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4 付き人

「よし、ではサイウン。お前はスカイ様の付き人として、ラブメニクロスについて行け」


「えっ?!」


 突然の母からの命令に、サイウンはすこし面食らった様だ。


「私が、ですか?」


「ああ。普通嫁ぐ姫君には従者がついていくもんだ。彼女を守ってやれよ。それに、サイウン自身にとっても他国での生活は、良い経験になるだろう」


 シウンさんにそう言われ、サイウンは、じっ、と私の方を見る。


「私は構わないですが、お嬢は良いですか? 私がついて行っても」


「そうしてくれれば助かるわ。他国で1人きりじゃ、色々不安だわ。でも、しばらくこの国には帰って来れなくなるわよ。それに……ラブメニクロスの事、さっき色々言ってたし、嫌なら無理強いはしないわよ?」


 私の言葉に彼女は、むむむ、と一言言うと。私の前にかしずいた。


「とはいえ、親友兼妹分を1人で他国に放り出すのも気がかりです。何なりとお申し付けください」


「……感謝するわ。ありがとうね」


「恩賞、弾んでくださいね?」


「ちゃっかりしてるわ! 流石私の乳母姉」


 私が笑うと、つられて、サイウンも笑った。彼女が居れば、幾らか心細さも和らぐ。


「そうと決まれば、早速嫁入りの準備をしないとね! 娘達の前で、いつまでもうじうじしてられないわ」


 母上も、私達の様子を見て少し安心した様だ。気合を入れる様に、自分の頬を軽く叩いた。


「お手伝いする。貴族の他国への嫁入りのやり方は、我が家の記録を見れば分かるでしょう。ラブメニクロスに嫁いだ人が我が伯爵家にいるかは分かりませんが、まぁ、そこまで変わる事はないだろう」


 シウンさんも、自分の娘の事の様に、気合を入れている。居ても居なくとも変わらない第88王女だが、こうして暖かい人達に囲まれて、幸せだと思った。


「では、お嬢。我々も準備をはじめましょう。やる事は沢山あります。とりあえず、ラブメニクロス語の習得と、かの国の歴史と文化の勉強。あと、文化的、思想的、宗教的にタブーな事を貴女の脳内に叩き込みます。特に国の代表として行くのだから、言語と歴史とタブーに関する勉強を重点的にします」


「え、まず勉強からするの? ウェディングドレスを選ぶとかしたいわ」


「郷に入っては郷に従え、ですよ。こういう婚姻では相手の事を知る事が重要です。知らずに、向こうの人の地雷を踏みたくないでしょ?」


「……言われてみれば、それもそうね。逆の立場だったら……仮に、私が男で、他国から来た初対面のお嫁さんが、無神経な事を言いまくったり、伝統的で大切なものを引っ掻き回されたら印象最悪だもの」


「さすがお嬢。理解が早くて助かります。大丈夫、資料になる本なら我が家にあるでしょう。一緒に勉強していきましょう」


「歴史の勉強は好きよ。過去と比較して、自分が、いかに恵まれた時代と場所に生きているかが実感出来る」


「そう言ってくれると、こちらも教え甲斐があります」


 彼女はウインクを1つすると、微笑んだ。彼女は本当に笑顔が眩しい。女でもドキリとさせられるほどだ。仮に私が男に生まれていれば、とっくのとうに押し倒して、関係を結んでいただろう。


「式までに……慣習通りなら、準備やら移動やらで半年くらいかかる。サイウン、命令だ。それまでに、お嬢を、ラブメニクロスに嫁いでも問題無い様に仕上げてみせな」


「はい母上。ラブメニクロスの連中に、ローク王国の姫君は只ものでは無いと思わせて見せましょう!」


 サイウンはやる気になっている。これは、しばらくみっちりと勉強漬けにされるだろう。別に勉強は嫌いでは無いが、少し大変な事になりそうだ。

サイウン姉マジ忠臣。ちなみに名前は旧日本海軍の偵察機「彩雲」から。


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