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七日目 従者と共に

 部屋を出た途端、小柄な黒ローブ―クルドと出会した。


「時間だ、準備は出来ているな?」


「勿論だ。ところで、私が頼んだことは問題ないな?」


 忘れずに先日頼んだ案内について確認すると、彼は大きなため息と共に眉間を押さえた。


「…引き受けた手前、今更断れないからな。

 こちらとしても扱いが難しい相手だというのにお前という男は…」


 あからさまに嫌そうにしているクルドに対して、マクスウェルは悪そうにクックックと笑う。


「何、私はここに来て日が浅いからな。何が嫌なのかはっきりは分からなくてな」


「そういう所だよ、お前が信用されないのは」


 呆れながらツッコミ、彼は悪びれた様子もなく、笑みを浮かべたまま歩き出す。


「時間が惜しい、歩きなから話そうか。

 先日、お前らが二つ返事で引き受けたのは正直意外だったからな。知らずに引き受けたのではと思っていたが、本当にその通りだったとは」


「…そうだよ、後から聞いて知ったよ。―亡国の貴族様だとはな」


 彼女、シナロアはこの国の軍部に侵略された結果、捕虜として連れてこられた。パラナの従者たちはこの屋敷の中では特に軍部に近く、そのことを知らないとは考えにくい。それを知りながらも、マクスウェルが彼らに案内を頼んだのは、情報のためである。

 間違いなく、彼らはマクスウェルの求める情報を持っている。しかし、彼にすんなり渡してくれるとは思わない。だからこそ、他人を通して、少しでも接近させるのが狙いである。

 そんな狙いは感じさせる素振りは見せないように、彼は普段通りに答える。


「まぁ、よろしく頼むよ。

 お前らなら多少負い目を感じてる分、安全だろうからな」


「…まぁ、少なくとも俺は手を出さねぇよ。何しろ、後ろにお前がいるしな」


「心外だな」


 クルドの言葉に不機嫌そうに彼が鼻を鳴らすが、彼は至極冷静にツッコミを入れる。


「なんかあったらお前に喧嘩売られるみたいな意味じゃねぇよ。下手に絆されたらケツの毛まで毟られかねん」


「正しい判断だ。

 お前から何か引き出すのはなかなか骨が折れそうだな」


「年長者だからな。多少なりともしっかりしてねぇと下の二人に示しがつかねぇんだよ」


 クルドはため息混じりに話し、マクスウェルは笑った。


「なかなか、大変なようで。

 まぁ、私は今後も誘導尋問をさりげなくぶちこむつもりだからな。頑張って耐えてくれ」


「それを本人の前で言うか?」


「それが私だからな」


 マクスウェルは胸を張って言い切り、彼も絶句してため息を吐くしかなかった。




 ―そんな事を言いながら、結局他愛のない会話を続けながら、いつもの転移ポータルの部屋まで辿り着いた。


「じゃあ、行ってくるぞ」


「おう。今日は案内もいらないか?」


「アクレのところでも行ったからな。多分道には迷わん」


 彼の多分、という単語に不安感を覚えたクルドが呆れつつ答えた。


「…、一回戦は問題ないだろうが、二回戦始まる前に一回探しに行ってやる」


「助かる」


 嬉しそうにマクスウェルは手を挙げて、部屋に入ろうとしたところで、一つ思い出したことを聞いた。


「ところで、パラナには話していたんだが、今回私に賭けるのはやめておけよ?」


「自信がないのか? お前が?」


 若干煽るように聞いてきたクルドに対して、彼はしれっと答える。


「いや、今回は上手い所で負けられるなら負けておこうと思ってな」


「いやなんでだよ」


 至極真っ当なツッコミに、マクスウェルはいたずらっぽく笑う。


「毎回同じやつが勝つのは面白くないだろう?」


「だからって、わざと負けるのはリスクがでか過ぎるだろ」


「まぁ、それは"人食い"とか、赤の天使"みたいな気狂いが相手のときだろう? うまいことほぼ相討ちに近い形で負けることができれば命の保証は出来るからな。

 私が求めるのはそういう相手だ」


 言っていることに理解は出来るが、納得はいかないクルドは何か反論しようとしたが、諦めたように首を横に振った。


「何にせよ、死ぬなよ」


「勿論だ。激励、感謝する」


 マクスウェルは笑いながらそう言って、扉を開けて部屋に入っていった。

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