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◇31 everything real




 その後、学校へと警察が到着し、僕はまた警察署で事情を聞かれることになった。

 三谷は警察が到着したときにはすでに死んでいたそうだ。そう、警察署の刑事さんが教えてくれた、らしい。その時僕は、唇を真っ青にして、目は虚ろ、体をガタガタと震えさせることしかできなかった。今となってはどんな風に告げられたのかも思い出せない。

 何回か警察に呼ばれては、その度に三谷の姿を思い出して吐きそうになった。



 ……薄く目を開ける。


 どうやら僕は自室のベッドの上にいるらしかった。

 昨晩はいつ寝たのだろう。前後の記憶が上手く思い出せなかった。窓から既に真南近くに登った太陽からの光が膨大に差し込んでいて、部屋中を蠢くナニカがよく映る。部屋の中はとても暑かった。

 緩慢な動作で首を横に置いてある時計に向ける。だが、その目覚まし時計は7時ぐらいを指したまま動く様子がない。しばらくボーッと見続けていると、その時計は1ヶ月前に不注意で壊したことを思い出す。

 腕をゆっくりと頭の方まで持ってきて、枕元の自分の携帯の電源ボタンを押す。だが、携帯からの反応はない。時計の代わりに表示されたのは、電池残量が足りないことを示すための赤くなった電池の画像が表示された。

 役立たずの携帯をそこら辺へと放り投げ、再び顔を枕へと埋める。

 ……どうせ学校は休校だ。


 目を閉じても、なかなか眠ることができない。瞼の裏に、三谷の姿が焼き付いて離れないからだ。

 瞼に映る三谷は、……やめよう。何も考えたくない。

 遂には数えようとした羊の中にさえ三谷の顔が混じりだした僕は、『暑い』こと以外の思考をどうにかして切り捨てる。苦闘は体感にして5時間以上。疲れ果てて意識を失った。



――――――

――――



 …………暑い。

 再び意識が戻った時、黒々とした雲が光を遮り、窓から見える外の暗さと一体化したように部屋も真っ暗闇の中だった。

 身体は鉛になったかのように重たく感じる。ベッドから起こすと、部屋の中の気温は非常に高いはずなのに、体の中が寒く感じる。ベッドのシーツは汗でぐしょぐしょに濡れていて、気持ちの悪さを感じる。

 自分が自分でないような…………頭が……ぐらぐらする…………熱中症か。


 尻に固い感触がある。浮かせて確かめると、手のひらに収まるぐらいの硬い物体――充電切れになった自分の携帯がそこにはあった。

 立ち上がって、机の上に伸びている充電コードにその携帯をつなぎ、ふらふらとした足どりで部屋を出る。隣の部屋からは一切物音がしていない。壁に手をつきながら階段を下りて、1階の台所に向かった。


 戸棚から、プリントされたキャラクターの絵が剥げかけているコップを取り出す。壊れたら変えようと思っていたのだが、なかなか壊れないため使い続けているものだった。コックを上げて水道水を入れ、それを一気に飲み干す。

 ……美味しい。言い知れぬ快感と一緒に体中へとわずかに元気が巡る。

 こんな気分でも人間は生理現象には抗えないってか、と自虐的な思考を続けた。もう1杯コップに入れて同じように飲み干すと、汗にまみれた自分の服を脱いで洗濯機へと放り込む。


 家からは音が全くしない。

 誰も、いないのか。


 

 耳に唯一入る蝉の鳴き声を背に、台所とつながったリビングに向かう。テレビの上の掛け時計の針は午後6時半過ぎを指していた。叔父さんは分からない。広夢が家にいないのは珍しい。


 ……するべきことは、何もない。何も、できない。


 段々と蝉の声すらも静まり、秒針の音だけのしんと静まった空間が作られる。かと思えば、何かを打つ音がぽつりぽつりと響くようになり、しだいにそれはざざぶりの大雨へと変わった。

 部屋の中まで染み込んでくる、纏わりついてむせかえる湿気の匂い。

 

 頭を空っぽにしたまま部屋へと戻り、上半身裸のままベッドに倒れこんだ。復活した携帯を机の上からコードごと引っ張ってくる。

 電源を入れて――そして消した。


 ……もう……眠い。




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