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十一話 なんだこいつら

 元の世界にいる妹の恵と似ている見た目と雰囲気をしている魔王の前にしている。


 姿が分からなかった時は怖さが先行していたが、今では親しみやすさの方が上回っている。


「おい! なぜ許可もなく近づく!?」

「だってさ。話すのにこんな距離あると面倒じゃん」

「我を恐れぬと言うのか」

「そっちの心配をするのか」


 もっと、攻撃されたらどうしようとか考えないのだろうか? 俺は異界から来た人間だ。魔王を暗殺する可能性もゼロとは言いきれない。

 当然、そんなことはする気もないがちょっとしたことに気づけない所とか本当にそっくりだ。


 ただ、俺が何をしようともこの魔王を殺せる気はしないし本当に気にすることでもないのかもしれないが。


「ち、近いぞ!」

「まあ、こんぐらいすぐ慣れるだろ。魔王なんだしさ」

「報告とは違って無遠慮みたいだな」


 おお、俺、遠慮のあるみたいな性格って報告されてみたいだ。多分、リンネが言ったと思うが結構いい事を言ってくれていたみたいだ。


「んで、俺に会いたいってどんな用があるんだ?」

「こほん。そうだった。リンネについて話しがある」

「異世界から来た俺の事じゃないのか」

「焦るな。そのことはまた後で話す」


 先に異世界に関する事よりもリンネの事を話すという事はそれほど大事なんだろう。


「リンネ。いや、魔神の生まれ変わりと言った方が実感は湧くな。力が全てな魔族にとって奴は崇拝の対象にも成りえる。そんな……」

「ちょっとストップストップ。リンネは最下級の魔族って言っていたぞ」

「そう、それが問題なのだ」


 リンネは俺と戦った後に自分が最下級魔族って言っていた。だから、こんな化け物レベルの相手が更に大量にいる魔王軍には俺は勝てないと思った。


 だが、魔王は魔神の生まれ変わりとか言っている。


 一番可能性があるのはリンネが無自覚であの力を使っているというパターンだ。だが、実際生きていて自分の身体能力は嫌でも他人との差は分かる気もする。

 特に剣と魔法の世界ではそんなの訓練で分かるだろう。


「我が座っているこの玉座は魔族で最も強い者が座ることになっている。無論、リンネを除けば仮に魔族全員が相手になろうとも我は勝てる」

「すげえな」

「当然だ。我は天使憑きと悪魔憑きの両方であるからな」


 どや顔をしているが、実際凄い事だ。

 っていうか、自慢の仕方も本当に妹の恵に似ている。


 天使憑きとか悪魔憑きはリンネも戦っている時に言っていた。

 大方、あの背中の羽が関係しているのだろうが今はそのことは主題じゃない。


「それで、リンネはなんでその力に無自覚なんだ?」

「お前もここに来るまでに見たと思うが、魔族は圧倒的に実力差がある場合は無条件に降伏する場合がある。それがあれだ」

「あのひざまずいてたやつか」

「そうだ。そもそも誰もリンネとは戦いたがらない。幼少期の時からそうらしい。そのせいで他人と力を比べるという感覚に疎すぎる」


 足の速さとか力強さだけだったら見たらある程度は分かったりするが、こと戦闘においてはそうはいかないらしい。

 まあ、柔道とか空手の強さとか外から見ただけじゃあよく分からないし当然か。


「でも、軽い手合わせは出来るんじゃないか?」

「そんなことはもう試した。リンネは手加減して貰っているとしか思っていなかった」

「無自覚系だな。所で、今更なんだがなんでそんなにリンネに強さを自覚させようとしているんだ? 別にお前が玉座に座っておけばいいじゃないか。強いんだろ?」

「お前じゃない! ヴィアイスだ。特別にヴィアと呼ぶ権利をやる。感謝するんだな」


 それを言ったら俺もお前としか言われていないのだが。ちょっと納得がいかない。


「じゃあ、俺もお前じゃなくて里川健人だ。健人でいい」

「我に指図するつもりか? 捕虜の分際で……」

「捕虜じゃない。って言いたいけど、俺捕虜なの?」


 無言で水っぽい魔法が飛んで来た。


 怒ったらすぐに暴力に訴え掛けて来る所とかも本当に恵の奴に似ている。


 腕から出したシルトを硬化させ、魔法を受け流した。

