七日目 vs機神 後半戦
間違いなく、あの機体は再生しているが、今まで見てきた"再生"のスキルとは別物であると、直感的に理解したマクスウェルは周囲を見渡すと、戦闘の影響で砕けた地面や壁の中に、不自然な抉れ方をしている部分が目についた。
(…成る程。地面や壁を削り取って素材として利用している、と。しかし、あの装甲は土や石を素材としている割には金属質だ。
つまり、奴は削り取った素材を物質を変換しているスキルがある、というわけだな。それならば、重火器を使っていたことも理解が出来る)
周囲の状況と戦闘の内容から、敵のスキルを考察し、彼は機神の姿を視界に収める。
電磁砲の一撃による損傷は修復されているものの、再起動までには少し時間がかかるようで、まだ動く気配はない。
先程電流を流した時も動きが固まっていたことから、恐らく見てくれの修復は早いものの、内面の修復には時間がかかるものも彼は考え、再び電磁砲のチャージを開始する。
「…魔力の制限はこういう時は厄介だな」
なかなか進まないチャージに彼はもどかしそうに呟き、再起動を終え、機神は足のタイヤに加えて、ジェットのようなバッグを背負って、機動力に特化していた。
まずい、と彼が理解したと同時に、背中から炎を吹き出して、巨体が突進してくる。彼もチャージに使っている魔力の一部を身体強化に回し、その動きに対応する。
突進してきた鉄塊を高く宙返りをするように避けて、彼は空中に足場を作ってそれにぶら下がる。
空から見下ろして、動きを観察していたが、機神はこちらを向いたまま、ジェットの角度を変え、ブレーキを掛けながら上昇してくる。
「ちぃっ!」
空中にいる彼を追いかけながら、拘束目的のアームが飛んできて、彼は手を離し、足元に足場を作り直して前に飛んで逃げたが、アームはワイヤーではなく、数多の関節を持ったモノに作り変えられており、それは彼の足を掴んだ。
そのまま引っ張られる前に、巻き戻る腕に向けて、中途半端とはいえ、チャージが済んでいる電磁砲を放ち、腕を破壊して逃げ延びる。
空中に放り出されるも、上手いこと受け身を取り、地面を転がりながら衝撃を殺した彼はすぐに体勢を整え、思考を切り替える。
機神も破壊された腕は気にも留めず、片腕を変形させ、空中からバルカン砲を乱射する。
魔力を防御に集中させ、弾丸を弾きながら彼は足場を作っては飛んで、空を翔ける。弾幕の雨の中、機神の口部が開き、再びミサイル―ではなく、彼の電磁砲と良く似た―高速の弾丸が放たれる。それは彼の防御に直撃し、それを貫通してマクスウェルは爆風の中、墜ちていく。
トドメと言わんばかりに、機神の装甲の至る所が開口し、そこから嵐のようなミサイルの雨が、彼の墜落した地点へと降り注ぐ。
鼓膜が破けそうな爆音と共に、機神が勝利を確信した咆哮を挙げたが―
「墜ちるのはお前だよ」
いつの間にか、機神の首に"転移"していた半裸のマクスウェルが、チャージを終えた電磁砲をその体に向けて、迷いなく引き金を引いた。
悲鳴のような金属音と共に機体は墜落し、それにしがみついていた彼は容赦なく残っていた腕を掴み、もぎ取った。
そして再起動する前に胸の辺りの装甲を引き剥がし、雑に投げ捨てる。そして、恐らくコックピットにいるであろう闘技者を引きずり出そうとした所で、ゴングが鳴った。
『"機神"が完全に破壊され、規定に従ってこの時点で勝者は"天魔"となりました!!
さぁ、勝者に与えられる自由を、彼はどうするのでしょうか!??』
「……、」
ゴングの音で、ずっと意識の外にあった司会の声が聞こえ、勝利を告げる。マクスウェルは全身を破壊された機体を見下ろし―コックピットに居た、紫色の長い髪の色白で細身の20代前半ほどの女性を見下ろしていた。
彼女は何も言わず、その赤い瞳からは抵抗の意思も見受けられない。
喧しい観客席は、この後の暴力を望んでいるように沸いているが、彼としてはこの時点で興が冷めている。
ため息を一つ吐いてから、トドメの拳を振り下ろして彼女を気絶させ、つまらなそうに空を見上げてから通路へ帰っていった。




