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【中置き】「露歩き」、「丸嬰」に敗北する(儚ノ中談)

【中置き】、おまけ的要素のお話です。

う……しかしこれはまた………。

やっぱり今と皆微妙にキャラが違う……。

出来ればご容赦ください。

                        銃.

【中置き】「露歩き」、「丸嬰」に敗北する(儚ノ中談)


        一


「あぁ~~。あんたとももうすぐお別れ。寂しいねぇ…離れたくないわァッ。」

丸嬰まるえい」が今回何度目かになる対「露歩つゆあるき」腕つかみを決行した。

そんな「丸嬰」の行動を予測してか「露歩き」はひらりとその腕をかわし何事もなかったように歩き続ける。


「…くっ……ちょこざいな。

 でもそんな連れない所も素敵なお人…。うふっ。」

「丸嬰」はくねくねしながら「露歩き」の周りを跳ねまわる。

 

今回でこの旅も三度目。

これまでは「露歩き」に「くるり」と「さき」、それと「とばねき」に私を加えた4人で旅をしてたけど今回は何故かこの小汚い歯抜け娘が参加。

なんか旅が楽になるような事してくれるのかなと始めはちょっと期待してたけど、役に立つ所か

邪魔になるばかり…。どうしてぬし様はこんな奴の同行を許したのかしら?


ゆめは後ろから「丸嬰」を睨みつけた。不平はまだまだ止まらない。


すぐ疲れただの、あっち行こうだの、あれ買ってだの、私と同い年位なのに我儘ばっかり言っちゃってさ…。

「茶屋」でも何の仕事もしないでどっか行っちゃったり昼寝ばっかりしてるし…。

そして何より許せないのは「露歩き」に色目使う所。よくもまぁその歯抜け姿でいけしゃあしゃあと…。

許せないわ…もう我慢の限界よっ!


ゆめが「丸嬰」に文句を言おうとしたその時、それより少し早く「露歩き」が口を開けていた。


「「丸嬰」…。」

「なぁに?「露歩き」。」

「丸嬰」が明らかに媚を含んだ声で「露歩き」の呼びかけに応える。


「私はお前の事が好きではない…。これからもお前の事を好きにならない。

 だからこれ以上私にそのような振る舞いをしても無駄だ…。」


――――よォっしぃ!よく言ったっ!「露歩き」!


ゆめは左手で拳を作り脇腹の所にしゅっと引いた。

その動作の意味を知らない「くるり」がゆめを不思議そうに眺めている。


「…そんな…ひどい。そんな言い方しなくても…。」

「丸嬰」はとても傷ついたような顔をして両手で頬を押さえたが、そんな「丸嬰」を見ても「露歩き」はその表情を全く変えずまた前を見据えて歩き始める。


――――確かに…。ちょっときつい言い方と態度かも…。

いくら嫌いでもそんなはっきりと女の子に言うのはどうかなぁ…。 

ん~、どうも「露歩き」ってその辺駄目なのよねぇ…。


「丸嬰」はその場で顔を覆い下手糞な泣きまねまで始めてしまった。「露歩き」はもちろんそれでも足を止めない。ん~、非道い…。


――――仕方ないなァ…ちょっと声掛けてあげるか…。


ゆめが「丸嬰」に近づきその肩に触れようとしたその時、「丸嬰」は何かつぶやいた。


「――――…まで。」

「え?何?」

儚ノ中が聞き返す。


「思い通りにならないなら、力づくで手に入れるまで…。」


「…え。」

次の瞬間、「丸嬰」は「露歩き」の正面に立っていた。

さすがに「露歩き」もこれには驚き足を止め「丸嬰」を見つめる。


「あたしと勝負しろっ!」

「勝負?」

「露歩き」が聞き返す。

「そうだ…。あたしと勝負だ。それであたしが勝ったら…そうだなぁ…っよし!

 あたしの旅の垢を落として添い寝しろ!」

そこにいる「丸嬰」以外の全員が目を点にした。私からは見えなかったけどたぶん「露歩き」もあっけにとられた顔をしていただろう。

「露歩き」のあっけ顔、見たかったなぁ…。


「…無益な事はしない…。」

「露歩き」はそれだけ言ってまた先へ往こうとした。「丸嬰」がその腕を掴もうとする。

「露歩き」の動きが止まった。「丸嬰」に腕を掴まれたのだ。

「露歩き」はその手を見つめ、そして「丸嬰」を見つめた。それは信じられないものを見るような瞳で…。


――――まさか「露歩き」、予測してたのに避け切れなかったの…?


