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8 初見殺しの問い

「……お嬢!? スカイ様!」


「はっ!」


 乳母姉の声で、私は我に返った。サラセニアちゃんも、ブレーキを踏んだまま、心配そうにこちらを見ている。


「突然の急ブレーキ、申し訳ありません。お怪我はありませんか?」


「いえ、大丈夫。大丈夫だから……」


 そう言いつつも、私は慎重にサラセニアちゃんを見た。


 彼女は心配そうにしつつ、引き続き、こちらを品定めする様に見ている。


 それもそうか、と私は思う。


 実を言うと、彼女こそ、この物語のキーマンの1人であり、本来、スカイに『ざまぁ』される1人なのだ。


 物語は、スカイがラヴメニクロス王国の第2王子、ウィンの元に嫁入りしてきた時から始まるが、まさに結婚式のその晩、彼女は彼に「君を愛する事は無い」と拒絶されてしまう。


 そして、ウィンが代わりに向かった先こそ、彼女、サラセニアの元なのである。


 今でこそ、メイドの恰好をしているが、実は彼女はウィンの、この時点での(・・・・・・)正室である。


 スカイが嫁いできた時点で、なんと既にウィンは3人の妻を持っていた。だが少なくとも、この時点では彼女らは全員現状に満足していた。


 ローク王国はどうせ格下国家の第2王子、と、ろくに下調べもしないままスカイを押し付ける形で、そこに半ば強制的に婚姻を決めてしまっていたのである。彼らからしたら、突然入って来たスカイ(異物)に警戒するのは、ある意味当然である。


 特にそれにともない、正室から側室に格下げされたサラセニアは面白くなかろう。


 どちらかというと、これはローク側の落ち度で、突然大国に無理矢理押し付けられた嫁を、ウィンが拒絶する気持ちも仕方ない面はある。だが、その事で、スカイは恥をかかされた事で、彼らのコミュニティ(ハーレム)を恨み、それが溝になってしまう。


 この時、もう少し双方冷静になって、一度話し合っていれば、この後まで拗れる事は無かったのだが、そもそもすれ違いと、話し合いの不足が悲劇を招くシナリオなのだから救いようがない。


「?」


 私にじろじろ見られている事に、少し警戒するサラセニアちゃん。


 見れば見るほど、私が画像生成AIを用いて作ったイメージイラストそのままの外見である。


 そして、現在は物語中の重要なポイントの1つだ。『原作』においては、本来は過去回想の場面である。


 彼女は今、メイドの恰好をしているが、実はというと、新たにラヴメニクロスに、そして、ウィンの元に来たスカイの器量を確かめに来ているのだ。


 そして、聞いた。まさに今の様に、「私の夫もハーレム作っていましてね。私含めて現時点で三股かけてるんですがどう思います?」と。


 彼女が、ハーレム……遠回しに、この国の文化と自分達のコミュニティに、どの様な印象を持っているかを確かめる為に。


 サラセニアちゃんは、自身の所属するハーレム(コミュニティ)に対し、一等、強い執着を持っている。という設定だ。ウィンや他の2人に対して、異常ともいえる愛情を持ち、それを貶められるのを酷く嫌う。


 という相手に、『原作』の私は、かなり強い口調で、それを否定した。


「三股かけるなんて男として最低」


「大体、貴女も貴女。なんでその状況を受け入れているの?」


「離婚をオススメする」


 と。その言葉のことごとくが、彼女を怒らせるには十分だった。スカイもスカイで、好色な父のせいで苦労しているせいで、そんな事を言ったのだが、まさかそれが特大級の核地雷(ブルーピーコック)だったとは思ってもいなかった。


 かくして、彼女は激怒し、無事敵認定される事になり、それが他の登場人物との軋轢にもつながるのだが、三股を批判したら好感度が最悪になるとか、分かるかこんなもん……。


 とはいえ、彼女の問いには、落ち着いて答えなければならない。間違ってもラヴメニクロスの文化や彼女の価値観を否定してはいけない。否定から入らないのは、異文化コミュニケーションの基本だ。


 私は言葉を選びつつ、口を開いた。


恐怖!自分とこのハーレムに異常な執着をする正室!


他人とコミュニケーションとる上で、相手の価値観否定しないのは実際大事。今回のは初見殺しが過ぎますが。


コメント、評価、ブックマーク、よろしくお願いいたします。



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