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十二日目 たのしいおちゃかい 前編

 ―翌日。昨日は曇天だったが、今日はよく晴れてくれた。

 寝癖を直し、髪を結んだマクスウェルは普段通りの紳士服に着替え、頷く。


「よし」


 そして、普段しているカモフラージュは解いたまま、彼は部屋を出ていった。


 ―厨房にて、喧しい音を立てて複数の調理道具を魔法で同時に操作していたマクスウェルを見て、コック長が声をかけた。


「おはよう、随分張り切ってんな」


「あぁ、無茶言った手前、私がその分負担してやるという話だったからな」


「普段、お前に散々手伝ってもらってる手前、本気で言ってると思ってるやつはいないと思うぜ?」


 若干引き気味に彼に話しかけるも、彼は調理の手を見たまま答える。


「だろうな。それでも、私としてはこのくらいやった方が都合がいいんだ」


「都合がいい?」


 不思議そうに聞くコック長に向けて、彼はこっちの話だ、と小さく笑って人差し指を振るうと、賄いを食べるときに使うテーブルの上にお茶が用意された。


「即席のものだが、ゆっくりしていてくれ」


 次々と全員分の朝食に加えて、お茶菓子や軽食までも完成させていく様を見て、お茶をすすりながら感嘆のため息をつく。


「…お前、とんでもないな」


「だろう? 私も自分のことながら引いてるよ」


 マクスウェルはほんの少しだけ、笑顔を曇らせつつ答え、とりあえず、と朝食の芋のポタージュを掬ってコック長の前に置く。


「味見してくれ」


「…大丈夫、ばっちりだよ」


「それは良かった」


 そんな風に味見もしてもらいながら、料理の準備をしていると、突然扉が開いた。


「マクスウェル! お前の仕業か!?」


「どうした」


 明らかに動揺しているクルドが扉を蹴り開ける勢いで入ってくる。その姿を見つめつつ手を止めずに話しかけると、息を整えながら聞いてきた。


「あの…石像どもはお前の仕業かよ…!」


「あぁ、そうだな」


 何事かと言いたそうに答え、クルドが色々言いたそうにしていたが、用件を一言にまとめる。


「妙なことをするなら事前に連絡しろ!」


「連絡はしただろうが。ホームパーティーを開くとなると、仕事を気にするやつが居るだろうから、私が仕事の一部を請け負うと。

 あいつらは片手間で作った、雑務用のゴーレムたちだ。仕事の指示は全部やっておいたから、あとは放っておけば勝手に動いてる筈だが」


 何を今更と言いたげに、彼は出来た料理を皿に盛り付ける。説明不足の行動に対して、クルドも何かを言おうとしたが、必要なことは伝えていたため、言葉に詰まってしまう。


「まぁ―ちゃんとした事前説明がなかった、こちらにも非があるな。それは申し訳なかった。

 その詫びとしては何だが―」


 マクスウェルがパチン、と指を鳴らすと―屋敷中に配置していたゴーレムたちの目が光る。


「―今日の雑務は、私に全部任せてもらおうか」


「お前、何を―」


「私がゴーレムに分け与えていた魔力の出力を上げただけだ。元々、全部をやる気はなかったが、まぁいいだろう」


 マクスウェルはそう話して、調理に戻る。


「さて、話はこの辺で終わりでいいか? 昼までに片付けなきゃいけないことだらけだからな」


「…まぁ、お前を信じてやるよ。本当に全部任せていいんだな?」


 クルドの再確認に対して、彼は大きく頷いた。


「任せてくれ」


 きっぱりと言い切った彼を信じ、クルドも部屋を出ていって全体に連絡をすることにした。



「…大見得切って話してたけど、良かったのか?」


 クルドが去ったあと、リラックスして椅子の背もたれにもたれていた料理長が聞くも、マクスウェルはパイ生地を成形しながら答える。


「ん? いやむしろ都合が良かったよ。ここのところ、私の魔力も余り過ぎていて辛かったからな」


「つまりどう言うことだよ」


 当たり前のように答える彼に対して、意味がわからないと言いたそうに答える。そこで思い出したように説明を始めた。


「あぁ、説明してなかったか。私の力は、定期的に放出していないと、逆に毒になる。今回の件は、都合よく力を浪費するチャンスだったんだ。

 今外で動いてる土人形を動かすだけだと、少し消化不良気味だったから、追加で浪費できて逆に助かったという訳だ」


「要は、貯めすぎると体に良くないのと似たようなもんだな?」


 料理長の最低な言い回しに対して、マクスウェルは楽しそうに笑って頷く。


「それと似たようなもんだ。

 それに―お前もしょうもない話ができるんじゃないか」


「いや、お前もそういう話で笑うのが意外だったよ」


 二人は馬鹿げた話に笑いながら、お互いの誤解を解く。


「私も男だからな。いくつになっても、そう言った話は嫌いじゃない」


 そんなバカ話をしながら、二人は楽しそうにやることを済ませていった。

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