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十六話 修行?

 目の前に真っ黒い角をした男が立っていた。

 男の周りには数十発の真っ赤かな炎の球体と数発の青い球があった。


「シールド」


 俺はシルトで大盾を作って構えた。


 審判役の男が腕を振り下ろした。


 瞬間。炎の雨が降り注いだ。

 盾で防ぎつつ、相手の強さを見極める。


 ――これならいけるな。


「フルアタック」


 剣を二つと肘に二つ。足をスパイク状の針を出した。


 そして、跳んだ。


「ッ!! いつの間に!」

「終わりだ」


 俺は背後から剣を軽く当てた。


「勝負あり」


 歓声が上がった。


「黒角の魔族を一瞬でやりやがった」

「あいつ人間だろ?」

ええ! あんなん人間じゃねえよ」

「あいつの師匠って確か……」


 こうなるまで一週間ほど時間を遡る。


 ――――


 俺はネフィーの紹介で来た俺の師匠は白髪の老人だった。


 ただ、一目で只者じゃない感じはしていた。


「ケント殿ですな。私はゲルバルドこれからよろしく頼む」

「こちらこそ、お願いします」


 自然に敬語が出ていた。無差別に使う敬語じゃなくて本当に心から尊敬が出た。

 俺でも何を言っているか分からなくなってしまっているが、この人は凄い威厳のある魔族だ。


「まずは今の力を見せて欲しい。武器は好きな物を使いなさい」

「殺傷能力のあるものでもいいですか?」

「勿論だとも。私は訓練用の刃の無い剣を使います。殺す気で来なさい」


 一応、刀も持っていくことにしたが、シルトしか使わないことにした。

 命がけの戦いならまだしも、元の世界で平和に暮らしていた俺には他人を切れる勇気はない。


「それでは参りましょうか」


 リンネと合流する前なのは少し気掛かりだが、訓練を優先させた。


 訓練場には誰もいなかった。昨日の襲撃で大半が倒されていたというし、今日は誰もいないのは仕方がない。


「たった数人に魔族の精鋭たちが倒されたことは由々しき事態です。私がいれば多少の戦力になれたのにと悔やむばかりです。そんな、退役した老いぼれにもやれることはあるはずです。どうぞ、あらゆる手を。可能性をお見せください」


