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38 手がかり(旦那視点)

 ウィンが目覚めた時、すでにスカイの姿は無かった。確か、拳銃を抜いた所で、ローブの女から妙な攻撃を食らって……。


 そこまで思い出した所で、最愛の妻達から彼は抱きつかれた。


「ウィン! 良かった! 意識が戻って!」


「心配したんだからね!」


 サラセニアとネペンテスから両脇から抱きつかれ、ウィンは満更では無かったが、まずは状況確認だ。


「……どのくらい、眠っていました? 王女様は? 核はまだ放たれていませんね?」


「眠っていたのは、ほんの10分くらいよ。昏倒してたけど、私の回復魔法で回復したわ。……王女様は、あのローブ女に」


「攫われた?」


 うなずくサラセニアに、ウィンは小声で、困った、と呟く。ただでさえ、核攻撃の件で頭がいっぱいいっぱいなのに、スカイの突然の誘拐。動揺するなというのが無理だ。 


「あの魔法陣、確か転移魔法の1種かと。魔法陣を2つ描いて両者を魔法で繋ぐ事で、内部のものを一方の魔法陣からもう一方の魔法陣に送る事が出来ます」


 サイウンは主が攫われた事に、げっそりとしながら言った。冷静ではあるが、心配しているのが見て取れる。 


「いや、転移魔法陣にしては、かなり特殊な書き方をしていた様な……」 


「特殊な書き方? クラリア、何か心当たりでも?」


「うーん……あの魔法陣、どこかで見た事がある様な。そうだ! 前に買ったオカルト本に書いてあったやつとそっくりだぁ!」


「オカルト本?」


 ウトリクラリアが思い出した事に、ウィンは意外そうな顔をする。オカルト本に載っている魔法陣とは一体……?


「少し待ってて、私の部屋に置いてあるから、すぐに取ってくる! 何か参考になるかも」 


 ウトリクラリアはそう言って、席を立った。代わりに口を開いたのは、ネペンテスである。  


「ねえさまの攫われた先、私なら分かるわよ」


「何か心当たりでも?」


「咄嗟にねえさまに、私の母様の形見の指輪を渡したの。これには実は隠された機能があってね」


「隠された機能。初耳ですね」


 嬉々としながら、ネペンテスは続けた。


「うちの父様、武器商人だけあって猜疑心が強くてね。母様、美人だったから浮気されやしないかって、不信感をこじらせて、ある日、母様に指輪を送ったの。それがアレね。一見、普通の指輪だけど、こっちの父様の指輪とリンクしてて、魔力を込めると位置が分かる様に出来てるのよ」


「さらっと、プライバシー侵害の恐ろしい機能が明かされましたが……つまり、王女様が指輪をつけていれば、現在位置が分かるって事ですね」 


「そういう事!」


「流石私の妹分。見事な機転ね!」 


「良くやりました。勲章ものですよ!」


「ふふ。もっと褒めてくれて良いわ。私は褒めて伸びるタイプだからね!」


 そう言うと、ネペンテスは早速指輪に魔力を込めた。 


「……」


「どうです? 何か見えました?」


「これは……?」


 ネペンテスは、先程のドヤ顔とは打って変わる様に、困惑の表情を浮かべた。


「探知は出来た。出来たけど……」


「出来たけど?」


「ねえさま、この世界には(・・・・・・)いない。いや、生きてはいるけど、別の異世界にいる、とでもいうのかな。妙な反応を示してる」


 ウィン、サラセニア、サイウンの3人は困惑した。もちろん、当のネペンテスも混乱している。


「別の世界にって……よくあるファンタジー小説みたいに異世界に飛ばされてしまった、とでもいうんですか?」


「そういう反応をしてるわね、これ」


「お嬢、異世界に生きていた前世の記憶が……とか言っていましたし、あの敵軍も異世界から来てるって事ですし、あり得るのでは?」


「それにしても……ねぇ。それに、異世界に飛ばされてしまったというのなら、こちらから救助隊を出す……というのも難しい。どうしたものか」


 ウィンは少し考え込んでしまった。主がいなくなり、涙目になっているサイウンを見ると心が痛むし、助けに行きたいのは山々だが、正直手詰まりだった。


 そんな中である、扉が勢い良く開いたのは。入ってきたのは、ウトリクラリアだった。手には分厚い本が握られ、顔はこの部屋にいる人間達と正反対に、晴れ晴れしていた。


「皆、あの魔法陣の正体が分かったよぉ! ……あれ、皆テンション低いねぇ。まぁ、いいや。あれはズバリ、異世界に魔法陣内部のものを転移させるトンデモ魔法陣だねぇ。王女様、異世界……多分、今攻めてきてる魔族とやらが生まれている所に連れ去られたのかなぁ」


「あぁ、クラリア。王女様が異世界に拉致された、という事はこちらも、ある方法で把握しました。しかし、異世界に逃げられたのでは、もう手の付けようがない……なので困っている所です」


 ウィンが力なく言った事に、ウトリクラリアは笑みを浮かべる。


「そんな事だろうって思ったよぉ。実はこの本、異世界に行く方法も載ってるんだよねぇ。……異世界に直接カチコミかけられるって事。このやり方がまるっきりの嘘じゃなければ、だけど」


「なんですって?!」


「お嬢を連れ戻せるって事ですか?!」


 顔を見合わせる一同。この部屋にいるメンバーの瞳に、少し希望が宿った。


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