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辻斬りミヤビは配信者!  作者: 冬の雨
3/3

1話 始まりの声

高校生初日。

購入した制服に身を包み髪をゴムで一つに束ねる。

持ち物は筆記用具とノート、ファイルあたりを持っていけば問題ないだろう。

あぁ、後は体育館用の靴も入れておくか…


「えーと電車は 6:50 間に合うか…」


家から最寄駅までの距離が1kmくらいあるから走って2分ぐらいかかる。

信号や駅についてから階段登ったりもするから実質5分くらいか。


雅は家の鍵をかけて走る。

彼女の1km走最高記録は2分ジャスト。

100m12秒ペース、オリンピックに出れば間違いなく記録を大幅に更新して優勝するレベルだ。


すれ違った人たちは全員等しく二度見し、余りの速さに絶句していた。


「よし、間に合った。」


電車の中に入り、座席の端のほうに座った。




残業の毎日、今日も私は会社に向かう。

定時は10時のはずなのに…

深夜0時まで残って仕事をして…


聞き慣れた電車が発信する音=仕事の始まりみたいな感じで苦しい。

大学を卒業してから一年目、会社に入り働き始めたが、こんなにキツイとは思わなかった。


正直眠たい…

今日も仕事かぁ…

学生はいいなぁ、なんて考えながら。


あの子可愛すぎない…?

一番端の方にいる綺麗な白髪の子。

目が合った気がする。

綺麗なエメラルドグリーンの瞳がはっきりと見えた。


百年に一人の美少女と言っても過言ではないほど、素顔は整っていて、色白でスタイルも良い。

姿勢の良さが更に際立たせている。


現実にこんな子がいるんだなぁ…

きっと同じことを考えているのは私だけじゃないはずだ。





すごい視線を感じる。

寝癖は鏡で確認しているから無いだろうし、服装が変なのだろうか。


殺気とかじゃ無い分むず痒い…

これからは自転車で通勤しようと心に決めた。








◆◇









「中学校とは規模が違うな。」


私立の学校だからなのか高校が本来これくらいの大きいのか定かでは無いが、


新入生案内はえーと…


辺りを見回すとそれらしい看板が目につく。

既に組分けされてるのか、1〜6組までの看板が掲げられていた。


楓ヶ浦、楓ヶ浦…

カ行だから順番的には早いはず。

結果的には4組の4番だった。


校舎に入り下駄箱に靴を入れ上履きに履き替える。

1-4は1階の端の方だったかな…

校内地図を見た感じあってそうだ。


クラスまでたどり着いて扉を開けるが、まだ誰もいなかった。


「自分の席はここかな?」


楓ヶ浦 都姫。


「漢字間違えられてる…」


後で報告しておこう。


木の香りがする。

この学校は三年前に建てられたばかりで、凄腕の一級建築士が設計したと聞いた。


なんというか既存にとらわれないクリエイティブな学校だなとは思っているが、正直迷いそうだ。


そしてこの学校は世界に少数しかないダンジョン攻略科が存在する。

当時ダンジョンが出現した時は凄まじい話題を呼び、沢山の犠牲者も出た。


だから今後学校ではダンジョンについて教える場所も増えてきているが、ここは世界でも数少ない、敷地内にダンジョンがある学校なのだ。


ダンジョン内ではモンスターというものが出る。

科学では説明ができない魔法やスキルなどの存在。


そんな超常的な力を扱えるようになった人たちを、異邦の者や覚醒者、超越者などなど、色々な呼称で呼ばれているが、最近では探索者と呼ばれるのが主流である。


世界は変わり果てた。


五年前、今では世界大災害と称されるソレは唐突に始まった、何の前触れもなく。

主要都市は勿論のこと辺鄙な地域にまで様々に、ダンジョンは姿を現した。


個の時代の到来というべきか。

ダンジョンの出現により弱者が浮き彫りになった。


多様性という言葉が、廃れた。


病気持ち、家庭環境がめちゃくちゃ。

そんな言い訳をしている間に、強者はさらなるステップアップを始めた。


本来当たり前であった弱肉強食。

一時期は多様性や平等という言葉と共に終えたと思われたが、ダンジョンが出現してからはまさしく弱者と強者の差が出てきた。


強ければお金が稼げるから。


人間本来の強さが磨かれる個の時代。

恩恵を受けたいのならば努力しなければならない。


環境が悪い。才能がない。

そんな言葉は弱者の囀りでしかない。

本来淘汰されるべき人間が、強者達の恩恵によって生かされているだけに過ぎない。


ただ、彼らにとっては認め難い事実だ。

諦めて、停滞していった彼らに残ったものは、なけなしのプライドと嫉妬のみ。


だが、どうしても思ってしまう。


「勿体無い。」


諦めたらずっと苦しいだろう。

永遠にも等しい辛さを感じていることだろう。

なら、少しの苦痛で幸せを送れば良い。

簡単な話ではないことは重々承知している。


そんな彼らに気が付かせてやりたい。

勿体無いって。

まあ最後は自身が決断を委ねなければ変わらない。




ガラガラ!

教室の扉が開く音がした。


「おわ!めっちゃ美少女やんか!」

「第一声がそれってあんた、イカれてない?」

「あたっ…叩かなくても良いじゃん、」


二人組の女子が入ってくる。


「これからよろしく。」

「よろしくねー!それにしてもすっごい綺麗やなぁ、肌のきめ細やかさとか、瞳の色とか、髪とか!彼氏とかおるん?」


まるで距離を感じさせない二人に、主に一人だけだがすっごい詰め寄ってくる。

なんだろうこの感じ、


「煩わしい…?」

「あのー、それ普通に傷つくんだけど…」


あ、口に出てた。


「事実だから良いでしょ。あ、名前言ってなかったわね、私は水上みなかみ 理央りお。こっちの馬鹿が江川えがわ 風夏ふうか。」

「あ!バカって言ったな?バカって言った方がバカなんですー!」


仲がいいな。

自分にはそういう友がいない。

別にいらない、なんてただの強がりだ。


友好を持つっていうこと自体が苦手なんだ。

自分は異端側だからな。


「君の名前は?」


風夏が自分に向けてそう言った。

一瞬で虜になるほどの美しい声色。

先ほどまでの造作と態度と言動が台無しにしていたが、その全てが今では霞んだ。


「自分は、かえでがうら みやび。これから三年間よろしく。」


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