 とてつもない威力だが、直撃さえしなければ大して怖くはない。


「これで不問にしてやる。次はないと思え」

「はいはい」

「リンネが認めているというのは本当みたいだな」

「魔法とかは使えないけどな。ヴィアは使えるんだよな」

「当然だ」


 そう言って、機嫌を良くしたヴィアは立ち上がって、複数の球体を出現させた。


「火。水。風。土。闇。光。聖。邪。それぞれの複合魔法も使えるぞ!」

「おお、聖と邪は初めて見る。凄いな!」

「そうだろう。そうだろう。何だって我は魔王だぞ」


 球体がグニグニ動いて色を変えたりしている。


「さらにここから、遠くの町まで届く超遠距離魔法も使えるぞ」

「おお、リンネも使っていたやつか」

「あっ。そういえばリンネの話だったな……もうよい。我はもっとお前。ケントに魔法を見せてやりやい気になった。表に出ろ」


 話が脱線しすぎて、別のレールに入ってしまった。


 まあ、リンネことはまた別の時に聞くか。


 魔法については無知だし、魔王の魔法を安全に見られる機会はそうそうないだろう。


 そういうことで俺たちは外に出て行った。

 外ではリンネが待っていてくれていた。


「ケント。大丈夫だった?」

「ああ、一回魔法を撃たれたけどなんやかんやあって魔法を見せて貰う事になった」

「えっ。魔王様の攻撃に耐えられたの!?」

「いや、あっちも手加減してくれていたしガードもしたしな」


 リンネが心配してくれたことは嬉しい。

 だが、ヴィアの攻撃はそこまでの事では無かった。


「リンネも来い。我の力の一端を見せてやろう」

「ありがとうございます」


 リンネも合流し、俺たちは訓練場らしき広い場所に着いた。


「まずは火属性。普通の者は赤い火までしか出せぬが、一部のやからは青い炎を出すことが出来る」


 そう言いながらヴィアは魔法で出した赤い炎を青く変色させた。そこそこ離れているはずなのに熱気が伝わって来る。


「そして我になれば、更に上の光り輝く原始の炎を出せる」

「ッ! シルト!」


 身の危険を感じ、ほぼすべてのシルトを使って壁を作った。

 その炎は遮蔽しゃへいしたのにも関わらず、体を焼いてくる。


 数秒で光が消えた。


 俺が守っていた場所以外は地面が溶けていた。俺のシルトも半分ぐらいが溶かされていた。

 ただ、俺もリンネもダメージはほとんどない。


 ヴィアの方は一体何か悪い事でもしましたか? みたいな顔をしている。


 ああ、ムカついて来た。


 俺はヴィアに無言で近づき、軽くチョップをした。


「何をする!」

「危ないだろーが。俺、魔法初心者なの。ヴィアの魔法は()()。凄いけど、死んだらそんな事も言えねえじゃねえか!」


 あの豆粒程度の炎でここまで破壊力があるのは称賛するしかない。


 ただ魔法を見せて貰っていた俺が怒るのは筋違いなのかもしれない。つい感情的になってしまった。だが、反省は一切していない。


「ごめん……なさい」

「謝らなくていい。俺が弱いだけだから。次は配慮してくれると嬉しい」


 別に謝罪を求めている訳じゃない。ただの八つ当たりだ。

 よく妹の恵にも言った事だが、致命傷じゃない限りは俺の不注意や実力不足がいけないだけだ。


「次は水の魔法を……」


 その時、ヴィアの体にフラフープ様な輪が現れた。


 魔法の一部かと思ったが、その輪はいきなり縮まった。


「何だ! これは我の魔法では……」

「お、お、お座り!」


 どこかから女の声が聞こえた瞬間、ヴィアが足を折り曲げて座った。


「誰だ!? 貴様!」

「わ、わ、私は。し、しがないお人形」


 音のする方に立っていたのはゴスロリファッションのおどおどした女だった。角は生えていないという事は人間だろう。


「こいつだけじゃないみたいだな。人間も魔族も両方いやがる」

「ケント。どうする? 魔王様が……」


 男が三人と女が二人。どいつもこいつも只者ただものじゃない貫禄をしてやがる。

 魔王のヴィアの行動は制限されてしまったが、目的も分からない敵に一体どうやって戦うか。



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