皆の間を緊張した空気が流れる。


「お前……。」

「馬鹿だねぇ…あんたも。だけどそれ故にあんたはぞくぞくする程美しい…。

大丈夫、あんたに無益は無いよ…。あんたが勝ったらちゃんと見返りはあげるから。

そうだねぇ…一番めんどくさい「器」をあんたにあげるよ。

それでどう?」


その言葉を聞いた「露歩き」の瞳が一瞬にしてきつい色を帯びた。

それは森の中で餓えた獣に狙われていた時に見せた色…。

そう…何かを殺す時の「露歩き」の目の色だった。

二人が何の話をしてるのかよく分からなかった。

でもそれは「露歩き」にとってとても重要な話だったみたい。

だって「露歩き」のあんな鬼気迫った顔を人に向けるところ見るの、初めてだったし…。

「その話が嘘だとしたら?」

「露歩き」が尋ねる。

「疑るねぇ…そん時はあたしの「御魂みたま」を取ればいいじゃん。それでどうよ?」

「…いいだろう。」


―――御魂!


さすがにそれはわかった。どういう流れかはよくわからないけど「丸嬰」が自分の命を賭けてる、その事だけはわかった。

でも、「露歩き」を相手にそんな事…私はすごく怖くなった。


「おいおい、二人共。そんな物騒な事はお止め…。

 あとちょっとで御殿なんだ…。仲良く行こうよ。」

事の成り行きを見守っていた「とばねき」がさすがに二人の間に割って入った。


――――そっ…そうよ、そうよ。「とばねき」の言う通りよ。

仲悪いとはいえ三百年も一緒に旅してきた仲じゃない。

その最後の最後に命の取り合いなんてそんなの…。


「「とばねき」、下がれ…。巻き込まれたいのか…?」

「露歩き」が「丸嬰」だけを見つめて「とばねき」に冷たく言い放つ。


――――駄目だ…。なんか知らないけど本気になっちゃった。


ゆめはため息をついた。




      

     二


長閑に芦の茂る畦道の中で「露歩き」と「丸嬰」が適度に距離を保ちながら対峙している。

その二人の中間位の位置に「とばねき」は立ち、その後ろに私達三人が控えていた。

「…とにかくだ…。相手に参ったと言わせる、もしくは私達が見て勝負あったと思えるような状況になったらそこで終わり…。いいね、二人とも?」

「うん、い~よォ。」

「………。」

「いいねっ?「露歩き」っ!」

「…ああ。」

「とばねき」が軽く溜息をつく。そうなのよねぇ…、「露歩き」って結構すぐ周りが見えなくなっちゃうのよねぇ…。普段はあんなに冷静なのに…。


「では、はじめっ!」

「とばねき」が合図をする。二人はその後も動かない…。たぶん相手の出方を窺っているんだ。


私はお互いの様子をよく観察してみた。

「丸嬰」はというと胸の前で腕組をし、片足をもう一方の足に引っ掛けてだらしなく立っている…ってあんた!それじゃあ手も足もすぐ使えないじゃないの?

しゃきっと立ちなさいよ!しゃきっとっ!

「露歩き」はというと、自然に足を開いた状態で両手を両脇にだらりと下げている。

けれどその右手には「露歩き」の得物の銃剣が握られていた。

「露歩き」の銃剣は普通の銃剣とは違って刃の部分が銃の先からでなく銃の長い筒の背にくっついたような形をしている。

よく分からないけどぬし様から頂いたものらしい……って女の子相手に武器使うの「露歩き」っ!しかも銃に剣の得物って…。

なんか「露歩き」…女の子に疎い以前の何かが足りないような…。…非道い。


 一瞬何が起きたのかわからなかった。というか事が起きた後もどうしてそうなったのかよくわからなかった。

だってあまりにも一瞬で勝負がついてしまったから…。

 私が理解出来ていたのは「露歩き」が右足を少し下げるまで…。次の瞬間たぶんその右足をばねに「露歩き」が前へ踏み込んだんだと思う…。

「露歩き」の姿が一瞬揺らいだかと思うとその場から消えて…次の瞬間激しい金属音が二度鳴り響いたかと思うと私達の目の前に砂埃をあげて二人の姿が現れた。


「あぁ…だから歯が無い…。」

「さき」が隣でぼそりと呟く。ってこの子…今の攻防が見えてたのか?


私は砂埃の中から現れた二人の姿を見て自分の目を疑った。

だって「露歩き」が戦いの最中に片膝折ってる姿なんて初めて見たんだもの!

しかも「丸嬰」が「露歩き」の手に握られた銃剣を「露歩き」の手ごと踏んづけて地面に押しつけて立ってるし…。しかもしかも腰に手を当てて不敵に笑って立ってるし…。

…嘘でしょ?でもこの状態は間違いなく…。


「勝負あり!…「丸嬰」の勝ち!」

「とばねき」がその空気を打ち破るように声を上げる。


「あたしの勝ちィ~。」

「丸嬰」はそのままの体勢で少し顔を前に突き出し「露歩き」の額に軽く接吻した。

いやァ~見たくないっ!

 そしてその次の瞬間くるりが拍手をし出した。わぁすごいすごいってくるり、あなたそれでいいのっ!


 こうして「露歩き」は「丸嬰」に負けてその代償を身をもって払う事になったんだけど…まぁそれはまた別のお話って事で…。


                            【中置き:終】




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