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【短編】左利きは早く死ぬらしい

作者: 8小節

 初めて投稿する小説なので、暖かい目で見てください。アドバイスがあれば是非。

 左利きは右利きに比べて平均寿命が10年短いらしい。


 それを聞いて、僕は、右手で文字を書く練習を始めた。


 よく30歳には死にたい〜だとか、若くて元気なうちに〜だとか、そういったことを聞くが、僕はそういった人とは違う。死ぬ間際まで、全力で足掻くつもりである。


 例えば、将来、自分の体内に深刻な癌が発見されたとする。そしたら僕は、自分が今してもらえるありとあらゆる延命治療を全て行い、生き延びられる僅かな可能性に永遠にしがみつくだろう。


 人生は、しぶとく余す事なく楽しむのが一番。そう思っている。太くした上で何とか長い人生を送りたいのだ。


 太く短い人生を送りたいとかぬかしてる奴は、所詮長生きすることを諦めているだけのしょうもない奴だ。……しかし、案外そういう奴の方が、健康に気遣っている人より長く生きるのである。



 「思い立ったが吉日」の精神ですぐ練習を始めたが、結局半年くらいマイペースに練習を続けた。こんな時間をかけているのに吉日と言えるのかは謎である。


 半年も練習したので、左手には劣るものの、割と違和感のない文字が書けるようになった。段々右利きに近づいてきていて、心なしか寿命がのびているような気がする。おそらく、「心なし」史上、最も心なしであるが。



 左手で文字を書く頻度が少なくなったので、以前より左手で書く文字のクオリティが落ちてきていることに気づいた。例えるなら夏休みに遊び呆けて、終盤久しぶりに鉛筆を持ったときのような感覚。こんな字汚かったっけ?となるアレだ。


 何とも言えない怖さがあった。学校生活で「文字を書く」という行為は、最も身近であるといっても過言ではなかった。これまで人生をともにしてきた左手で、文字が書けなくなるのは相当ショックである。


 左手には、これまでの思い出がつまっているのだ。大袈裟だと言われればそうなのだが、僕は定期的に左手でも文字を書くようにした。左手に愛着が湧いていたのかもしれない。


 そうして、僕は右利きではなく両利きになった。寿命の短さは、右利きと左利きの間をとって5年かなと思った。


 個人的に、5年くらいなら、健康に気を遣えば全然巻き返せそうであると思った。高麗人参のサプリでも飲んでりゃ、たった5年ぽっち、余裕で寿命が加算されるだろう。




 後日、僕は友達に、「両利きになったんだよ」と伝えてみた。


 すると、友達は、「何で?」と聞き返してきた。不意を突かれてたので、慌てて「便利だと思って」と答えると、友達は「ふーん、すごいねえ」と言った。別にそれ以上会話は続かなかった。


 勿論、承認欲求を満たすために右利きに挑戦した訳ではないので良いのだが、もうちょっと興味を持ってくれても……と思った。友達に「寿命を長くしたくて」とは恥ずかしくて言えなかった。


 よく考えたら、左利きの寿命が10年短いのは何故なのだろうか。左利きに不便な世の中なので、ストレスが溜まるからだろうか。いまいちピンとこない。


 もしかすると、左利きを敵対視している右利きの人たちが流したデマかもしれない。

 10年というあまりにも大きな差が、大きな不安だけでなく怪しさも醸し出している。


 ……まあ別にデマだったとて、両利きにはなれているので結果オーライである。「両利きになったばっかりに……」といったシチュエーションは思い浮かばないので、寿命とは関係ない恩恵を受けたといえる。


 これからは、左手でご飯を食べながら、右手で文字を書けるというなんとも絶妙なメリットを何とか活かしていきたい。

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