタブレットPCに米子の提示したカードのID番号を打ち込んだ。
「おおっ、内閣情報統括室って政府関係ですね。提携してる相手なので料金は半額になります。あと、同じ料金で5日間有効になります。あの、このカードってどうやったら取得できるのですか? 噂ではこのカードを持てるのは特別な存在って聞いた事あります。政府の工作員とか。まさかあなたが?」
店長が言った。
「お答えできません。それ以上訊くと厄介な事になりますよ。私も訊かれた事を組織に報告しなければなりませんから」
米子が店長を睨みながら言った。
「いや、すみません、何でもありません! 本当にすみませんでした!」
店長が慌てて頭を下げた。浜崎里香達が不思議そうに一連の遣り取りを見ていた。
「みんな、割引になるから2000円でいいよ。それに3日じゃなくて5日間乗れるらしいから最終日も車使えるよ」
米子が言った。
「沢村さん、国際ライセンスとか政府関係ってどういう事? 安くなるのは嬉しいけど」
野沢瑠香が訊いた。
「瑠香、沢村さんも色々あるんだよ。安くなるならそれでいいじゃん」
浜崎里香が言った。浜崎里香は米子が想像を超えた特別な存在である事に薄々気付いていた。
米子達は事務所を出て駐車スペースに移動した。準備された車はシルバーメタリックの『ランドクルーザープラドだった』。
「あの、予約したのはSUVのヤリスなんですけど」
米子が車を準備した係員に言った。
「店長にいわれてグレードアップしました。料金は変わりません。遠慮なく乗って下さい」
係員が言った。
「うわーー、大っきい! カッコいい! 中も広いよ! 3列ある」
岸本きらりが車に貼り付くようにして大きな声で言った。
米子が運転席に乗ると浜崎里香が助手席に、野沢瑠香と大屋美里と岸本きらりが後部座席に乗った。
「どこに行けばいいの?」
米子が浜崎里香に訊いた。
「今日はこの後、うるま市の海中道路に行って、その後は沖縄の北部を車でぐるっと回るの。残波岬に行って、夕方7時には読谷村のホテルにチェックインだよ。今日は沖縄の自然を車から見る感じだよ。明日は『美ら海水族館』に行ってその後は古宇利島に行くよ。明後日は1日自由行動で、夕方は那覇に予約したホテルに各自チェックインしてね。
4日目は平和記念公園とひめゆりの塔に行った後に鍾乳洞を見て、最後の日は首里城に行って、国際通りでお土産買って帰るんだよ」
浜崎美香が一気に4泊5日分のスケジュールを説明した。米子はカーナビにうるま市の海中道路を入力した。
「じゃあ車出すよ。うるま市を目指すから。ご飯はどうするの?」
米子が言った。
「適当に道沿いのお店に入ろうよ。ステーキハウスとか沖縄っぽいファストフードとかさ」
野沢瑠香が言った。
米子の運転するランドクルーザープラドは県道10号の海中道路を走っていた。勝連半島と平安座島を結ぶ全長約5kmの海中道路はエメラルドグーリンの浅瀬の上を走る道路で海の上を走っているような爽快さを体験できた。浜崎里香達は車窓の風景に歓声を上げて楽しんでいた。米子も運転しならが美しい景色を堪能した。なんとなく断れずに参加した卒業旅行だったが、訓練や戦いを忘れて自然の美しさに目を奪われた。自然の中で過ごすゆったりとした時間は米子にとって新鮮なものだった。
「綺麗だね~やっぱ沖縄にして正解だね」
浜崎里香が言った。
「うんうん、凄く綺麗な景色だね。それにレンタカーっていうのがいいよね。誰にも遠慮しなくていいしさ」
岸本きらりが言った。
米子の運転するランドクルーザープラドは沖縄本島の県道70号を北上していた。
「さっきからずっと緑の中を走ってるね。地図を見ても沖縄の北部は森ばっかりだね」
野沢瑠香が言った。
「このあたりは『やんばる国立公園』みたいだよ。ヤンバルクイナで有名だよね」
カーナビを見ながら米子が言った。
「沢村さんって車の運転上手いね。私、時々お父さんの運転する車に乗るけど、それよりずっと上手いよ。たしかバイトで運転してたんだっけ?」
大屋美里が言った。
「そうだよ。ここだけの話だけど、高校1年の時から運転してるよ。浜崎さんも一回乗ったよね?」
「うん、あの時だよね。今でも思い出すと怖いよ」