 片手で剣を構えて来た。


 素人でも分かる。熟練されたものがかもし出す危険は領域が可視化されている。


「行きます!」


 ――――――


 負けた。手も足も出なかった。


 シルトを使った変幻自在へんげんじざいな攻撃も対応され、全て躱され、はじかれた。

 盾で面積を増やして押し込んでも、次の瞬間には地面に叩きつけられていた。


 剣術。多分、それもあるが一番の敗因は行動パターンの多様さだ。


 俺は戦闘の中で相手に慣れることでこれまでの強敵たちと戦って来た。

 だが、ゲルバルドさんはランダムに行動パターン。戦い方が変化していた。


 一人を相手にしている気分じゃなかった。


 何度も立ち向かったが、全てに対応された。最後の方ではシルトのガードすら張れずに剣を受けてしまった。


 手加減をされていたお陰で痛くはないが、倒される度に実力不足を痛感させられた。


「これぐらいでいいでしょう」

「ありがとうございます」

「見込みはありますな」


 徹底的に負かされたのにも関わらず、褒められた。

 認められているようで少し嬉しかった。


「ケント殿の戦闘方法は、その不思議な武器であって腰に差している武器ではないのですね」

「はい。人を切る勇気がないので」

「自覚があるのなら私からは何も言えませんな。では、別の観点から指導をしましょう」


 刀は一応貰ったがあまり使う機会はなさそうだ。あの瞬間移動する能力は俺には使えないみたいだし、ただのコレクションになってしまうかもしれないな。


「まず、自由自在に攻撃するのは止めた方がよろしいでしょうな」

「自由に攻撃しない方がいいってことですか?」

「いや、少し違いますな。戦いの形態を固定したほうがよろしいという事ですぞ」


 なるほど、俺は盾を構えたり、刃物を出したりと無定すぎた。

 相手を混乱させるためには有効だったが、相当な実力者が相手になるとすぐに対応されてしまう。


 あの弓矢使いに剣で負けていたのを思い出した。


 それに俺が成長する上で戦闘スタイルの固定は必須か。

 ある程度の決まった型を伸ばしていく方法は効率的だ。


 無定は実践でのセンスを求められる。

 無限に成長出来る天才ならまだしも、凡人である俺にはこの戦い方では修行をしていれば、すぐに成長の壁や限界がくる。


「ケント殿には、これから攻撃と防御を別々にした戦い方をして貰います」

「分かりました。シールド」


 俺は盾を構えた。


 その日はひたすら手合わせをすることで徐々に戦闘の感覚を掴んで行った。

 限界まで動き続けた。俺がこんなに動いてへとへとなのに一日中相手をしていたゲルバルドさんは汗一つかいていなかった。


 一日で戦闘スタイルを二つ確立した


 『シールド』。大盾一枚で防御に特化した状態。半透明なシルトで相手の動きを見つつ、真正面から受けるか流すかを決めることが出来る。


 『フルアタック』。両手に剣を持ち、肘にも刃物を生やす機動力と攻撃に特化した状態。防御を捨てる代わりに手数を増やした。


 あえて盾と剣を持つ中間のスタイルは作らなかった。

 なりふり構わず攻撃をする無定を最終手段にするために、どんな強敵でも隙を付けるように相手に分かりやすい両極端なスタイルにした。


 いつか、俺の行動を分析してくる奴がいるかもしれない。型を絞ればそれだけを警戒してくれるかもしれない。


 あと、俺自身が防御か攻撃に集中した方がそれぞれやる気が湧くからというどうしようもない理由がある。


 夜は筋肉痛に悩まされたが、着実に強くなっている実感が湧いた。


 ――――――


 二日目。


「今日からは特別な訓練をして貰いますぞ」

「特別……ですか?」

「辛いですが、その分。成長は見込めるとおもいますぞ」


 昨日の訓練も限界までやってのに更に辛い練習か……

 元の世界だったら嫌々やっていたかもしれないが、今はそう言っていられない。強くならなきゃ死んでしまう。


 どんな訓練かは分からないが、ここは覚悟を決めるしかない。


「では、まず外に出ましょう。魔王様から許可は得ております」


 ――――――


「にーちゃん。角ねえじゃん」

「人間みたーい」

「こらこら、そんなに頭を触るなって」


 教会っぽい場所で俺は幼稚園児か小学生低学年ほどの子供に囲まれていた。


 この教会は孤児院を兼ねていて、小さい子供が数十人いる。

 俺は角が折れた魔族ということでこの子供たちの面倒を見ることになった。


 俺はゲルバルトさんの方を見た。

 彼は優しい目で子供たちを見ている。


 これのどこが修行なのだろうか? 


 疑問は残るが、一日中戦い続けてあの人の凄さは分かっている。きっとこれも何かの修行の一環なのだろう。


 ただ、ほとんどの子たちがいい子だ。人懐っこいし好奇心がある。

 頭こそ触って来るが、悪意や暴力性がある訳ではない。


 こんな子ばっかりで親の理不尽な文句がなければ、保育士になってみたいなと思わせるほど楽だ。


「にーちゃんの得意魔法ってなにー?」

「特殊な魔法だから、属性は分からない」

「みせてーみせてー」


 シルトを手から出して、いろんな形をいじってみせた。

 鳥とかリンゴみたいな身近にある物を造形した。


「すごーい。もっとみせて!」

「よーく見とけよ」


 手の上に大雑把でデフォルメした人型の人形を作り、踊らせてみた。


 子供たちはそれを楽しそうに見ていた。

 ただ、こうやって精密なコントロールを要求されることをしていると体力の消耗が早かった。


「はい。おしまい。お兄ちゃん。ちょっと疲れた」

「えー。もっとみたいよー」

「もういっかいやってよー」

「お人形さんのがいい!」

「いや、あの()()()()()鳥だろ」

「いやーだー。()()()()のがいいー!」


 なんか、鳥のやつが見たいか人形のやつがみたいかでめ始めた。


 流石に両方を同時にやるのは無理だ。俺の脳みそはそんなに高性能じゃない。


「こんな役に立たないものでよくそんな言い合えるな」

「コウくん……」


 周りが一気に静かになった。


 この教会にいる子は一部を除けばいい子が多い。

 だが、数人その輪に入れていない子たちがいた。


 教会の端っこにいる子もいるし、俺の事を敵視しているガキ大将とその取り巻きみたいな奴らもいる。


 そのガキ大将がこのコウと呼ばれた男の子だ。

 身長は他の子より少し高いのが特徴だ。


 正直、悪ガキな奴らとはあんまり関わりたくなかった。

 別に俺は更生させろとか言われていないし、こういった連中は子供でも関わるだけ損だと思っていた。


 さて、こう暗くなってしまった空気をどうするか。


「ちょっと大きなやつ見せてやるよ! しっかり見とけよ」


 俺はシルトを大量に出して、像を作った。


 さっきみたいに喧嘩が起こらない様に、可愛い系とかっこいい系の両方を作る。


 可愛い系は手足を短くした見た事のありそうなずんぐりむっくりな体を持った人形。

 かっこいい系は鳥から派生してグリフォンを作った。


 作っただけで疲労感が凄いことになっているが、ここで終わりにしない。


 ――同時操作。


「おおー! すげえ!」

「かわいいー」


 さっきまで言い争っていた二人が動く像を見て喜んでいる。


 他の子もわいわい騒いでいる。


「コウくん、あれすげえよ。大きいし強そうだぜ」

「俺もあれ見たい!」


 コウの周りにいた取り巻きも像を目を輝かせて見ている。


「チッ。みんな楽しそうにしやがって……あいつが目に入らないのかよ」


 コウが一人で去って行った。

 最後は小声であったが強い思いが入っていた。


「もう、無理。限界」


 俺は像を崩した。


「えー。もっと見せてよ!」

「一回、休む。あれ、見た目以上に疲れるから。ほら、ちっちゃいのは置いて行くから」


 シルトで作った物がどれだけ形を維持できるか分からないが、さっき作ったものを量産し置いて行った。


 子供たちが別の物に意識が向いている隙をついて、俺は教会の端っこに座っている子の所に行った。


 この子をどうにかすれば、あのコウという悪ガキも何か変わるかもしれない。



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