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現実世界でざまぁを? 出来らぁ!

まあ、彼女は他にも色々とやらかしてくれたんだよね。

例えば自作のオリジナル小説を読んで欲しいって言うから、「小説は読みたくないけど起承転結形式のテンプレにしてくれるなら評価するよ」って言ったら……そのテンプレを無視して送って来たんだよね。

ダイジェスト版だったから被害は少なかったんだけど。


とまあ、こんな感じで自分がやりたいことのためだったら相手の言ってることを平気で無視してきたんだ。

思い出すのもめんどうだからあと1エピソードだけ、かいつまんで話すと。


小説を書きたいって言うんだけど、主人公にする予定の人物が障害者だからどう書いたらいいかわからない。

……って一番自分で考えなきゃいけない設定部分を丸投げしてきたり。


それでも書きたいって気持ちを大事にしてあげたかったから色々と調べてメッセージ送ってあげたんだけど。

ある日「もういい」ってだけメッセージが来たから私は言ったんだ。


「もういいだけだと自分のことしか考えてないように見えて感じ悪いよ。色々やってくれてありがとう。でも私には無理だった。って相手へのねぎらいの言葉を言ったら?」


次に送られてきたメッセージには。感謝の言葉なんて微塵もなく、ただただ自分の好きなことを語っていたのだった。


***


さて、何度も何度もやらかされ。

自分の都合の悪い事は無視するか、脱兎の勢いで回避して言い訳をならべる。


口癖は「ひいおじいさまはすごい」「雪が降ってたから」「メンヘラちゃんにひどいことされたから」「○○って理由があるから~(私は悪くない)」


いやー

ヤバイ人なのは(ここに書いてない事件も含めて)薄々分かってたんだけど、面白いから様子見しちゃってね。

だってどう見てもあれじゃん。

なろうで見かける没落貴族じゃん。


「私のひいおじいさまは国に貢献した貴族でしてよ!」「雪が降っていたら仕方ないことですわよ。田舎者はご存じなくて?」「過去に友人に裏切られたのですの。なので警戒してしまうのですわ」「じいやがちゃんと把握していないのが良くなくてよ」「メイド長! これはどういうこと!」


……うん。

完全に一致だわ。


んで、流石に今時テンプレ展開でも見かけないような没落貴族系悪役令嬢(だと思ってる一般人)を見てるのも飽きるわけよ。


体調も悪くなって来てたし。

……おかしな趣味のせいとか言わない!

人間観察は大事でしょ?

人間関係ってのは一生ついてまわ……。


友達のことはほっといてよ……。


それで私は決行したんだ。

いわゆる「ざまぁ」を


***


いつものようにしつこくメッセージを送ってくる彼女。

最近は最初のゲーム以外に別の漫画でも話が合うと分かって嬉々として話している。


そんな彼女に私は言った。

いつものように、空気の読めない面倒な歴史オタの私に戻って。


「あのさぁ。……。しとらすちゃんって。前に華族だって言ってたじゃん?」


「うん。言ったよ。ひいおじいさまがね……」


そのまま自慢話につながるのがいつものパターンだ。

だが私はそうはさせなかった。


「華族ってね。条件がいくつかあるんだよ」


「そうなの?」


「うん。まず今の日本では華族制度は廃止されてるから。そもそもしとらすちゃんは華族じゃないんだよね」


「へーそうなの。でもひいおじいさまは……」


「でね。ここからが大事なんだけど……華族って養子だと相続できないんだよ」


「……へ?」


「いくつか例外規定もあるんだけど……聞いた範囲の話だと多分……制度残ってても相続できなくて爵位返上になったと思う」


「……」


「だから、しとらすちゃんは、自分を華族の末裔だと思ってる……ただの一般人だね」


「……だから?」


「まあ。他人を使用人扱いするのはやめたらってことかな? 給料も払えないんだし」


私はここで話を終わらせるはずだった。

単純に諫めるだけで良かったから。


だが彼女はやってしまったのだ。

私、ゴルハイの地雷を踏み抜くという行為を。


「……あなたも平民じゃない? 家族に大事にされてなくて貧乏だと性格も悪くなるのね。私は家族仲いいからご心配なく」


あーあ。

ざまあ系は読むだけにしたかったんだけど仕方ない。

やるしかないか。

現実世界でざまあを。


「あのさ。私言ってなかったことあるんだよね……」


ここから私の反撃が始まった。


「先に上げた華族は貴族院ってところに所属できたんだけどさ。ここには華族以外も居たんだよね」


「高額納税者枠ってのがあるんだ。地主とかで納税額が多いと入れるんだって」


「で?」


「私の旦那。その高額納税者」


「……は?」


「ああ、今は華族制度無いから正確に言うと相当額かな? つまり私。今は金持ちなんだよね。別荘とかいろいろあるの」


まあつまるところ話はこうなる。

田舎育ちで貧乏だったが今は結婚して成り上がり者になった主人公が。

家柄ぐらいしか取り柄のない(本当は家柄も無いけど)没落貴族系悪役令嬢に天然を装っていじめられていたと。


ちなみに言うまでもないと思うがしとらすちゃんは独身だ。

天然だろうが養殖だろうがどう考えても結婚することなど出来ないだろう。

なぜ知っているのかというと、最近、結婚相談所に通い始めたことまで馬鹿正直に話してくれたからだ……。

あと実年齢も知ってる。アラサーだってさ。

別に知りたくもないから話さなくていいんだけど……。


多分私みたいなのも結婚出来たんだから自分でも行けるだろって思ったんだろうね……。

いや、自信持つことはいいことなんだけど……ちょっとしとらすちゃんのレベルで自分のことしか考えてない人は無理なんじゃないかと思う。めっちゃ可愛いか、めっちゃ有能か、親がめっちゃ偉いか。

このどれかじゃないとダメじゃないかな?


自分を貴族だと思ってるから行けると信じた?

まあそうだと思う(脱力)


こうして私はまさかの現実世界でざまぁに成功してしまったのだった。


















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