浜崎里香が低い声で言った。米子が特殊警棒で気絶させた男3人を倉庫からトドメを刺す為に車で河原に運んだ時に浜崎里香は助手席に乗っていたのだ。
「まあ、あの事はもう忘れようよ」
米子が言った。
「普段はスピード出してるの? 何の車に乗ってるの?」
大屋美里が訊いた。
「最近はGT‐Rかな」
米子が言った。
「GT‐Rってスポーツカーだよね? ウチの兄貴が乗りたいって言ってた車だよ。ウチの兄貴が車好きなんだよね。あれって速いの?」
大屋美里が興味深そうに言った。
「高速だと余裕で200キロ以上出るよ。覆面が怖いけどさ」
「やっぱり沢村さんって普通の女子高生とはちょっと違うよね」
野沢瑠香が言った。
「卒業したからもう女子高生じゃないよ。4月からは女子大生だよ」
米子が言った。
「そうだった。でも、いざ女子高生を卒業すると寂しいよね。JKブランドってやっぱ貴重だよね」
「沢村さん、ちょとスピード出してみてよ。運転上手いんでしょ? せっかくの卒業旅行なんだから少しくらいハメ外そうよ」
大家美里が言った。
「うーん、この道は片側一車線だし、カーブが多くて見通しが悪いから直線になったらスピード出してみるよ。
米子の運転するランドクルーザープラドは沖縄本島北部を横断して西岸の県道58号線に入った。幾つかのトンネルをくぐり抜けて右側に海が広がった。米子はアクセルを踏み込んだ。ランドクルーザープラドのスピードがグングンと上がり、左の車窓から見える木々の輪郭が消え、緑のカーテンのようになった。右側には青い海と白い雲が見える。
「ちょっと大丈夫? 凄いスピードだよ!」
野沢瑠香が不安そうな声で言った。
「まだ120Kmだから大丈夫だよ」
米子が一旦アクセルを緩めた後に再び深く踏み込んだ。スピードメーターは140Kmを示した。道路の凹凸を拾ってランドクルーザープラドの車体がガタガタと揺れた。吸い込まれるようにトンネルに入って暗くなったかと思うとあっという間に出口を出て明るくなった。トンネルを出るとカーブだったので米子は左にハンドルを切る。全員の体が遠心力で右に引っ張られる。
「凄い、凄い! 道が狭いから凄いスリルだよ!」
大屋美里が歓声を上げる。
「沢村さんもういいよ! スピード落として! 怖いよ!」
岸本きらりが悲鳴に近い声で言った。
「もうすぐ150kmだよ~」
米子が軽い声で言った。対向車が現れると一気に距離を詰めて飛ぶように後ろに消えた。
「沢村さん! お願いだからスピード落として!」
浜崎里香も悲鳴に近い声で言った。
「わかったよ。卒業旅行で交通事故死なんて間抜けだもんね」
米子が言いながらアクセルを緩めて軽くブレーキを踏んでスピードを落とした。
米子達は19:30に読谷村にある大型リゾートホテルにチェックインした。部屋はツインルーム3つを予約していたが、米子は1人で部屋を使う事になった。夕食はホテル内のレストランで軽食を取ると、浜崎里香と野沢瑠香のツインルームルームに集合した。浜崎里香はコンビニで買った缶のカクテルを飲んでいたが、米子はペットボトルの『さんぴん茶』を飲んでいた。
「海が綺麗だったね。関東の海と大違いだよね。海中道路のドライブが気持ち良かったよ」
浜崎里香が言った。
「そうそう、湘南がお洒落だとか言っても所詮は黒い砂浜に暗い色の海だよ。でも沖縄は本当にエメラルドグリーンだよね。同じ日本とは思えないよ」
岸本きららが言った。
「私も来て良かったよ。ポスターとかでは見た事あるけど、本当に綺麗だったよね。海ってこんな色になるんだって思ったよ」
米子が言った。
「沢村さんにそう言ってもらえるこの旅行を企画した甲斐があるよ」
浜崎里香が嬉しそうに言った。
「それにしても沢村さんはお酒飲まないんだね」
野沢瑠香が言った。
「だってお酒って体に悪いし、18歳で飲むなんて不良だよ」
米子が言った。
「車を150kmでぶっ飛ばしといて、お酒飲むのが不良って沢村さんの感覚って面白いっていうか不思議だよね」
大屋美里が言った。
「でも沢村さんが来てくれて良かったよ。まさか来てくれると思わなかったよ」
野沢瑠香が言った。
「そうだよね。学校では私達と仲良くしてくれたけど、沢村さんって特別感っていうか、近づき難いオーラがあるんだよね。輝いてるのにちょっと怖いっていうか、踏み込んだらいけないっていう雰囲気だよ」
大屋美里が言った。
「そう? 元々あんまり群れるのは好きじゃなかったし、このグループ以外の人とは殆ど話した事ないけど普通の高校生だよ」
米子が言った。
「でも、私達のグループ以外の子達は私達が沢村さんと仲良くしてるのマジで羨ましがってたよ。だから私、凄い優越感があったよ。私の選んだ服を着てくれたりさ」
岸本きらりが言った。
「そうそう、沢村さんのおかげで私達のグループは注目されてたんだよね、カーストも1軍になったし。偏差値76の学年一の秀才で、スポーツ万能で、桜山学園一の美少女で、それでいてクールなんて完璧なスペックだよ。本当に仲良く出来て良かったよ」
浜崎里香が嬉しそうに言った。
「でも出会いは最悪だったよね」
米子が言った。
「確かにそうだよね。いきなり腹パンされたもん。凄い威力のボディーブローだったよ。あの時、この子ハンパなく強いって思ったんだよね。私も総合格闘技やってたから分かったんだよ。それで半グレに脅された時に藁にもすがる思いで助けを求めたんだよ」
浜崎里香は言いながら米子と出来事を思い出していた。
<<回想 3年前 初夏>>【第1部のChapter3より】
入学してしばらくするとクラスにスクールカースト的な物が朧げに出来始め、グループも形成されていったが米子は誰とも仲良くしなかった。クラスの女子のボス的存在の浜崎里香がマウントを取り始めた。女子トイレの洗面台の前だった。米子が髪型を直していると浜崎里香が話しかけてきた。取り巻きの女子も3人いた。
「沢村さん、あんた名前が『米子』って言うんだって? ウケるーー、可愛い顔してるけど米子ってありえないよ、あっはっは。まあさ、仲良くしようよ、悪いようにはしないよ。米子ちゃ~ん」
浜崎里香は米子を自分の配下に置きたかった。美形で可愛い米子を取り込んでそのルックスを利用しようと思っていた。米子がグループに入れば男子達が集まってくるだろう。米子を手下にすれば何かと便利そうだ。
「ウゲッ、ゲホホ」
米子の強烈な左ボディブローが浜崎里香のレバーに食い込んだ。浜崎里香がしゃがみ込んでトイレの床に両手を付いた。
「私の事を下の名前で呼ばないで」
米子が冷たく言い放った。浜崎里香は上目遣いで米子を見つめた。その目には涙が溢れ、顔は恐怖で引き攣っていた。米子はクラスで孤立したが、むしろそれを居心地良く感じた。
<<回想 2年前 夏>> 【第1部のChapter13より】
浜崎里香、野沢瑠香、大屋美里、岸本きらりが4人組の前に正座していた。4人組の中に木村加奈がいた。
「お前ら舐めてるだろ。ムカつくからエロ動画撮らしてもらうぜ。エロサイトにアップしてやんよ」
「お願いです、止めて下さい! 許して下さい!!」
浜崎里香が叫ぶ。
「浜崎さん、場所、ここで合ってる? なんか揉めてるね?」
米子が倉庫の入り口から中に入りながら言った。
「何だお前?」
リーダー格の男が米子を見ながら言った。リーダー格の男は背が高く、長めの金髪の髪で、くたびれたジーンズに皮のジャケットを身に着け、売れないロックバンドのボーカルの様だった。右手に刃の出たバタフライナイフを持っている。他の二人の男はスキンヘッドと紫色の髪のツーブロックだった。
「沢村さん・・・・・・来てくれたんだ」
浜崎里香が驚いた顔をして米子を見た。その目は涙ぐんでいた。
「お前達の仲間か? すげえカワイイ顔してるじゃねえか!」
ボーカル男が言った。
「この子、沢村米子っていうんだよ。里香達と同じクラスで、男子に人気あるんだよね」
木村加奈が言った。
「米子? 古くせえ名前だな。でも顔とスタイルは最高だぜ。いいじゃねえか、連れて帰って薬漬けにしようぜ。俺達のものにしよう」
ボーカル男がニヤけながら言った。
「いいっすね、エロサイトにアップするの勿体ないですよ」
スキンヘッドの男が言った。
「バカ、俺達で楽しんだら動画撮って会員制有料エロサイトに売るんだよ。このレベルなら田上さんが高く買ってくれるぜ」
「貴方達、何勝手に盛り上がってるの?」
米子が呆れるように言った。
「いいから大人しくしろよ。可愛がって
『ジャキーン』 『バコッ!』
米子は右手でブレザーの内側から特殊警棒を抜き出すと前にジャンプしながら大きく振って延ばし、着地と同時にボーカル男の頭を斜め上から強打した。ボーカル男は膝から崩れ落ちた。バタフライナイフが床に転がる。スキンヘッドと紫髪が驚いた顔をしている。特殊警棒はホワイトウルフ製で通常の警棒に使われるスチールの3倍の強度を持つ『4140カスタムスチール』で作られた物である。
『バコッ』 『グシャ』
米子はスキンヘッドをボーカル男と同じように、紫髪は左横から頬を打った。2人ともその場に崩れ落ちた。
「ううっ、ううっ」
『ガッ』
立ち上がろうした紫髪の後頭部に特殊警棒を叩き込んだ。紫髪は再びその場に崩れ落ちた。
浜崎里香のグループも木村加奈も米子を見つめて凍り付いたように動かない。
米子はボーカル男のポケットを弄り、車の電子キーを取り出した。米子はエルグランドのバックドアを開けて倒れている男達を載せようした。
「沢村さん、どうするの? ヤバイんじゃない?」
浜崎里香が怯えた声を出した。
「浜崎さん、揉めたら浜崎さんが何とかしてくれるんじゃなかったの? 格闘技やってるんだよね?」
米子が言った。
「私は関係ないから。許してよ、私は呼ばれただけだよ」
木村加奈は泣き出しそうだ。
「貴方達も手伝って。木村さん、あなたも」
米子は事務的に言った。
全員で男達を積み込むと米子は運転席に座った。
「浜崎さん、助手席に乗ってよ」
米子が言うと浜崎里香はしぶしぶ助手席に乗った。
「沢村さん、運転できるの?」
「当たり前でしょ」
米子の運転するエルグランドは多摩川の土手を下ると河川敷に進入した。米子は年齢的に運転免許は持っていないが、訓練所の訓練でハードな運転技術をマスターしていた。車を止めるとバックドアを開けて男達3人を引きずり出した。米子はポケットからコールドスチールの折り畳みナイフを取り出すとボーカル男の胸に刃を当てた。
「沢村さん、何やってるの?」
浜崎里香が訊いた。
「トドメを刺してるんだよ」
「ウソっ! やめた方がいいよ!」
「禍根を残すとやっかいだからね。浜崎さん達もこいつらがいなくなった方がいいよね?」
米子は一気に刃を深く突き刺した。
「ちょ、ウソ、ねえ、ウソでしょ? おかしいよ! ヒイ―――――」
米子は1分とかからず3人の心臓を止めた。
「私闘だから掃除屋さんは呼べないな。浜崎さん、手伝って」
米子と浜崎里香は3つの死体を車に載せた。浜崎里香は恐怖のあまりヒイヒイと泣きながら涙と鼻水を流している。米子は車の給油口を開け、ポケットから単四電池サイズの時限式雷管を取り出すとスイッチを押して燃料タンクの中に落した。雷管の起爆時間はデフォルト設定で10秒である。
「浜崎さん、離れた方がいいよ」
米子は言いながら小走りでミニスカートを揺らしながら車から15m離れた。浜崎里香も走って米子の横に並んだ。
『ボンッ』 『ボーーン!』
車の後部が爆発を起こし、炎が噴き出した。炎が米子と浜崎里香の顔を闇の中に浮き上がるように照らした。米子の顔は無表情で美しかったが、浜崎里香の顔はグシャグシャだった。
「浜崎さん、この事は誰にも言わないでね」
「言えるわけないじゃない!! ううっ ねえ、沢村さんは何なの? ううっ 何なの!! ううっ」
浜崎里香が泣きじゃくりながら言った。
「知りたい? 教えてあげようか?」
「イヤッ! 聞きたくない! 怖い! ううっ、ううっ」
「また困ったらいつでも言ってよ。出席日数の件よろしくね。社会だけじゃなくて他の科目もヤバいんだよね」
「沢村さん、もう私達に関わらないで! お願い!」
「浜崎さん、それはこっちのセリフだよ」
<<回想シーン 終り>>
「まさか友達になるとは思わなかったよね」
米子が言った。
「えっ? ごめん考え事してた」
浜崎里香が言った。浜崎里香は今でもあの河原での出来事が悪い夢であって欲しいと思っていた。過去の出来事を思い出すと米子と関わる事が恐ろしく思えたが、それでも米子と仲良くしたいという気持ちには抗えなかった。




